おはよう。今日は「怒り」や「衝動」を、アンガーマネジメントの“その先”として整理してみる。
前に書いた「✍️アンガーマネジメントの最終段階 ─ 正論を言わなくても揺らがない自己一致の力」で言いたかった核心は、単に怒りを抑える技術じゃない。怒りの瞬間に“冷静に言う”ことすらゴールじゃなくて、冷静であっても「言う/言わない」を自分で選べることが本当の到達点だ、という話だった。衝動に押されて正論をぶつけると、相手には攻撃として届きやすく、結果として「能力はあるけど扱いづらい」と記憶されて、人生のチャンスを落としていく。だからこそ、最初の段階は爆発を抑えること、そして本当のアンガーマネジメントは、その先で“言わない自由”を獲得することだ、と書いた。
さらに、その「言わない」は我慢や抑圧じゃなく、感情を否定せず抱えた上で、表現の仕方を自分で選ぶ“感情調整”だとも整理した。ロジャーズの自己一致の話に繋げて、「言わなくても自分が崩れない」状態こそが、精神的に成熟した自己一致だ、と。
──で、今日はそれ以前の大切な話。
「言う/言わない」を選べるようになってきたとしても、選ぶ力そのものが“起動しない日”がある。睡眠不足、体調不良、疲労、環境変化。そういう日に限って、火花みたいに瞬間で爆発する。ここに、努力だけではどうにもならない領域が混ざってくる。今回はそこを、特性として扱う。根性論でも、自責でもなく、人生の事故率を下げるための設計の話として。
◾️怒りは「正しさ」より先に、身体条件で起動する
怒りって、正論があるから出るんじゃない。多くの場合、先に身体側の余裕が切れている。眠れてない、体調が悪い、脳が疲れてる。その状態で刺激が入ると、理性が追いつく前に反射で出る。あとから正しさが言い訳として付く。ここを見誤ると、いつまでも「考え方」だけで戦おうとしてしまう。
◾️努力で変えられる領域は、たしかにある
時間軸を未来に飛ばす「5分後、5日後、5年後」みたいな技術。距離を取る、別室に行く、水を飲む、呼吸する、言葉にする。こういう工夫は効くし、積み上げるほど爆発は減っていく。ここは“鍛えれば伸びる領域”だ。
◾️でも、努力が起動しない日がある
問題はここ。努力が効かないというより、努力が起動しない。脳の燃料が足りない日に、上等な思考は立ち上がらない。さらに厄介なのは、相手が変わった瞬間にルールが消えることがある点。気をつけている相手にはできるのに、別の相手には急に抜け落ちる。これは意志の弱さというより、特性とコンディションの掛け算として整理した方が、現実に対処できる。
◾️勝ち方を「説得」から「設計」に変える
ここからは“正しさ”じゃない。“設計”だ。
体調が悪い日は交渉しない。睡眠が足りない日は重要な話をしない。疲れてる日は結論を翌日に持ち越す。環境が変わる時期(異動、季節の変わり目、家のイベント続き)は、あらかじめ火花が出やすい前提で守りを厚くする。これは逃げじゃない。人生の損失を減らす、現実的な強さだ。
◾️努力で変えにくい部分には「外部の力」という発想がある
例えば、難聴なら補聴器。老眼なら眼鏡。歯なら入れ歯。これはもう、「気合で治せ」とは言われない領域だ。
薬も同じで、高血圧や高コレステロールみたいに、生活習慣で改善できる部分は当然ある。でも、努力だけでは届かないフェーズもある。必要なら医療の力を借りる。色々な判断や考慮をした上で、それで生活の質が上がるなら、むしろ賢い選択だと思う。
脳や心の領域だけが、なぜか根性一本で抱え込みやすい。でも脳も臓器だ。睡眠不足や疲労、体調不良で“性能が落ちる日”があるのは当たり前に起きる。だから、努力で伸ばせる部分は伸ばしつつ、努力で伸ばしきれない部分は“補助”という考え方も、最初から選択肢として持っておくのが安全だ。
◾️薬を勧めたいわけじゃない。ただ、選択肢から外したくない
ここは丁寧に言う。薬を飲めと言いたいわけじゃない。合う合わないもあるし、必要性も人によって違う。副作用や相性の問題もある。
でも逆に、「薬は嫌だから絶対に触れない」と決めつけるのも危険だと思ってる。目的は“正しさ”じゃなくて、爆発を減らして人生の事故率を下げることだから。
必要なら専門家に相談し、複数の可能性(特性、睡眠、ストレス、気分の波、身体疾患も含む)を広く疑いながら、最適解を探す。誘導じゃなく、選択肢を増やすという意味で。
◾️結局、守りたいのは「自分の未来」と「大切な人」
怒りで壊れるのは、だいたい一番守りたいものだ。家族、信頼、仕事の土台。だからこのテーマは、認知やメンタル論だけじゃなく生活設計の話になる。派手な成功を狙うより、まずは事故を減らす。これがいちばん効く。
人生って、一発の失敗で取り戻せないものがある。だからこそ、変えられる部分は一つずつ整えて、変えにくい部分は無理に根性で抱え込まず、必要なら外部の力も含めて設計し直す。
これまでの失敗は勉強だ。高い授業料だ。過去は変えられない。でも自分と未来は変えられる。
愛している者のために、自分のために。愛と感謝を胸に。それではまたね。
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