おはよう。松永です。今日は「学び直し」について。数日前に触れた第12次能力開発基本計画(✍️2026年4月から第12次へ|職業能力開発基本計画が動かす人・制度・助成金と、現場の次の一手)。これからの5年間、国が何を整備していくのかという話をした。これまでの計画で、日本の職業能力開発に関する“土台”はかなり整ってきた。教育訓練給付みたいに、お金の面で背中を押す制度も増えたし、仕事理解や自己理解を助ける社会的な仕組みも少しずつ形になってきた。
けれど次のフェーズは少し違う。
インフラを作る段階から、「学びたいのに学べない理由」を一つずつ潰していく段階へ。
ここから先は、制度の話でありながら、同時に“人生の話”になると思う。お金と時間の壁。家庭の理解。迷いと意思決定。興味や価値観が変わっていく現実。アイデンティティを更新していく過程。そのどれもが、学び直しの前提になる。
だから最初に、はっきり言っておきたい。学び直しは、制度や助成の話だけで完結しない。むしろ、その前段階がいちばん大事だ。あなたのこころの奥底にある、あなたにしかわからないライフテーマ。転機や迷いの中で形作られてきた、深層心理の芯みたいなもの。それをつかみ取って、自己理解を深める。興味、価値観、能力、適性、環境、中長期キャリアビジョン、マネープラン。さらに仕事理解も深める。多様な働き方、働くことの意義、職業の実態、現実の労働市場、組織・人事の仕組み、自分の希望する職業の労働条件・参入経路・必要な能力。
そして生活は一人で回らない。配偶者、子供、両親。生活上の重要な協力者と対話し、理解を重ねる。最後に、これまで積み上げてきた「自分ならできる」という自己効力感を整理する。その土台があって初めて、学び直しは“資格取り”じゃなく、人生の満足度を上げるための循環になる。
今日はまず、その循環の入口に立つための話を書いていく。ぜひ、ここだけは聞いてほしい。あとは、知ったうえで実行するかどうかはあなた次第だ。
◾️リカレント教育という考え方
リカレント教育という言葉は、昔よりずっと日常的に聞くようになった。
学校を卒業して終わりではなく、
社会に出てからも必要に応じて学び続けるという考え方。
これは理想論でも精神論でもなく、
もはや経済構造そのものの話だ。
技術は変わる。
産業は変わる。
仕事の内容は変わる。
変化し続ける社会の中で、
「一度覚えた知識だけで40年戦う」という前提自体が現実的ではない。
だからこそ学び直しは特別な行為ではなく、
人生設計の一部になってきている。
さらに言えば、人は仕事だけで生きているわけじゃない。
年齢と経験を重ねるほど、興味分野は変わるし、価値観も変わる。家族の状況も変わるし、自分が何者で、何を大事にして生きるのかというアイデンティティ自体も、少しずつ再構成していく。だから学び直しは、スキルを足す行為というより、「自分の軸を更新する作業」でもある。興味が何に向くのか、何に腹が立つのか、何に誇りを感じるのか。どんな環境なら力が出るのか。どんな働き方なら家族と両立できるのか。どこまでリスクを取れるのか。こういう自己理解と生活理解の棚卸しがないまま学ぶと、学びは続かないし、納得感も残らない。
そのとき必要になるのは、「昔決めた進路」にしがみつくことじゃなくて、変化に合わせて自分を更新できる力だ。プロティアンキャリアみたいに、自分の内側の軸を持ちながら、しなやかに形を変えていく生き方。バウンダリーレスキャリアみたいに、組織や職種の境界をまたぎながら、自分の市場価値と納得感を作っていく生き方。
そのどちらを目指すにしても、結局、学びが循環していないと成立しない。学び直しはスキルの補修工事じゃない。人生を再設計するためのエンジンみたいなものだ。
◾️ここまで整備されてきた制度
誤解されがちだけれど、日本は決して制度が遅れているわけではない。
代表的なのが教育訓練給付制度。
・一般教育訓練給付
・特定一般教育訓練給付
・専門実践教育訓練給付
この三本柱はかなり大きい。
特に専門実践教育訓練給付。
一定の条件を満たせば、受講費用の相当部分が支給される。
対象講座も幅広い。
看護、介護、福祉、IT、経営、資格系専門職、大学院など、
いわゆる“本気の学び直し”を想定した設計になっている。
知らない人が多いけれど、
金額規模としてはかなり大胆な制度だ。
さらに、失業中や収入が一定水準以下などの条件が合えば、職業訓練受講給付金という選択肢もある。
つまり、
「制度がゼロ」ではない。
問題は別の場所にある。
◾️最大の壁は時間とお金
結局ここに行き着く。
時間とお金。
これは極めて単純で、極めて残酷な現実だ。
30代。
住宅ローン、子育て、仕事の責任。
40代。
教育費のピーク、管理職、親の介護。
50代。
体力の変化、老後不安、キャリアの固定化。
どの世代も共通している。
学びたい気持ちはある。
けれど余裕がない。
ここで重要なのは一つの視点。
「時間がある人」ではなく、
「時間を作れる環境」の話。
有給休暇を削る。
家族との時間を削る。
睡眠時間を削る。
これでは継続できない。
制度設計の本質はここだ。
◾️企業側の役割と現実
企業にも流れは来ている。
教育訓練休暇制度。
リスキリング支援。
人材開発支援助成金の活用。
最近は、事業展開に合わせた学び直しを後押しする枠組みも広がってきた。
方向性としては明確だ。
「会社が学びを支える時代」へ。
ただし現実はまだ道半ば。
導入率は限定的。
利用率も十分とは言えない。
企業側にも事情はある。
人員不足。
業務負荷。
コスト問題。
だからこのテーマは常にバランスの話になる。
◾️奨学金というもう一つの選択肢
ここも誤解が多い。
奨学金=若者向け。
実はそうでもない。
社会人でも使える奨学金はあるし、大学や自治体、民間団体がやっている支援もある。
給付型もあれば貸与型もある。
分野特化型、地域特化型、大学独自制度もある。
探せば確実に存在する。
問題はやはりここに戻る。
「知られていない」。
情報が届かないことが、そのまま機会の格差になる。
◾️なぜ学びが後ろ倒しになるのか
多くの人がこうなる。
定年後に学ぼう。
退職金が出てから学ぼう。
そして気づく。
学び終えた頃には65歳。
もちろん学びに遅すぎることはない。
けれど、
本来活かせたはずの30年、40年という時間は戻らない。
ここで社会全体の課題が見える。
個人の問題ではない。
構造の問題だ。
◾️国家公務員という現実と課題
ここで一度、足元の話もしておきたい。
民間には雇用保険がある。
だから教育訓練給付という仕組みが動く。
一方で、国家公務員は雇用保険の適用外。
つまり教育訓練給付の対象外になる。
この差は、地味だけど効く。
本気で学ぼうとしたとき、
民間なら「制度を使って費用の一部を回収する」という設計ができるのに、国家公務員側はそのルートが閉じている。
結果として、現実的な選択肢がこうなる。
奨学金で借りる。
家計から捻出する。
時間は年休か、家庭の時間を削る。
学び直しが「自己負担の根性論」に寄りやすい。
もちろん、公務には公務の理屈がある。
離職を前提としない雇用の安定、配置の都合、守秘や兼業規制、いろんな事情が絡む。
ただ、だからこそ課題もはっきりしてくる。
縛って辞めさせない、ではなく、
自由度を上げて満足度と定着を高める、という方向に社会が動き始めている。
来年度から兼業の扱いが変わるような流れも、その一つだ。
だったら、その延長線上に「公務員の学び直し支援」が出てくる可能性は十分ある。
民間で拡充されたものが、遅れて公務にも波及する。たぶん順番はその形になる。
先に民間が進む。
民間が変わると、公務も変わらざるを得なくなる。
逆に言えば、いま民間側で広がっている制度を追いかけること自体が、将来の公務の設計にもつながっていく。
◾️結局、個人にできること
ここまで書いておいて何だけれど、
最後はやはり個人の話になる。
制度は完璧ではない。
環境も十分ではない。
だからこそ必要になるのが「アンテナ」だ。
教育訓練給付。
奨学金。
助成制度。
企業制度。
知らなければ存在しないのと同じ。
情報は力だ。
選択肢は知識から生まれる。
完璧なタイミングなんて来ない。
けれど、
探し、調べ、模索する人には確実に道が見えてくる。
人生は一度きり。
学び直しは遠回りではない。
未来の自分への前払いだ。
愛と感謝を胸に。
今日も全力で一生懸命生きよう。
バイバイ。
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