おはよう。今日もいい天気。僕はいま、次のライブに向けて音源制作の真っ只中にいる。新作「笑顔のまほうつかい」の音源もほぼ完成し、マスタリングの段階だ。ライブで歌うセットリスト全体のLUFSを揃える作業にも取り掛かっている。今日はその「ラウドネス」について、初心者にもわかりやすいように背景から実践までをまとめてみたい。
◾️CDの音圧合戦から配信時代へ
かつてはCDが主流で、音圧をどこまで稼げるかが勝負だった。波形を潰す寸前まで押し上げ、「大きい音=良い音」と信じられていた。いわゆる「ラウドネス・ウォー」だ。しかし配信が主流となった今、状況は逆転している。SpotifyやApple Musicなど主要サービスは、各曲の音量を統一するためにラウドネス正規化を行っている。つまり、無理に大きくしても自動で下げられ、潰れただけの音になる。
◾️LUFSという比較的新しい概念
長い間、音量の基準は「ピーク」か「RMS」だった。ピークはクリップしないための目安、RMSは平均的な大きさを測る指標だ。しかしこれらは人間の聴感とはズレがあった。そこで2011年にITU-R BS.1770勧告として国際標準化されたのがLUFS(Loudness Units relative to Full Scale)だ。ようやく「耳で感じる大きさ」を数値化できるようになり、今では配信時代のスタンダードになっている。
◾️LUFSという基準
LUFS(Loudness Units relative to Full Scale)は、単なるピーク値やRMSよりも人の聴感に近い基準で「どれくらい大きく聴こえるか」を示す。配信時代のマスタリングでは、この平均値をどのレンジに収めるかが重要になる。目安としては、Spotify・YouTubeなら-14LUFS前後、Apple MusicやiTunes Storeでは-16LUFS付近、CDでは制限がないため自由度が高い。
◾️ラウドネスメーターの見方
DAW(Logic Pro、Pro Toolsなど)にはラウドネスメーターが搭載されている。基本は3つ:
・Integrated(統合値):曲全体の平均LUFS
・Short-term:数秒ごとの平均
・Momentary:瞬間的な値
まずはIntegratedが基準値に収まっているかを見る。Short-termやMomentaryが大きく振れても、全体が安定していれば問題ない。
◾️配信サービスごとの目安
・Spotify/YouTube → -14LUFS
・Apple Music/iTunes → -16LUFS
・CD(制限なし) → 0dBFSぎりぎりまで可能だが注意
重要なのは「配信=どの曲も同じくらいの大きさに聴こえるように揃える」という思想だ。だから昔の感覚で音圧を稼ぐと、逆に不利になる。
◾️ピークとヘッドルーム
LUFSと同時にTrue Peakも必ず見る。配信では-1dBTP以下に抑えるのが推奨だ。これはエンコード時に発生する「インターサンプルピーク」(デジタル上は割れていなくても再生時に割れる現象)を避けるため。昔の「0dBを超えなければOK」という感覚のままでは、配信時に破綻する可能性が高まる。
◾️実際の調整の流れ
①ミックスで音のバランスを整える
②マスターにLimiterを挿す
③Integrated LUFSが-14前後に収まるよう微調整
④True Peakが-1dBTP以下か確認
ただし数値はあくまで目安。-13.5LUFSでも気持ちよく聴けることもあれば、-15LUFSが心地よいこともある。最後は耳の判断がすべてだ。
◾️AIではなく、自分の耳と目で
DAW(Logic ProやPro Toolsなど)にはラウドネスメーターが備わっている。数値を理解することは大切だが、結局は耳と目で確かめながら調整する経験が欠かせない。Aメロ、Bメロ、サビ――それぞれのセクションの最小値や最大値、ダイナミクスの幅を把握して、全体の平均値を繰り返し確認する。AIやアシスタントに頼るのではなく、自分で「音楽としてどう聴こえるか」を体感することが、最終的な仕上がりを左右する。
◾️セクションごとのダイナミクス
配信で揃えられるのは「曲全体の平均」だ。だからAメロが-18LUFS、サビが-12LUFSといった幅があるのは自然で、むしろその方が生き生きと聴こえる。逆に「常に-14LUFSに収めよう」と詰めすぎると、平板でつまらない音楽になる。LUFSは縛りではなく、表現を解放する基準だ。
◾️オフボーカルとライブ用オケ
配信用のフルミックスを-14LUFSで仕上げても、オフボーカルにすると自然にLUFSは下がる。PAに渡すときはむしろそれがちょうど良い。歌声が自然に前に出てくれる余白が生まれるからだ。配信用の音源と、ステージ用のオケ音源では同じ曲でも最適なラウドネスが異なる。そこを理解して作り分けることが、ライブでの説得力につながる。
◾️過去の失敗と今の気づき
僕もかつては「音圧を上げればプロっぽい」と信じていた。結果、配信では音量が下げられ、潰れただけの音になった。CD用途ならまだしも、配信やYouTubeでは致命的だ。そしてライブではPAに扱いにくい音源を渡してしまい、声が埋もれる失敗もしたこともある。
今はLUFSを理解し、「CD」「配信」「ライブ」それぞれで適したラウドネスを使い分けるようになった。これができるようになって初めて「伝わる音」になったと実感している。
◾️僕の転機とこれから
昨日、正式にApple Storeなど主要な配信スタンドから撤退した。公の仕事を持つ自分にとって、副業規定のグレーに触れる可能性を避けるための決断だった。でもこれは終わりではなく、新しい一歩だ。今後は一円も発生しない無料の配信スタンドに拠点を移し、純粋に音楽を届けることを続けていく。お金はいらない。欲しいのは実績と証。その過程で、音楽は僕にとって最大の遊びであり続け、そして大切な家族とつながる太く赤い絆であり続けるだろう。
さぁ、今日も音楽を、仕事を、そして日々の生活をたしなみながら、自己実現を楽しんで生きていきたい。愛する家族の顔を思い浮かべ、心の中でその名前を呼びながら。愛している。今日もありがとう。バイバイ。
同じ空の下で、心はひとつ。
◾️後記:Ozone 12へのアップデートとグレード選びについて
今回の記事で解説したLUFS調整やマスタリングの流れは、僕がOzone 12 Advancedを使って実際に行っている方法だ。前バージョンのOzone 11から乗り換えて一番感じたのは、「自然さ」と「補正の柔軟さ」だと思う。AIアシスタント機能の進化も大きく、Stem EQやBass Control、Unlimiterなど、細部の仕上げを追い込みたい人にはかなりの武器になる。
ただし、まだOzone 11やStandardを使っている人も安心していい。LUFSの概念や音量設計の考え方自体は変わらない。違うのは、Ozone 12になって「どう補正するか」「どこまで任せられるか」の自由度が上がったという点だけだ。もし今の環境で十分に使いこなせているなら、無理にアップデートする必要もない。逆に、新しいモジュールを試してみたい人は、アップデートする価値が十分にある。
◾️Ozone 12の進化ポイント
新モジュールの追加
Stem EQ、Bass Control、Unlimiterが新登場し、ステムごとや低域の制御がより直感的に。
Maximizerの進化
IRC 5アルゴリズムによって、高音圧でも歪みやポンピングを抑えた透明感のある仕上がりに。
アシスタントの強化
ジャンルターゲットやLUFS目標を細かく指定できる「Custom Flow」で、自分の耳と好みに合わせた微調整が可能に。
◾️グレード別の選び方
Ozone 12 Elements
EQとMaximizer中心の基本構成。AIアシスタントが自動マスタリングをしてくれるので、まずはOzoneを試してみたい初心者に最適。
Ozone 12 Standard
EQ、Dynamic EQ、Stabilizer、Impact、Imager、Clarity、Vintage Compressorなど、ブログで紹介した主要モジュールをほぼ網羅。さらにBass Controlも使用可能。
Ozone 12 Advanced
全モジュール搭載。Stem EQやUnlimiterも使え、各モジュールをDAWに直接挿せる柔軟性がある。プロ志向で本格的にやるならこれ一択。
◾️商品リンク(参考)
Elements
Standard
- iZotope Ozone 12 Standard アイゾトープ
- iZotope Ozone 12 Standard アップデート版 from any previous version of Ozone Standard アイゾトープ
- iZotope Ozone 12 Standard アップグレード版 from Ozone Elements or Elements Suite アイゾトープ
- iZotope Ozone 12 Standard クロスグレード版 from any paid product アイゾトープ
Advanced
iZotope Ozone 12 Advanced クロスグレード版 from any paid product アイゾトープ
iZotope Ozone 12 Advanced アイゾトープ
iZotope Ozone 12 Advanced アップデート版 from any previous version of Ozone Advanced アイゾトープ
iZotope Ozone 12 Advanced アップグレード版 from Ozone Elements or Elements Suite アイゾトープ
iZotope Ozone 12 Advanced アップグレード版 from any previous version of Ozone Standard アイゾトープ
◾️あとがき
音の世界も、AIの進化でここまで変わった。昔は数人のエンジニアが何日もかけてやっていた作業を、今では一人で、自宅のDAWで完結できる。技術は人の手間を奪うんじゃなく、表現の自由を広げてくれるものだと思う。LUFSもOzoneも、数字やツールの話に見えて、実は「どう感じたいか」「どう伝えたいか」という感性の話なんだ。
今日もまた、ひとつの曲を磨きながら思う。音も人生も、最終的に整えるのは自分の耳と心だ。Ozoneがいくら進化しても、それを使う人の感性こそがすべて。
愛する人たちの笑顔を思い浮かべながら、今日も一日を丁寧に生きていきたい。ありがとう。
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