日々のことば(ブログ)

✍️ふるさと納税は“お得”だけじゃない──揺れる制度の光と影、そして私たちが選ぶべき生き方

おはよう。今日は、年末になると必ず耳に入ってくるあのテーマ──「ふるさと納税」について話したい。
仕組みの基本から、制度が抱える光と影、実際の利用者の本音、自治体の声、そして“どう意思決定すべきか”というところまで。あなた自身の選択を助ける材料になるように、丁寧に全体像を整理してみようと思う。

年末になると必ず出てくる「ふるさと納税やらなきゃ問題」

年末が近づくと、ニュースや広告に「ふるさと納税はお済みですか?」が急増する。
毎年この時期になると、

「なんかお得らしい」
「でも仕組みがよく分からない」
「本当にやるべきなの?」

そんなモヤモヤを抱えたまま年を越す人も少なくない。

そして、ネットで「ふるさと納税 おすすめ」と検索すれば、多くの記事がアフィリエイト込みの“激推し”スタイルだ。制度のメリットは丁寧に書かれているけれど、その裏には「ポータルサイトに誘導して報酬を得る」という意図があるから、どうしても情報に“偏り”が出やすい。

今回の記事は、ふるさと納税を称賛するつもりも、否定するつもりもない。
制度の仕組み、どれだけ得なのか、どんな歪みがあるのか、自治体の光と影、利用者の本音、そして価値観によって変わる“正解のない選択”。
それらを一度ぜんぶ並べて眺めてみて、「自分はどうするか?」を考えられるようにすること。それがこの記事の目的だ。

そもそも「ふるさと納税」は何者か

ふるさと納税は、2008年に始まった「自分の住んでいる自治体以外に寄附をすると、その分、住民税・所得税が控除される制度」。仕組みとしては「寄附」だけど、実態は「住民税の一部を、応援したい自治体に振り替える仕組み」と言った方が近い。

本来の理念は大きく二つと言われている。

  1. 生まれ故郷やゆかりのある地域など、「応援したい自治体」を自分で選べるようにすること
  2. 都市部に集中しがちな税収を、地方にも回して地域活性化につなげること

この「応援したい地域を選ぶ」理念と、「返礼品でお得」という現実のバランスが、今の議論の核心になっている。

基本の仕組み:2,000円だけ自己負担、あとは翌年の税金が減る

まず仕組みだけ整理しておく。

・自分が選んだ自治体に寄附をする
・その年の寄附合計額のうち、「自己負担2,000円」を除いた全額が、翌年度の住民税(+一部所得税)から控除される(上限額あり)
・多くの自治体は、寄附額のだいたい3割以内を目安に返礼品(お肉・お米・日用品など)を送ってくれるルールになっている

例えばシンプルに寄附1万円で考えると、こうなる。

  • 寄附:10,000円
  • 税金が減る額:10,000円 − 2,000円 = 8,000円
  • 自己負担の実質:2,000円
  • 返礼品の“目安の価値”:3,000円くらい

つまり「実質2,000円の負担で、だいたい3,000円相当のものをもらう」構図になる。
差額の1,000円ぶんくらいが、ざっくり言えば“お得”な部分というイメージだ。

ただし、実際の返礼品の市場価格は、通販で普通に買うより割高に設定されていることも多いし、3割ギリギリではなく2割台のものもある。なので、「すべてがきれいに3割還元」と思うと、ちょっと話が美化されすぎる。

どのくらい利用されているのか──数字で見る現在地

総務省の最新の調査では、2023年度のふるさと納税の受入額は約1兆1,175億円、件数は約5,895万件で、ともに過去最高。利用者も初めて約1,000万人を超えたと言われている。

一方で、納税義務者全体に占める利用率は2割弱〜3割前後で、「みんながやっている」というほどではない。RIETIとインテージの約1万人調査では、年収300万円以上の層でも利用率は3〜4割程度というデータが出ている。

さらに同じ調査では、「寄附先を選ぶときに一番重視した理由」の7割以上が「返礼品の魅力・コスパ・ポイントなどのお得感」だった一方、「自治体を応援したい・政策に共感した」は1割強にとどまっている。

つまり、制度の理念は「寄附と地域応援」だけど、現実の利用動機の多くは「お得だから」が正直なところ、という姿が数字からも見える。

返礼品と“お得感”は、どのくらい現実的なのか

「1万円で3,000円相当の返礼品」と聞くと、つい“3割のポイント還元”みたいな感覚で捉えたくなる。でも実際には、

・自治体側は、寄附額の5割以内に事務経費+返礼品コストを抑えなさい、というルールがある(広告費やカタログ制作もここに含まれる)
・返礼品の原価は、カタログ上の「参考価格」より低いことも多い
・「寄附=税金の前払い」なので、実質的には「翌年の住民税を先に払って、2000円+αぶん得する」という構図

ざっくり言うと、

  • 寄附額 × 約30%(返礼品の表向きの価値)
  • そこから自己負担2,000円を引いた残りが、“得したように感じる部分”

たとえば、年間10万円寄附した場合で計算してみると、

  • 返礼品:目安で3万円相当
  • 自己負担:2,000円
  • 「得したように感じる部分」:約28,000円分の価値

この「約2万8千円分」の感じ方が、人によって違う。

・どうせ払う住民税なんだから、前払いして日用品や食材をもらえるならありがたい
・とはいえ、そのお金は本来、自分の住んでいる自治体の保育・道路・ゴミ収集などに回るはずの税金だよね?

ここが価値観の分かれ目になってくる。

年収と「控除の上限額」のざっくりイメージ

実際にやろうと思ったときに一番気になるのが「限度額」。これを超えて寄附してしまうと、超えた分は“ただの寄附”になってしまう。

上限は、年収・家族構成・住宅ローン控除などの有無で変わるので、正確にはシミュレーターを使うしかない。ただ、イメージとしてはこんな感覚。

・年収600万円前後の会社員・公務員(共働き、子どもあり)
 →条件にもよるけど、上限は概ね5万〜8万円台におさまるケースが多い

・年収300万円前後の人(独立した生計の配偶者など)
 →数万円〜4万円台くらいが目安になることが多い

この上限は、夫婦で「合算」されるわけではない。
あくまで「一人ひとりの所得」に対して、それぞれ別々に存在する。

だから、年収600万円の人と300万円の人がいるなら、

・夫:上限6〜7万円くらい
・妻:上限2〜3万円くらい

といったイメージで、それぞれが自分の枠の中で寄附していくことになる(ここは実際のシミュレーターで必ず確認した方がいい)。

ワンストップ特例か、確定申告か

ふるさと納税には、手続きの仕組みが二つある。

  1. ワンストップ特例
     ・給与所得だけの人などが対象
     ・寄附先が「5自治体まで」なら、確定申告なしでOK
     ・寄附先ごとに申請書を出すだけで、翌年の住民税から自動的に控除される
  2. 確定申告
     ・自営業・副業収入がある人・医療費控除を使う人など
     ・寄附先の数はいくつでもOK
     ・確定申告書にふるさと納税の寄附額をまとめて記載

総務省の調査では、寄附件数のうちワンストップ特例が3〜4割を占めていて、「会社員で、確定申告はしたくないけど、ふるさと納税はしたい」という層がかなり多いことがわかる。

なぜ「楽天ポイント」が禁止になったのか

ふるさと納税の“お得感”を押し上げていた最大の要素のひとつが、楽天やその他ポータルサイトで付いていたポイント還元だった。寄附額に対して数%のポイントが付けば、実質負担はさらに小さくなる。そのため、ユーザーの間では「ふるさと納税は楽天一択」という流れすら定着していた。

しかしこのポイント競争は
「制度の趣旨から外れているのではないか」
という議論を生み、総務省はついに2025年10月から、
ポータルサイトを通じたポイント付与等を全面禁止する方針を打ち出した。

総務相は会見で、
「本来の制度趣旨からしてポイント競争は適切ではない」
と明確に述べており、制度の健全化を強調した。

一方で、楽天側はこの告示に反発。
2025年7月10日、楽天グループ株式会社は総務省告示の無効確認を求める行政訴訟を東京地裁に提起。

楽天の主張はこうだ:

  • ポイント付与の禁止は、ふるさと納税普及のために民間企業と自治体が築いてきた努力・工夫を否定する
  • 総務省がポータルサイト事業者へ過剰な規制を課している
  • 地方税法の委任範囲を超えており、総務大臣の裁量権を逸脱・濫用している

つまり、**「総務省の禁止は行き過ぎだ」**として争っている。

この訴訟は現在も係争中だが、
少なくとも国としては「ポイント目当てでの過剰な競争を止める」という方向性をはっきり示した形になる。

その結果、
以前ほど“ポイント込みで圧倒的に得”という構図はすでに崩れつつある。

そして、もうひとつ避けて通れない論点がある。それが“自治体間の格差”だ。

自治体側から見た“光と影”

ふるさと納税は、寄附を集める自治体にとっては大きな財源になる一方で、住民が住んでいる自治体からは税収が減る仕組みだ。ここではっきりと“光”と“影”が分かれる。

●光:地方の“勝ち組”自治体

海産物・肉・フルーツなど、全国にアピールできる強い特産品を持つ自治体は、返礼品競争の中で大きな成功を収めている。寄附額が100億円を超える自治体も珍しくなく、中には年間190億円超を集めて全国1位になったケースもある。

代表例を挙げると、次のような自治体だ。

・北海道・紋別市
2023年度:寄附額 約195億円(全国1位)
ホタテ・カニなどの海産物で圧倒的な人気を誇り、市の一般会計を揺るがすほどの寄附を集めた。

・北海道・根室市
2022年度:寄附額 約147億円(全国1位)
サーモン・ホタテ・カニなど海産物が主力。返礼品割合が過剰になり、総務省から「適正化指導」を受けた経緯もある。

・佐賀県・上峰町
2020〜2021年度:毎年100億円超
佐賀牛を中心に幅広い返礼品で急拡大。しかし返礼品割合が高すぎると指摘され、指導後に寄附額が減少した。

・宮崎県・都城市
長年にわたり毎年100億円前後を安定して集める“象徴的存在”。
宮崎牛・豚肉・焼酎など、特産品の強さがそのまま寄附額に結びついている。

これらの自治体は、**「地方の財源を大きく押し上げた成功例」**として語られることが多い。

●影:都市部・大都市の“流出側”

一方で、都市部は住民が他の自治体へ寄附することで税収が流出する。
東洋経済などの分析では、たとえば横浜市や名古屋市、さいたま市などの政令指定都市では、毎年数百億円の税収が流出。
国の補填(地方交付税で約7〜8割を埋める)はあるものの、数十億円単位の“実質減収が残るとされている。

また、市区町村の首長会や自治体連合からは、
「ふるさと納税による減収額に対する財源措置を求める声明」
が複数出されており、制度の見直しを強く求める声も上がっている。

●海外からの評価と懸念

OECD(経済協力開発機構)や世界経済フォーラムの分析では、ふるさと納税について明確な二面性を指摘している。

  • 地方の税収を押し上げ、子育て支援や移住促進など地域独自の政策に活用されている点は、一定の成功例として評価されやすい
  • 一方で、都市部の税収減や、返礼品コスト・広告費に多くの寄附金が使われてしまう仕組みについては、「制度設計上のゆがみ」として課題視されている

こうした肯定と懸念が共存することで、ふるさと納税が「日本の税制をどうしていくべきか」を考える材料として、海外の政策研究でも時々取り上げられる存在になっている。

「良い返礼品を出せる自治体だけが勝つ」ことへの違和感

もう一つの論点は、「本来の産業とも関係が薄い返礼品で、寄附をかき集める自治体」の存在。

・自分の地域で生産していない家電や商品を、単に“代理販売”的に扱う
・本来の地場産業とは関係の薄い品で、寄附を獲得する

こうした動きに対しては、

・真面目に地元産品だけで勝負している自治体が損をする
・制度の理念(地域の魅力や産業を知ってもらう)から外れている

という批判も強い。総務省はここ数年、返礼品の地場産品要件を厳しくし、返礼品や経費の割合も5割以内に抑えるルールを整えてきたが、それでも「グレー」な事例は残っている。

海外に似た制度はあるのか

海外でも「寄附をすると税額控除がある制度」はいろいろある。
アメリカならNPOへの寄附の税控除、ヨーロッパでも慈善団体や宗教団体への寄附控除などが一般的だ。

ただ、「自分の住民税の一部を、他の自治体に移し替えて、その見返りに返礼品をもらう」という日本型の“ふるさと納税”は、国際的に見てもかなりユニークな制度だとOECDのレポートでも紹介されている。

世界経済フォーラムの分析も、「地方の財源を補う面では成功しているが、都市部の税収減や返礼品競争による歪みが課題」として、日本の税制将来像を議論するきっかけになりうる、と指摘している。

実際に使う人たちは、どんな理由で選んでいるのか

RIETI(独立行政法人経済産業研究所)とインテージの「1万人調査」では、利用者の本音がかなり生々しく出ている。

・寄附先を選ぶ一番の理由の約75%が「返礼品の内容・コスパ・キャンペーンなどのお得感」
・「自治体を応援したい」「寄附金の使い道に共感した」は合計で約1割強
・利用した人のうち、4〜5割は「また同じ自治体に寄附したい」と答える一方、「親近感や愛着は特に湧かなかった」人も3割近くいる

このあたりを見ると、

・きっかけはお得感が圧倒的に強い
・その中の一部は、結果として自治体への愛着やリピート寄附につながっている
・でも、「どこに寄附したか覚えてない」「返礼品だけの関係」で終わるケースも少なくない

という現実が浮かび上がる。

「使うべきか、やめるべきか」の前に、自分の軸を決める

ここまでの話を踏まえると、ふるさと納税に対するスタンスは、だいたい次のようなパターンに分かれる気がする。

  1. とにかく家計の助けにしたい派
     → 「どうせ払う住民税なら、前払いして日用品や食材をもらえる方がいい」
     → トイレットペーパー・洗剤・米・調味料など、“必ず使うもの”に寄せる人も多い
  2. せっかくなら、応援したい自治体を選びたい派
     → 自分や家族のゆかりの地、災害があった地域、子育て・福祉に力を入れている自治体などを基準に選ぶ
     → 返礼品はあくまで「おまけ」と考える
  3. 自分の住む自治体に税金を落としたい派
     → 「自分が利用している保育園・図書館・道路整備にお金を回してほしい」
     → ふるさと納税はあえて使わない、もしくはかなり控えめにする
  4. 仕組みに疑問があるので距離を置く派
     → 「一部の自治体だけが得をし、都市部や地道な自治体が割を食う制度はどうなんだろう」
     → 制度の改善や見直しを待つスタンス

どれが正解でもない。だからこそ“自分の考え”が必要。

ふるさと納税は、結局のところ 「価値観の制度」 だ。

  • 自分のお金をどう使いたいか
  • 自分の税金がどこに流れてほしいか
  • 家計の助けを優先するのか
  • 応援や理念を優先するのか
  • 住んでいる自治体を大切にしたいのか
  • 制度そのものに疑問があるのか

どれも間違いではないし、正解もない。

家族の中でも、夫婦の中でも価値観は違うし、
その違いは“間違い”ではなく、お互いの人生経験や大切にしているものの差に過ぎない。

同じ屋根の下で暮らす人同士ならなおさら、
価値観を尊重し合い、寄り添い、
ときには別々の選択をし、ときには調和したひとつの方針を一緒に選ぶ。

その柔らかさと対話こそが、生活を豊かにする。

ふるさと納税は、ただの節税テクニックでも、ただの“お得ゲーム”でもない。
「自分にとって何が大事か」を考えるための、ひとつの鏡みたいな制度なんだと思う。

ふるさと納税は「税金の話」でもあり、「生き方の話」でもある

年末が近づくと、「駆け込みでやらなきゃ損」という空気だけが先走りする。
もちろん、制度として用意されていて、ルールの範囲で活用するのは何も悪いことじゃない。実際、地方の保育・医療・移住支援など、ふるさと納税があったからこそ実現できている事業もたくさんある。

一方で、その裏で税収が静かに減り、目に見えない形でじわじわと影響を受けている自治体も確かにある。
だからこそ「みんながやってるから」「得するらしいから」だけで選ぶのは、どこかもったいないと思う。

  • 自分の年収と上限額を、いったん冷静にシミュレーションしてみる
  • 何を優先するか(家計のお得感か、応援したい自治体か、自分の住む地域か)を言葉にしてみる
  • 返礼品のカタログに目を奪われる前に、「このお金は本来どこの税収になるはずだったのか」を一瞬だけ思い出してみる

たったそれだけで、ふるさと納税との向き合い方は大きく変わる。

世の中の制度には良い面もあるし、歪みもある。
それでも僕たちは、「今あるルールの中で、どう賢く、どう誠実に選ぶか」を、常に問われているのかもしれない。

みんなそれぞれ、仕事や家族や健康のことで毎日一生懸命だ。
その中で、ほんの少し立ち止まって、世の中で起きていることを考えてみる。
自分なりの意見を持ち、誰かと歩み寄り、そして選び取る――その小さな一歩は、気づかないうちに“政治への参加”でもあり、自分と家族の未来を守る選択にもつながっていく。

同じ空の下で、それぞれがそれぞれの場所で一生懸命生きている。
選択に正解はない。それでも「自分で考え、自分で決める」というプロセスだけは、大切にしていきたい。

この文章が、その小さな助けになればうれしい。

今日も、愛する家族を思い、愛と絆を握りしめて、感謝を。
愛してる。ありがとう。



松永 修 – MUSICおさむ

松永 修/音楽名義:MUSICおさむ(シンガーソングライター)/音楽と文章の作家/国家公務員/キャリアコンサルタント

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