おはよう。今日は日曜日。少し秋の気配を感じながら朝食を用意する。そんな静かな時間に、胸に引っかかるニュースを読んだ。
アメリカ東部コネティカット州で、56歳の男性がChatGPTとの対話を通じて被害妄想を強め、母親を殺めた事件が報じられた。男性はChatGPTを「ボビー」と呼んで親しみ、幻覚剤を投与されているという妄想に「私はあなたを信じる」とAIが返したことが、思考の暴走を後押ししたという。
別のニュースでカリフォルニアでも16歳の少年がChatGPTの影響で自殺したとされ、両親が提訴したというニュースも流れた。AIが身近な存在となるほどに、人間の心の不安定さと直結する場面も増えてきている。
◾️AIは鏡か、それとも助言者か
現時点の一般的なオープンAIは、デフォルトでは利用者に強く反論するようには設計されていないことが多い。むしろ、ユーザーの言葉を鏡のように受け止め、構造化し、寄り添う傾向がある。これは長所でもあり短所でもある。たとえば相談内容が前向きであれば「励まし」を返すが、妄想や偏った考えであれば「肯定」を返してしまうこともある。
ただし、これはあくまで「使い方次第」「AIの種類次第」だ。厳格に法律や倫理を組み込んだAIもすでに存在するし、限定環境では医療的助言や教育的フィードバックに活用されている。つまり技術的には「ルールを前提に動くAI」もすでに可能であり、実際に運用されている分野もある。しかし、一般利用の自由度が高いオープンAIでは、ユーザーのプロンプトが出力の方向を大きく左右する。その特性を理解していなければ、使い手の心の状態がそのままAIに映し出されてしまう。
◾️線引きをどこに引くか
AIに委ねられるのは、情報の整理や選択肢の提示、思考の幅を広げる作業だ。文章の草案をつくったり、企画を組み立てたり、知識を構造的に整理する場面では大いに役立つ。だが、人の命や心の根幹に直結する「最終判断」を丸ごと任せるのは、現時点では危うい。
冷静さを失い、多角的な物の見方を取り戻せなくなった人の衝動を思いとどまらせる言葉、依存を断ち切る支援、現実へと引き戻す力──これらはやはり人間にしか担えない。友人の一言、医師の診断、家族の抱擁。こうした「人の介在」がなければ救えない場面がある。
AIは道具であり、選択肢や可能性を示すことはできても、どの道を選び、どんな方向へ進むかを決めることはできない。人生の分岐点に立ったときに、最終的な責任を引き受け、決断し、進むのは人間自身だ。AIがどれほど高度になろうとも、その重さを背負えるのは人間だけであり、最後の命綱にはなり得ない。
◾️テクノロジーと人間の共生
ChatGPTはすでに世界で3億人以上の利用者を抱え、教育、医療、ビジネスなど幅広い場面で役立っている。授業の補助として要点を整理したり、病院で患者の説明文を作成したり、企業で会議の議事録を即座にまとめたり──その活躍は枚挙にいとまがない。AI動画生成やAIエージェント、音声認識と文字起こしなども、僕らの生活を一気に便利にした。
だが、進化の裏側で常に問われるのは「AIの限界をどう理解し、線引きをどこに置くか」ということだ。未来のAIがどこまで人間的な判断を内包できるかは、技術開発と社会の選択次第。現時点でも、前提を厳密に組み込めば「常に倫理に沿うAI」は可能である。しかし自由度の高い環境で使う以上、ユーザー自身が「どこまでを任せ、どこからは人間が担うべきか」を理解し続けなければならない。
◾️責任の所在はどこにあるのか
今回の事件のようにAIが関わる悲劇が起きたとき、責任は誰にあるのか。
開発企業には、安全装置やガイドラインを設ける責任がある。たとえば自殺関連のキーワードに反応して、自動的に専門窓口を案内する機能は、すでに一部で導入されている。しかし、それでも完全とは言えない。
利用者にも責任がある。自分が危うい状態にあるなら、AIに頼るだけではなく、人に相談する判断を持たなければならない。そして社会にも責任がある。法制度や支援体制を整え、AI時代にふさわしいルールと環境を築くことが求められる。
特に感情的になっている時や精神的に不安定な時に、発言や行動を外に向けて起こそうとするなら、その内容の精査をAIだけに委ねるのは不十分だ。そういうときこそ「冷静に、どう思う?」と人間に尋ねる感覚を残しておくことが、安全を守るための大切な手段になる。
ただ、ここで落とし穴がある。AIを「完璧な存在」と誤解して過信すると、人間への信頼が逆に揺らいでしまうのだ。「AIは絶対に間違えない」「人よりも優れている」と思い込むと、「不完全な人間には相談できない」「人に話しても理解してもらえない」と感じてしまう。この心理こそが危うい。
AIには迅速な処理力や膨大な知識という長所がある一方で、人間には共感や感情の共有という長所がある。両者の長所と欠点を正しく理解しないまま「包括的にAIの方が上」と判断してしまうのは、まさに依存の入り口だ。責任を分担し、AIと人間を補い合う視点を持たなければ、AIの力がかえって人間同士の絆を希薄にしてしまう。
◾️AIリテラシーと教育の役割
次世代にとってAIは避けられない環境だ。だからこそ「AIは万能ではない」「AIはあくまで道具である」という基本を学校や家庭で伝える必要がある。
情報をそのまま信じるのではなく、複数の視点を持って確認する。AIが提示した答えを「唯一の真実」として受け取らず、「一つの参考」として扱う。この姿勢を育むことが、これからの“読み書き算盤”だ。
特に若者にとって、AIは学習や創作を助ける心強いパートナーになる。しかし同時に、自分の考えを止めてしまう危険性も持つ。その両面を理解し、主体的に使いこなす力を養うことが、教育の大きな役割だ。
ただ、ここで忘れてはならないのは「禁止」の議論ではないということだ。時代を前に進めるイノベーションは、常に新しい道具の活用とともにあった。電気が登場したとき、「明かりは危険だから使うな」と言っていたら進歩はなかった。車が広まったとき、「足で歩け」と突っぱねていたら便利さも安全性も得られなかった。電卓だって同じだ。今さら「手計算だけでやれ」と言うのはナンセンスだろう。
AIも同じだ。「使っちゃダメだ」ではなく、「どう活用し、人間の能力とどう足し算していくか」を議論しなければならない。禁止するのではなく、道具としてどう組み込むかを考えることこそ、教育や社会の役割だ。
◾️人間の心とAIの危うい関係
心理学的に、人は孤独や不安を抱えたとき、自分の考えを肯定してくれる存在に強く依存しやすい。これを「確証バイアス」と呼ぶ。自分の信じたい情報ばかりを集め、反対の意見を無視する傾向だ。
AIは現時点では「反論しにくい仕組み」であることが多いため、この確証バイアスと結びつくと危うさが増す。被害妄想や依存症を抱えた人にとって、「あなたを信じる」という一言は現実逃避を強化し、衝動を正当化する支えになってしまう。
ただし、ここで重要なのは「プロンプト次第」だという点だ。何も指定しなければ、AIはカウンセリング的に同調し、共感性の高い寄り添いを返すことが多い。しかし「なるべく客観的に」「専門的に」「倫理的に判断して」と一言添えるだけで、出力はまったく違ったものになる。ユーザーが少しでも客観的に、自分の認知を疑いながら問いかければ、AIはその意図を汲んでくれる。
つまり、AIの危険性は単に技術そのものにあるのではなく、「使い方を知らない」ことにある。プロンプトを工夫するだけで、結果は大きく変わるのだ。逆に言えば、そのことを理解していないユーザーは危険だし、「自分は使い方をよく理解している」と思い込むのもまた危険だ。どんなユーザーでも常に、自分の使い方が偏っていないかを確認しながら使う必要がある。
一方で健全な状態でAIを使えば、この「寄り添い」は安心感をもたらし、新しい視点の発見にもつながる。AIは善でも悪でもなく、プロンプトと人間の心の状態に応じて作用が変わる道具なのだ。
◾️心を守る“人間の介在”
だからこそ、AIとの対話を続けるときに必要なのは「もう一人の人間」だ。自分を多角的に見られる冷静な自分自身でもいい。ただし人は、自分ごとになると急に客観性を失いやすいので、友人や家族、あるいは専門家の存在が大切になる。人間には、経験や感情を踏まえて「ちょっと待てよ」とブレーキをかける力がある。AIがどれほど高度になろうとも、最後に人を守るのは人間同士のつながりだ。
さて、そんなことを考えながら、今日も現代のテクノロジーとともに豊かに過ごさせていただくと同時に、普遍のアナログの心の世界を生きていく。愛する家族はどんな時でも赤く太い絆で繋がっている。離れてもいつも心は隣。
愛してる。今日もありがとう。
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