日々のことば(ブログ)

✍️ライブで“声を届ける”ためのマイキング完全解説──SHURE SM58とKSM8、距離・角度・姿勢・呼吸のすべて

おはよう。今日も秋晴れのとても気持ちいい朝だ。もう完全に冬の入り口。寒いね。気持ちいい秋は短かった。もう冬に突入するのかと。少し寂しいよ。でもなんか少しずつクリスマスというか、冬も待ち遠しくなってきた。そんなこの頃。さあ今日は音楽の技術的な話について少しお伝えしたいことがある。テーマは「マイキング」について。

◾️声を「録る」のではなく「届ける」ための技術──ライブマイキングの本質

ここで話すマイキングは、スタジオレコーディングのようにコンデンサーマイクで音を“正確に録る”ことではない。ここで扱うのは、ライブの現場でダイナミックマイクを使い、“生の声を観客に届ける”ためのマイキングだ。ライブでは照明、PA、空間反射、そして観客のざわめき──すべてが刻一刻と変化する。その中で、マイクを通した声だけが“自分の楽器”として存在している。だからこそ、マイクをどう扱うかで、ステージの印象も、伝わる感情もまったく変わってくる。

◾️マイクの特性を「知る」ことが第一歩

マイキングの基本は、まず“マイクそのものを知る”ことに尽きる。マイクにはダイナミック型やコンデンサー型などの種類があり、それぞれ音の拾い方がまったく違う。ライブ現場で定番のShure SM58は、耐久性が高く中低域に厚みがあり、声の芯を太く伝える設計になっている。近づけるほど低音が膨らむ「近接効果」があり、これを理解していないとモコモコしたり、抜けが悪くなったりする。つまり、距離を詰めるほどに低音が増すという特性を逆手にとって、Aメロの囁きやブレスを“意図的に太く温かく”聴かせることもできるのだ。

ここで重要なのは、「どんな音楽を、どう届けたいか」によって最適な距離と角度が変わるということ。ラウド系のロックやパンクでは、サビでマイクをベタづけして、ピークをあえて潰しにいく。声を歪ませ、コンプレッサーが追いつかないほどのラウド感を出す。それは“潰れた中にエネルギーを込める”という美学であり、決して間違いではない。しかし、今回ここで話しているのはその逆──声そのものの美しさを“純粋に綺麗に届かせる”歌もののマイキングである。

たとえばSM58を使った歌ものの理想的な距離と角度の例を挙げるとこうなる。

Aメロではマイクヘッドに口を指1本分(約2〜3cm)まで近づけ、息の粒がマイクに触れるか触れないかの位置で、空気をゆっくり送るように歌う。これで近接効果による低域の温かさが生き、囁きのような声でも存在感が出る。

Bメロに入ったら、声量がやや上がる分だけ指2本分(約4〜5cm)離し、口の正面をわずかに(10〜15度ほど)ずらす。これで息が直接マイクに当たらず、子音の破裂音やブレスノイズが抑えられる。

そしてサビでは、最も声が伸びるタイミングで指3〜4本分(約6〜8cm)の距離を取り、マイクを少し下から斜めに構える。上から歌い込むようにすれば、声のピークを柔らかく受け止めながら、抜けのいい明るい音になる。

このわずかな距離の変化が“手動フェーダー”の役割を果たす。実際、プロのライブ映像を見ると、歌い手がほんの数センチ単位でマイクを動かしている。これは無意識ではなく、完全に“音の彫刻”をしているのだ。

ただし、あまりにもバランスの悪い離し方をすると、単純にボリュームが下がり、なぜかBメロやサビになるにつれ声が小さくなるという“悲しい事故”が起きることがある(笑)。そうならないためにも、仕組みと目的を理解したうえで、耳でモニターの返しをよく聴きながらバランスを保つ意識が大切だ。マイキングとは、手と耳と心で行う“ライブの微調整”なのである。

◾️マイクスタンドの“固定マイキング”を操る

ここまで話してきた距離感と角度の感覚を前提にすると、マイクを手に持ってコントロールできる場合と、マイクスタンドに固定して弾き語る場合では、必要な意識がまったく違ってくる。手持ちマイクでは手の位置やリストの角度で距離を調整できるが、スタンド固定では身体や顎の方を動かして調整しなければならない。つまり、「声を出す自分の位置そのものがフェーダー」になる。

弾き語りのようにギターを抱えていると、腕や肩、姿勢の自由度が限られるため、まず基準位置を明確に決めることが大切だ。たとえばSM58なら、通常の歌唱時に口とマイクヘッドの距離を指2本半ほど空け、マイク角度をやや上向き(約15度)に固定しておく。こうしておくと、少し前傾すればAメロの繊細なニュアンスが近接で拾われ、体を自然に起こせばBメロ〜サビの距離感が自動的に生まれる。つまり「体重移動=音量変化」となる。そしてそれを無理に“頭でやる”のではなく、呼吸と姿勢の連動で行うことが重要だ。喉で頑張らず、身体全体で音量と距離をデザインするイメージだ。

◾️立って歌う場合と座って歌う場合の違い

立って歌う場合は、身体の自由度が高いため、マイクに対する角度と距離を自然にコントロールしやすい。たとえばマイクをやや上向きにセットし、立ち姿勢で少し前に覗き込むようにすればAメロのようにマイクとほぼ垂直に声を当てられる。そこから体を起こすと自然にマイクとの距離が広がり、Bメロ〜サビで理想的な距離(指2〜4本分)が確保できる。つまり「姿勢変化=マイキング変化」がスムーズに起こるため、立って歌う方が表現の幅が広い。

一方、座って歌う場合は姿勢が固定されやすく、距離変化を身体でつけるのが難しい。ギターを持つ姿勢は安定するが、上半身の可動域が限られる分、マイクとの関係をあらかじめ設計しておく必要がある。理想は、マイクスタンドを少し低めにし、マイクを軽く上向き(約10〜15度)に固定すること。これで上体をほんの少し前に倒すだけでAメロのニュアンスが拾え、姿勢を戻せば自然にBメロ〜サビの距離が取れる。座っている場合は、身体の動きが限られる分だけ、セッティングの初期位置で勝負が決まる。マイキングは立ちよりも難しくなるが、逆に安定した呼吸と体幹が得られるため、落ち着いた表現には向いている。

◾️ブルースハープを併用する場合のコツ

さらに難易度が上がるのが、ブルースハープ(ハーモニカ)をネックフォルダーで併用する場合だ。フォルダーがマイクと自分の口の間に入り込むため、距離の誤差が出やすく、ちょっとした動きでもマイクに「カチカチ」と当たる。ここでの正解は、まずフォルダーの位置を口の真正面ではなく、少し下(約1〜2cm)にずらしてセットすること。マイクは自分の口より少し高めの位置から下向きに固定し、ハープを吹くときは顎を軽く引く。こうすることで、フォルダーがマイクに当たらず、声も自然に拾える。演奏中は「マイクを避ける」意識よりも、「マイクと共存する」意識を持つことが大切。動きを最小限にしながらも、息の方向と距離の感覚を常に保つこと。これが“二刀流マイキング”のコツだ。

マイクスタンドを使う演奏では、手よりも身体で距離と角度をコントロールすることになる。つまり、マイキングとは“姿勢の芸術”でもある。手動マイキングが指先の表現なら、スタンドマイキングは身体全体で描くダイナミクス。そのわずかな角度や前傾が、音の世界を作り出す。

◾️SHURE KSM8という“次世代のマイク”の正解(SM58との違いまで踏み込んで)

僕が使っているSHURE KSM8は「近接効果を徹底的に抑え、オフ軸の音色変化も小さい」ダイナミックマイク。SM58は“距離で低域と存在感を作る”マイクだけど、KSM8は“距離で音色があまり変わらない=角度と息の向きで表情を作る”マイクだ。だから運用思想がそもそも違う。

1.距離の考え方
SM58…距離が近づくほど低域が太る。Aメロは指1本、Bメロは2本、サビは3〜4本といった距離差で“音色+音量”を同時に彫刻する。
KSM8…距離で低域がほとんど膨らまない。A/B/サビの“音量差”は出るが“音色差”は出にくい。だから距離差は小さめにし、基準距離を近めに固定して角度でピークや子音を整えるのが正解。

推奨の目安(歌もの/クリーンに届ける前提):
Aメロ 1cm/軸ほぼ正対、息はわずかに下へ
Bメロ 2cm/軸を5〜10度外す
サビ 3cm/軸を10〜15度外してピークを受け流す
SM58の“指幅1・2・4本離していく調整”に対して、KSM8は実戦ではほぼ距離を同じにしていい。発声そのもののボリュームコントロールで十分に対応できる。距離ではなく、角度で整える──それがこのマイクの設計思想であり、正解だと思う。

2.角度と息の向き(KSM8の主戦場)
・正面にまっすぐ吹き込むと、立ち上がりが硬くなりやすい。KSM8は5度の軽いオフ軸が“丁度いい直球”になる。
・ブレスや破裂音(P/B)を抑えたい時は、口は正対でも“息だけ下に逃がす”。あるいは顎を1〜2cm引いて、息のベクトルを軽く下げる。
・サ行や高域ピークは、軸をほんの少し外すだけで自然に丸くなる。KSM8はオフ軸の色変化が小さいから、角度で“整音”しても声色が痩せにくい。

3.ダイナミクスの作り方
SM58…距離=手動フェーダー、距離=手動EQの側面が強い。
KSM8…距離は“レベルだけ”、音色は“角度と息”で作る。つまり“人力コンプ”は距離で、“人力EQ”は角度で、の役割分担が明確。大声になっても角度を5〜15度外し、息を少し外すだけでピークが自然に収まる。

4.手持ち運用(KSM8
・基準は“近め固定”。Aメロ基準1cmを作って、声が出るほど手首のヒンジで2cm~5cmに“スライド”させる。SM58のように大振りに引かない。
・横ブレやステップで口が外れても音色が崩れにくい=振り付けに強い。左右に少し動いても破綻しないので、“軸微外し”で耳障りだけ落とすのが上手いやり方。
・グリルを手で覆う“カッピング”は厳禁。KSM8のパターンが崩れ、ハウりやすくなる。握る位置はグリル下の細身シャフト一択。

5.スタンド運用(KSM8
KSM8は“距離変化で音色が動かない”ので、基準距離を近めに。
〇立ち:マイクをやや上向きにセットし、口より少し高い位置から覗き込むように歌えばAメロは正対(約5度オフ)。体を起こしていくにつれて、そのままB〜サビの距離(約1〜3cm)と角度(5〜15度オフ)になる。
〇座り:上半身の可動が狭いので、スタンドをやや低め+マイクは15度上向き固定。前傾=Aメロ、ニュートラル=B、軽く上体を起こす=サビの“3ポジ”をあらかじめ設計。座りは可動域が少ないぶん初期位置と角度の設計勝ち。

6.ブルースハープ併用(ネックフォルダー)との相性
・物理干渉を避ける配置が先。フォルダーは口の真正面ではなく“1〜2cm下”へ下げる。マイクは口より少し高い位置から“軽く見下ろす角度”に固定。
・ハープを吹く瞬間は顎をほんの少し引いて“ハープ側へ空間を譲る”。声に戻る時は顎を戻して“マイクに息を戻す”。
KSM8はオフ軸変化が小さいので、この“顎の往復”でも声色が崩れにくい。
・距離は常に近め運用(2〜4cm)で安定させ、ハープ→声の切り替えは“角度と顎”で行うとスムーズ。

7.監視と安全マージン
KSM8はパターンの安定性ゆえに“返しを大きくできる傾向”があるが、油断は禁物。ステージ上のスピーカー配置や反射で状況は変わる。基本は“耳で返しを確認し続ける”こと。
SM58的な“距離で艶を作る”癖のままKSM8に持ち替えると、「距離だけ離して音色が細いまま音量だけ落ちる」というミスマッチが起きやすい。角度と息の向きに意識を向けるのがKSM8流。

最後にひとこと。KSM8は“距離で太らない潔さ”のおかげで、ライブの身体動作がそのまま音の表情に変換される。だからこそ、離し過ぎでただ小さくなる事故は避けたい。仕組みと目的を理解して、返しをよく聴きながら、角度と息で音色を描く。これがKSM8の正解で、SM58とは違う勝ち筋だと思う。

◾️僕の実戦セット──KSM8+ブルースハープのリアルマイキング

僕のスタイルは、KSM8を使うタイプのボーカルで、マイクを手で持つときは距離をほとんど一定に保ち、声そのものの自然なダイナミクスを生かす。サビの音量でピークを越えない設定にしておけば、それが一番自然に“届く”歌い方になる。あとは角度で表情を変えたり、音量が上がったときに角を落としたりして音の色を描く。AもBもサビも距離を変えないからこそ、音色のEQがブレず、ライブ全体の一体感が保てる。KSM8は近接効果が抑えられているから、距離で音を作るよりも、角度で息を逃がし、ピークを整えるのが正解なんだ。

手持ちの場合は、マイクを下から軽くあおる角度で構える。Aメロはほぼ正対から5度オフ、Bメロで10度オフ、サビで15度オフくらい。距離はそのままで、角度だけを変える。息をまっすぐ吹き込まないことで、破裂音や耳に刺さるピークを自然に避けられる。距離を一定にしておけば、A→B→サビの声量変化がそのままダイナミクスとして伝わり、ライブ全体の音像も安定する。

そして、僕の弾き語りのスタイルでは、マイクスタンドでマイクを固定し、必ずブルースハープを首から下げている。これが加わることで、マイク位置の自由度は一気に狭まる。だからこそ、マイクスタンドをやや高めにセットし、上から見下ろす角度にしておく。こうしておけば、ハープフォルダーとの干渉を防げるし、顎を少し引く/戻すだけでブルースハープとの行き来もスムーズになる。マイクの角度は下からではなく、上からの「見下ろし軸」で調整するイメージだ。マイクの見下ろす角度は15度ほどに設定し、Aメロでは少し顎を上げてオフ0〜5度、Bメロでは10度、サビでは正面を向いてオフ15度という感じで使っている。顎のわずかな動きで息の向きをコントロールし、音を描く──まさに“顎でEQやノイズゲート、コンプをかける”ような感覚だ。マイクを上向きに構える場合とは上下が逆になるが、ステージング的に見た印象もまったく違う。マイク上向き型ではAメロで前のめりになり、サビで上を向くか、マイク見下ろし型だとAメロで上を向き、サビで正面を向くか──その違いだけでも表現の印象は大きく変わる。どちらにもそれぞれのかっこよさがあり、それを自然なパフォーマンスとして身につけていくことが大切だ。

どのみち、このマイクの場合、実質、マイクとの距離はほとんど動かさない。音量バランスは声の強弱だけでいい。あとは角度で、声が大きいときの角を逃がしつつ、広がりを表現する感じだ。ハープの音がマイクにカチカチ当たらないよう、フォルダーを1〜2cm下げておくのもポイント。

KSM8のいいところは、こうしたリアルな身体操作がそのまま音に変換される点だ。だから、距離を変えずに角度と呼吸で勝負できる。距離を意識しなくていいという、一つの意識が不要になることは本当に大きい。これまで“距離”に使っていた集中を、音の表情や観客との交流に向けられるようになる。むしろ演奏の一体感が増す。それが、このマイクを使う最大の強みだと思ってる。

◾️マイクと心をつなぐ“最後の一線”
PAコンソールのフェーダーやコンプレッサーは、あくまで補助にすぎない。ライブで本当に大切なのは、マイクの前に立つ人間の“意識”だ。マイクの特性にあった意識の連動こそが、最も自然な「マイキング」になる。

KSM8のように距離変化の少ないマイクでも、この“手動調整”の意識があれば、ライブの音は驚くほど生き生きとする。マイクは声を導く道具だ。自分の息の延長線上にマイクがある感覚。マイクを信じると、声に余裕が生まれ、会場を包み込むことができる。

結局のところ、マイキングとはテクニックではなく信頼関係。自分の声を信じ、マイクを信じ、そして聴いてくれる人を信じること。その三つの信頼がつながった瞬間に、音楽は初めて“届く”のだと思う。

◾️おわりに
今日もそんな音楽のことを考えながらも、一つずつ自己成長、自己実現に向けて頑張っていきながらも、目の前の生活、仕事、様々なことを取り組んで一生懸命生きていくことだろう。

こういった日々の積み重ねが、一つ一つの前進が後から振り返った時に、どんだけ遠くに歩いてきたことが実感することだろう。だから少しずつでもいい、一ミリずつでもいいから前に進むこと、登っていくことが大切だ。
これが自分自身、そして自分の周りにいる子どもたちや家族、仲間たちを一緒に高めていく大切な営みなんだ。

そんなことを考えてそれぞれがそれぞれの場所で一生懸命頑張っている。それを誇りに思うし、心から尊敬する。そしてそんな僕たちが豊かになることを信じている。

さあ、今日もありがとう。同じ空の下で心は一つ、心は一つ、いつも心は隣だ。ありがとう。

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