おはよう。さあ今日は、広島の街を支えてきた「新交通システム」――今の呼び名で言えばアストラムラインについて、まずは延伸の最新状況を整理したい。区間延伸の見込み、広島市の方針、その背景。そして、あの日の上安の事故の記憶まで。最後はちゃんと前を向くところまで、一本の線でつなげたい。
◾️まず結論:延伸は「事業化済み」だが、いま再検証フェーズに入っている
いちばん気になる延伸の話から。広島市は、アストラムラインを広域公園前からJR西広島へ延ばす計画を「事業化する」と明確に打ち出している。延長は7.1km。西風新都線(新交通西風新都線)として位置づけられていて、目的は「JR山陽本線と接続して環状型ネットワークをつくる」「西風新都・デルタ間の循環を強める」「西風新都の都市づくりを推進する」と、都市政策そのものに直結している。さらに、広島高速交通(運営会社)の経営にも資する、という整理になっている。
ただしここが重要で、2026年2月の報道では、広島市が来年度(2026年度)に整備効果の再検証を行う方針を示している。物価高騰などで事業費が変動する可能性があるため、効果をもう一度計算し直す、という話だ。現時点で「ルートや2036年度開業予定は変更なし」という報じられ方もされている。つまり、方針としては進める。ただ、数字を“いまの物価・いまの前提”で再点検する局面に入った、という状態だ。
◾️延伸区間はどこからどこまで?駅は?ルートは?(いま見えている具体像)
公式に示されている延伸(新交通西風新都線)は、広域公園前駅からJR西広島駅へ。市の資料では延長7.1kmと明記されている。
ルートの考え方もはっきりしていて、五月が丘地区は団地内の幹線道路を活用して用地取得をできるだけ避ける、石内東は道路法面など市有地の活用で事業費を抑える、己斐地区は既に都市計画決定している「己斐中央線」区域に載せる、終点の西広島駅はJR・広電との乗換利便を重視して南口広場上空に配置する――こういう“実務の匂いがする設計思想”が並んでいる。
一方、都市計画原案が公表されたタイミングの整理として、途中駅を含めて「途中に6駅(仮称)」「駅部以外は単線を基本」「概算事業費は約760億円」「2036年開業を目標」といった具体数値も、報道ベースで広く共有されている。
ここまで来ると、“延伸の見込み”は「構想段階の夢」じゃない。行政手続き・測量・用地取得・着工・開業という長い工程の、途中まで既に積み上がっている話だ。ただ同時に、近年の建設費高騰の影響が重いから、再検証で何がどう修正されるか(費用、便益、段階整備、スケジュールの現実味)は、ここからが勝負になる。
◾️広島市の“延伸の意味”は、単なる便利さじゃなく都市構造そのもの
市の説明に出てくるキーワードが象徴的で、「環状型ネットワーク」「西風新都・デルタ間の循環」「ヒト・モノ・カネ・情報の好循環」。交通インフラを単体で見ていない。街の成長の循環装置として見ている。
広島って、中心部(デルタ)に強い力が集まりやすい街だ。そこへ郊外拠点(西風新都)を“ただのベッドタウン”として置くんじゃなく、働く・学ぶ・憩う・護るまで含めた複合拠点として育てたい。そのために「軌道系で直結する」ことに意味がある、というロジックになっている。
◾️アストラムラインの正体:正式名称と、広島に必要だった理由
アストラムラインの路線としての正式名称は「広島新交通1号線」。運営は第三セクターの広島高速交通。開業は1994年8月20日。これは公式のQ&Aでも明記されている。
なぜ作られたか。これも公式に近い言葉で言うと、安川沿いの北西部地域で宅地開発が進み人口が急増し、交通問題が深刻化した。そこへ、国道54号(祇園新道)や都市計画道路中筋沼田線の道路空間を活かして、渋滞や踏切の影響を受けにくい“専用軌道の新しい軌道系”として導入された、という位置づけだ。
つまりアストラムラインは、最初から「道路が詰む未来」に対する、都市の回答だったんだと思う。車が便利な街ほど、ある日突然、便利さが自分を苦しめる。通れない、進めない、遅れる。そうなる前に、都市は逃げ道をつくる。その逃げ道が、軌道系だった。
◾️街の人にとっての存在:日常の“時間”を取り戻す装置
アストラムラインって、観光の主役というより、生活の背骨だ。通勤・通学・病院・買い物。雨の日も渋滞の日も、一定のリズムで動く。広島の北西側に住む人間ほど、これが“当たり前にあるありがたさ”を知っている。
そして延伸議論が繰り返されるのも、結局ここに戻る。街は伸びる。人の流れも変わる。けど、交通の骨格だけが昔のままだと、最後に皺寄せが来る。だから「先に骨格を伸ばす」のが都市政策になる。
◾️上安の事故:あの橋桁落下事故は、広島の記憶として刻まれている
ここから先は、軽く書けない。
1991年3月14日、建設中の広島新交通システム(後のアストラムライン)の工事現場で、橋桁が落下し、多数の死傷者が出た。信号待ちの車両が押しつぶされた、という記録も残る。
僕自身の記憶としても、友だちのお母さんが亡くなった。僕は小学生の低学年だったと思う。下校途中、爆音が轟き、あの瞬間に世界の質感が変わった。子どもにとって「死」は、教科書の中の概念じゃない。突然、目の前に現れる現実になった。広島の人間にとって、あの事故は“忘れられない”というより、“忘れてはいけない”に近い。街の便利さの土台に、痛みがあると知ったからだ。
◾️それでも、だからこそ:安全と技術と運用は、誰かの仕事の積み重ねで成り立つ
アストラムラインは、専用軌道で渋滞と交差点から距離を取る設計を持つ。電気で走り、騒音が少なく、踏切がない。そういう特徴は、ただの売り文句じゃなく「安全を設計で取りにいく」という思想の表れでもある。
そして“運用”というのは、技術だけじゃない。保守、点検、教育、更新、予算、判断、現場の誇り。そういう地味な積み重ねが、毎日の定時性を支えている。
延伸の話も同じで、夢を語るだけじゃ進まない。測量、用地、都市計画、環境評価、工事、費用、便益、説明、合意。ひとつひとつが現実の仕事だ。いま再検証に入った、というのも、ある意味で誠実だと思う。高い買い物だからこそ、時代の前提を更新して、もう一度数字で向き合う。そこをサボると、未来の誰かが苦しむ。
◾️誰かの魂と力が土台になって、いまがある
便利さって、空から降ってこない。誰かの決断があり、誰かの現場があり、誰かの責任があり、そして時には、取り返しのつかない痛みも背負っている。
上安の記憶は、きっと一生消えない。消えないままでいい。あれを忘れたら、街の便利さを“ただのサービス”として消費する側に落ちる気がするから。
延伸が実現するかどうかも、これからの検証と現実の積み上げ次第だ。でもひとつ確かなのは、広島は、みんなの暮らしをつなぐために、何度も交通の形を考え直してきたということ。アストラムラインは、その象徴だ。
さあ、そういったみんなが作り上げた運行に思いを馳せながら、誰かの魂や力が土台になって今があることを忘れずに。感謝と愛を胸に、今日もやっていこう。
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