日々のことば(ブログ)

✍️人の相談に乗るのが上手くなる──ついアドバイスばかりしてしまう人へ、信頼が深まる「相談の受け方」

おはよう。今日は、資格を取るための話でも、カウンセラーを目指すための指南書でもない。もっと日常の話。夫婦、友達、職場、親子——人間関係の中で「ちょっと聞いてほしい」「相談に乗ってほしい」と言われたとき、どう振る舞えば相手が軽くなり、関係が深まるのか。そのための“使える考え方”と“ちょっとした技術”を、分かりやすくまとめてみる。

先に意図をはっきり言う。これはテクニックを覚えて相手をコントロールする話じゃない。むしろ逆で、相手の主体性を守る話だ。そして不思議なんだけど、この考え方が腹落ちして、少しずつ実践できるようになると、あなたの行動が変わる。相手の反応も変わる。結果として、人間関係が確実に豊かになる。自分の成長にもつながる。だからこそ、ぜひ「理解して、取り入れて、試してみてほしい」という話。


◾️まずは「相談のモード」を分けて考える

相談には大きく2つのモードがある。どっちが良い悪いじゃなく、目的が違う。

・ガイダンス(指導・助言・情報提供のモード)

やり方を教える、選択肢を出す、手順を整理する、危険を止める。相手が「方法が知りたい」「情報が欲しい」「結論が必要」という状態のときに合う。

・カウンセリング寄り(気づき・整理を支えるモード)

相手の語りを受け止め、気持ちや価値観や葛藤を整理するのを手伝う。本人の内側から言葉が育って、認知と行動が自然に変わっていくのを支える。

日常の相談って、じつは「まずカウンセリング寄り」が効く場面が多い。相手が欲しいのは正論より、「分かってもらえた」「整理できた」の感覚だったりするから。

そして一応、背景だけ話しておくと、僕はこれまで、ガイダンス(情報提供や手順整理)も、カウンセリング(気づきの伴走)も、場合によってはコンサル的な関わりも、特定の領域で長く現場でやってきた側の人間だ。自分では、プロとしてやってきた自負がある。だから今日は、その現場で一貫して効いてきた「基礎の考え方」と「崩れにくい型」を、日常の会話にそのまま持ち込める形に、できるだけ噛み砕いて伝えたい。大げさな話じゃない。でも、この土台が分かるだけで、相談の空気も、人間関係の温度も、確実に変わる。


◾️みんながやりがちで、関係が壊れる“善意の罠”一覧

ここを自覚して避けられるだけで、相談は一段うまくなる。

1)すぐ解決しようとする(結論に飛ぶ)
2)アドバイス中毒になる(処方箋づくりになる)
3)気持ちを当てにいく(「本当はこうでしょ?」)
4)主導・誘導が強くなる(尋問・取り調べ化)
5)評価する・裁く(正しさの押し付け)
6)説教・教訓に変換する(人生論で潰す)
7)励ましで飛ばす(軽視に聞こえる)
8)比較する(一般論で相手が消える)
9)正論を並べる(内面の摩擦を無視する)
10)相手の感情を急いで変えようとする(消そうとする)

共通してるのは、こちらが「相手の内面」じゃなく、「こちらの正しさ/手際」に集中してしまう状態。ここに気づけるだけで、相談の空気が変わる。


◾️日常で効くのは、まず「安心」を作ること

相談者が本当に欲しいのは、答えより先に「安心」なことが多い。だから最初にやるべきことは助言じゃなく、信頼の土台づくり。

・目を見る(圧じゃなく、ちゃんと焦点を合わせる)
・体を向ける(膝や姿勢で“今ここ”を作る)
・何かをしながら聞かない(スマホは置く)
・声のトーンを落ち着かせる(急かさない)
・沈黙を怖がらない(考える間を渡す)

この非言語が整うと、「この人は本気で聞いてくれる」が伝わる。ここがスタート。


◾️話を切らずに追いかける「言語的追跡」が効く

途中で話を折ると、相手の内面の流れが止まる。だから相手が出してきた話題を、そのまま丁寧に追いかける。これが言語的追跡。勝手にまとめて次へ進むんじゃなく、相手の言葉の道を一緒に歩く感じ。これだけで相手はどんどん話しやすくなる。


◾️受け止めの核は「感情を拾って伝え返す」

事実だけじゃなく、感情が受け止められたときに人は軽くなる。
「ショックだった」「自信がなくなった」「怖かった」「悔しかった」「迷ってる」
こういう言葉を、相手の表現のまま拾って要約に入れて返す。

例:
「つまり、こういう出来事があって、そこでかなりショックだったんだね」
これで「分かってくれてる」が起きる。


◾️開かれた質問と閉じた質問を、役割で使い分ける

質問には2種類ある。

・閉じた質問(クローズ):はい/いいえ、短い答えで終わる
例:もう伝えた?今も続いてる?それは嫌だった?

・開かれた質問(オープン):自由に考えて話せる
例:今いちばん引っかかってるのはどこ?どんな気持ちだった?もう少し聞かせて?

閉じた質問は「確認」に強い。でも多用すると事情聴取になる。
だから基本はオープンで回す。
閉じた質問は、要約の確認や合意のときに絞って使う。ここがコツ。


◾️日常で“うまい相談”になる基本型

これは暗記じゃなく、流れとして持っておくと強い。

1)しっかり聴く(遮らない)
2)要約して伝え返す(感情も入れる)
3)「この理解で合ってる?」と確認して同意を取る
4)こちらの頭の中で論点を整理する
5)整理を“押しつけずに”提示する
6)最後は必ずオープン質問で相手に委ねる

例:4)〜6)
「今の話だと、気持ちの部分と、相手とのやり取りの部分と、これからどうしたいかの部分が絡んでそうだなと思った。僕の見立てはこうだけど、他にも大事な点ってある?もう少し聞かせて」

整理はする。でも決めつけない。委ねる。これが関係を壊さずに深める。


◾️プロっぽさが出るのは「整理」と「展開」を同時に扱えるとき

ここまでは“土台”の話。ここにもう一段、日常でも応用できる「プロの視点」を足す。

カウンセリング寄りの相談って、ただ「全部引き出す」だけだと、話題が広がり続けて終わってしまうことがある。相手は吐き出せたけど、整理がつききらない。そこで、うまい人はこうする。

・会話の一往復ごとに「論点の整理」を挟む

相手の話がとりとめなく見えても、こちらは頭の中で「何のカテゴリーの話か」「今どの論点か」を静かに整理して聞く。そして伝え返しのときに、さりげなく“整理された形”で返す。

ただし、型にはめない。押しつけない。

「僕の整理だとこう聞こえたけど、違ってたら言ってね」
「他にも大事なこと、ある?」

この“開いたままの整理”が、相手を自由にしつつ前に進める。

・“絞る”タイミングを作る(今日のテーマを一緒に決める)

話しているうちに論点が複数に増えてきたら、ある地点で一度立ち止まる。

「いくつかテーマが出てきたけど、今日はどれをいちばん整理したい?」

日常でもこれができると、相談が“雑談の延長”から“前に進む対話”に変わる。

・全体の展開を、軽くガイドする

ただ聞いて終わりじゃなく、全体としてはだいたいこの順番で進むと相手は整理しやすい。

優先する問題の問題の共有(何がつらい/何が引っかかってる)
→ 目標の輪郭(何が明確になれば少し楽になりそう)
→ 方策(じゃあ次に何をしてみる?)

これも、こちらが決めるんじゃない。相手が言語化できるように、整理して問いかけて伴走する。つまり「一つ一つの応答の中の整理役」と「全体の流れの案内役」を同時に担っている。ここが“プロっぽさ”の正体。

もちろん、夫婦や友達に対して、毎回こんなプロの技術感を出す必要はない。だけど、この視点が自然に身についたとき、あなたは仕事や資格とは関係なく、成熟した人間関係を築けるようになる。相手の主体性を守りながら、ちゃんと前へ進められる人になる。


◾️ゴールは「相談の前より、少し前に進んでいる」こと

アドバイスをいっぱいしたかどうかじゃない。・気持ちが少し軽くなった

・問題が整理できた
・優先順位が見えた
・次の一歩が一つ決まった
・認知か行動が少し変わった

これが起きたら、その相談は成功だと思う。

そして、ここがいちばん大切な補足。これは、相談に乗る側が“やってあげた”結果じゃない。こっちが答えを出したわけでもない。こっちが問題を整理して決め切ったわけでもない。優先順位を決めたのも、次の一歩を教えたのも、認知や行動を「こうしろ」と指示したのも、基本的にはこっちじゃない。

相談に乗る側がやっているのは、あくまで伴走。相手の話を丁寧に受け止め、感情も含めて正確に伝え返し、確認して、同意を取り、こちらの頭の中では論点を整理しつつも、押しつけずに“整理の枠”として差し出す。そして最後はオープン質問で、相手が自由に考え、選び、言葉にできるように委ね続ける。

そのプロセスを粘り強く回していくと、相手は自分で内省(深く自分と向き合って思考すること)できるようになる。自分で気づけるようになる。自分で「本当は何がしんどいのか」「どこから整理したいのか」「どうしたいのか」を言葉にできるようになる。すると認知が変わり、行動も少しずつ変わっていく。ここが大事で、こちらが相手を変えるんじゃない。変化が起きる主役は、あくまで相手本人だ。だからこそ、信頼関係を壊さず深めたまま、相手の力を信じて支えられる。相談の乗り方でいちばん大切なのは、結局ここにあると思っている。


◾️人は“自分で伸びる力”を持っている、という前提

植物が光に向かって伸びるみたいに、人にも「よりよく生きよう」とする力がある。相手のその力を信じる。尊重する。だからこちらがやるのは、正解を与えることじゃない。その力が働ける条件を整えることだ。安心の土台を作って、受け止めて、いったん整理して、最後は相手に委ねる。これを丁寧に回していく。

これ、元をたどると有名な心理学者ロジャーズの考え方に近い話なんだけど、難しい理論は置いとく。日常で使うなら、「人は本来、自分の人生を前に進めようとする」という前提に立つだけでいい。そう思えると、相手を評価したり、変えようとしたり、こちらの正しさで上書きするのは違うなって、腹の底で合点がいく。目の前の人も、主役として一生懸命生きている。その姿勢で話を聴くだけで、相談の空気は変わる。

実は僕の、松永修|MUSICおさむとしての活動も、この考え方と同じ方向を向いている。音楽のステージも、文章も、「正解を渡す」より「その人の力が働く場をつくる」ほうに心が向く。聴いてくれる人、読んでくれる人の中にある“前に進む力”を信じたい。だから僕は、表現でも対話でも、このスタンスを大事にしてる。


◾️日常では多重関係が避けられない。でも「考え方」は使える

本来、プロの現場では、関係が複数重なる状態(多重関係)は慎重に扱う。相談の質がぶれたり、力関係が混ざったり、相手の自由が狭まったりしやすいからだ。

でも日常はそうはいかない。夫婦も、友達も、上司部下も、親子も、いろんな歴史や感情を抱えたまま、相談が始まる。

だからこそ、僕は思う。日常の相談で大事なのは「プロと同じ環境を再現すること」じゃなくて、プロの現場で効いてきた“姿勢”と“進め方”を、無理なく持ち込むことだ。

相手の主体性を尊重して、まず安心を作って、受け止めて、必要ならいったん整理して、最後はオープンに委ねる。これだけで、相手は話しやすくなるし、自分も余計に背負わなくて済む。信頼関係は、ちゃんと深まっていく。


◾️結局、いちばん大事なのはテクニックじゃなく「全身全霊で聞く」こと

テクニックや理論は確かに役に立つ。でも、テクニックに囚われた瞬間、心がなくなってしまう。

いちばん伝わるのは、本気で分かろうとする姿勢だ。裏切らない姿勢だ。相手が信用して話してくれていることを、こちらがちゃんと重く受け止めることだ。

そのうえで、こちらの頭の中では静かに整理していく。論点をまとめ、感情を拾い、言葉を返し、相手が自分で内省しやすい形に整えていく。

“うまい相談”って、結局ここで決まる


◾️日常の人間関係でこそ、効果が出る

夫婦、友達、職場、親子。関係が近いほど、つい言いたくなる。正論も、助言も、評価も。でもそこで一回、今日の話を思い出してほしい。相手の主体性を守る。まず安心。感情を拾う。整理はする。でも委ねる。これを少しずつ実践できるようになると、あなた自身の関わり方が変わるし、相手の反応も変わる。結果として、関係は必ず豊かになる。

さて、今日も。僕らは一人で生きてない。自分も、あなたも、その周りの大切な人たちも、支え合いながら生きてる。だから誰かが「話を聞いて」と言ってきたとき、今日のことを少し思い出してほしい。相手の力を信じて、主体性を尊重して、安心の土台を作って、受け止めて、整理して、委ねる。そうやって、豊かな支え合いを手に入れていこう。

愛と感謝を胸に。それでは今日もまた。バイバイ。

松永 修 – MUSICおさむ

松永 修/音楽名義:MUSICおさむ(シンガーソングライター)/音楽と文章の作家/国家公務員/キャリアコンサルタント

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