おはよう。今日も秋晴れでめちゃくちゃ気持ちいい。
さて、直近の音楽活動として、ライブの準備と並行して「笑顔のまほうつかい」の音源が完成し、「星になった君と」のリミックスも仕上げに入った。
ここでは僕が普段からやっている歌もののミックスの基本をまとめておく。初心者の方や、これから始める方の参考になればと思う。
最初に少しだけ説明しておくと、これはDTM(デスクトップ・ミュージック=パソコンを使った音楽制作)の話だ。僕は MacBook Pro と Logic Pro を使っていて、そこでの作業を前提に書いている。ただし、ソフトや環境が違っても考え方の基本は同じだから安心して読んでほしい。
そして前提として、ここで扱うのは「各トラックの録音や打ち込みがすでに終わった状態」だ。つまり、すでに素材が揃った段階からの ミックスやマスタリング に関する基本を綴っていく。録音や打ち込みの段階での工夫や考え方については、また別の機会に記事にまとめたいと思っている。
最初にもう一つ付け加えておきたいのは、ここで示す数値や設定はあくまでも典型例であり、絶対的な正解ではないということ。曲の種類や目指す音楽性によってまったく変わる。ここに書くのは「概念を伝えるための例」として受け止めてほしい。
□ サミングフォルダで整理する
トラックが増えると個別にフェーダーを触るのは限界がある。
だから僕は必ず「サミングフォルダ」を作り、アコギ群、エレキ群、ドラム群、AUX群などを親ホルダにまとめる。
・親ホルダに絶対値のオートメーションを書き、全体のバランスを一目で管理できる。
・ボーカルを0に固定して、そこから相対的に「キックはここ」「スネアはここ」と積み上げる
・こうすることでプロジェクトが一気にスッキリし、迷いがなくなる
□ EQは声に場所を譲らせる
EQは楽器を良くする魔法ではなく、声を前に出すための帯域の棲み分けツールだ。
各楽器に少しずつ帯域を譲らせることで、声は自然に前に出てくる
・ボーカル:1〜2kHzと2.5〜4kHzが特に大切
・アコギ:80Hz以下を切って、2〜3kHzを軽くディップ
・エレキ(歪み):200〜400Hz削り、3〜5kHzを軽くブースト
・ベース:100Hzをブースト、200Hzを軽く削って整理
・ドラム:Kickは60〜80Hzを支点、Snareは5kHzで抜け感を作る
・装飾音(ベル系/グロッケン風):200Hz以下を切って、5kHz以上でキラキラを出す
□ パンニングで声のために空間を作る
EQで上下の帯域を整理したら、パンニングで左右と前後の広がりを設計する。
声をセンターに据えるために、楽器を配置して立体感を作るのが基本。
・ボーカル/ベース/キック/スネア:センター(主軸)
・アコギ:左右いすれか40〜60%(背景を支える広がり)
・エレキ(バッキング):アコギの反対側に振る(空間のバランス)
・リードギター:センター寄り(主旋律に寄り添う)
・装飾音(ベル系):左右に大きく散らす(奥行きと幻想感)
さらに、これらの楽器は場合によっては同じフレーズを複数トラックに録音し、片方にわずかなディレイをかけてダブリングさせ、左右に振ることで広がりや厚みを出すことができる。
ドラムのマルチアウト例(ドラマー視点)
・Kick:センター(心臓の鼓動)
・Snare:センター(リズムの柱)
・Hi-Hat:左40%(チクチクとした切れ味)
・Rack Tom:左20%(流れる動き)
・Floor Tom:右40%(低い重心)
・Overhead:LR100%(広がり)
・Room:LR100%(空気感)
□ リバーブは表情
リバーブはセクションごとに動かすと曲が呼吸を始める。
全体を馴染ませ、立体的なリアリティを作るのが役割だ。
僕はなるべくマットな感じが好きなので、以下のイメージをもとに削りながら調整し、ちょうどいいマット感に仕上げていく。
・Room:Decay 0.6〜1.0s → 小部屋での近さ / Pre-Delay 10〜20ms → 手の届く距離
・Plate:Decay 1.2〜1.8s → 艶と輪郭 / Pre-Delay 20〜30ms → 一音一音が押し出される
・Hall:Decay 2.5〜3.5s → 壮大で広大な響き / Pre-Delay 30〜50ms → 声が前に出て残響が後ろに広がる
まとめ
・Decayが短い=近く乾いた響き
・Decayが長い=遠く濡れた響き
・Pre-Delayが短い=一体感
・Pre-Delayが長い=声が前に、空間が後ろに
□ コンプレッサーの基本
コンプをかける目的は大きく3つ。
1. 音量差を安定させる(聴きやすさ)
2. アタックや余韻を整えて音の表情をコントロールする
3. ミックス全体の中で埋もれないように前に出す
楽器ごとの典型例:
・ボーカル
目的:抑揚を整えつつ、感情表現は残す。
設定目安:Ratio 3:1、ThresholdはピークがGR -3〜-6dBになる位置。Attack 10〜20ms(声の立ち上がりを残す)、Release 80〜120ms(自然な戻り)。
・キック
目的:低域をタイトにしてリズムの土台を明確にする。
設定目安:Ratio 4:1前後、Attack 5〜10ms(アタックを潰さない)、Release 50〜80ms。GR -3〜-5dB。
・スネア
目的:打撃感を残しながら厚みを一定に保つ。
設定目安:Ratio 3:1、Attack 10〜15ms、Release 80〜120ms。GR -3dB前後。
・ベース
目的:ローが暴れないように支えを安定させる。
設定目安:Ratio 3:1〜4:1、Attack 15〜30ms、Release 100〜200ms。GR -4〜-6dB。
・アコギ
目的:ピッキングの強弱を抑えて、伴奏として一定の厚みを出す。
設定目安:Ratio 2:1〜3:1、Attack 5〜10ms(ピーク抑制)、Release 50〜100ms。GR -2〜-4dB。
・リードギター
目的:単音の粒立ちを揃えて、前に出す。
設定目安:Ratio 3:1、Attack 10〜15ms、Release 80〜120ms。GR -3〜-5dB。
・ドラムバス
目的:全体をひとつにまとめる「接着剤」。
設定目安:Ratio 2:1〜3:1、Attack 20〜30ms、Release 100〜200ms。GR -2〜-3dB。過度に潰さず「グルー感」を出す。
□ ボリュームバランス(歌ものの基準)
これはミックスにおいて最も基本であり、EQやコンプ、パンニングよりも大前提となる部分だ。
ここが崩れると、どれだけプラグインを重ねてもまとまらない。
もちろん曲のジャンルや性格によってバランスは変わるが、僕が好む「歌もの」の典型例を示しておく。
・ボーカル:-6 dB(基準) → 前に立つ主役
他のすべての楽器は、この声を邪魔しないように配置される。
耳の中心に「人が歌っている」感覚があり、すべてがその土台となって支えている。
・キック:-12 dB前後 → 胸に響く推進力
ベースと一体になって土台を作る。声の下に「地面がある」感覚を与える。
相対的にボーカルよりは後ろにあるが、身体で感じるリズムの中心。
・ベース:-12 dB前後 → 下から支える安定感
キックのアタックと重なり合い、低域を補強する。
声と直接ぶつからないが、下から包み込むような存在感で「安心感」を与える。
・スネア:-14 dB前後 → 曲の骨格
ボーカルの言葉の隙間を埋め、リズムの柱になる。
声のすぐ隣で「前に出るが邪魔しない」という絶妙な距離感。
・アコギ/エレキ:-16 dB前後 → 背景の彩り
ボーカルに寄り添う役割。
声と同じ帯域に重なりやすいが、少し引っ込めることで「景色」として聴こえる。
片耳の隅に広がりを作るような存在。
・装飾音(ベル系):-20 dB前後 → 遠くのキラキラ
ボーカルに直接絡まず、遠くの光のように点在する。
これがあることで曲全体に奥行きとファンタジー感が生まれる。
こうして「ボーカルを基準に、相対的にどの楽器がどの位置感で聴こえるか」をイメージすると単なるdB値じゃなくて「耳での地図」になる。
□ 一曲を通した相対オートメーション例(ボリューム版)
(絶対値+相対値の併記)
・イントロ:楽器全体 -2〜-3 dB抑えめ
・Aメロ:ボーカル -7 dB(-1)/キック -13 dB(-1)/ベース -13 dB(-1)/スネア -15 dB(-1)/アコギ -16.5 dB(-0.5)/エレキ -18 dB(-2)/ベル系 -20 dB
・Bメロ:ボーカル -6 dB(±0)、楽器+0.5 dB強め
・サビ:ボーカル -5 dB(+1)、楽器全体+1 dB、ベル系 +1 dB
・間奏:ボーカルなし、楽器+1〜2 dB
・二番Aメロ:ボーカル -7 dB(-1)、楽器+0.5 dB厚み
・二番Bメロ:ボーカル -6 dB(±0)、楽器 -0.5 dB抑え
・二番サビ:一番サビ同様、ハモリ+0.5 dB
・Dメロ:ボーカル -6.5 dB(-0.5)、楽器控えめ
・大サビ:ボーカル -4 dB(+2)、楽器全体+1.5 dB
・エンディング:ボーカル -7 dB(-1)、楽器全体 -2〜-3 dBフェードアウト
□ 一曲を通した相対オートメーション例(リバーブ版)
(ルーム/プレート/ホールを適宜使い分け、少なめ設定)
リバーブは人によって好みの深さ(絶対値)が違う。
そこで大事なのは「どの値に固定するか」ではなく、曲全体を通した相対的な変化(抑揚)をどう付けるかだ。
好みで絶対値を変えても、この相対値の変化を守れば、曲は呼吸をするように自然に仕上がる。
・イントロ:アコギ Room(±0)/ベル系 Plate(±0)/Snare Plate(±0)/ベース Room(-2)
・Aメロ:ボーカル Room(+2)・Plate(-1)/アコギ Room(±0)/エレキ Room(±0)/ベル系 Plate(±0)/Snare Plate(±0)/HH Room(±0)/ベース Room(-2)
・Bメロ:ボーカル Room(+2)・Plate(±0)/アコギ Plate(±0)/エレキ Plate(±0)/ベル系 Plate(-0.5)/Snare Plate(±0)/Toms Room(+1)/ベース Room(-2)
・サビ:ボーカル Plate(+2)・Hall(±0)/アコギ Plate(±0)/リード Plate(+2)・Hall(±0)/ベル系 Plate(±0)・Hall(±0)/Snare Plate(+1)/Kick Room(+1)/ベース Room(-1)
・間奏:リード Plate(+2)・Hall(±0)/ベル系 Hall(+0.5)/Snare Plate(+0.5)/ベース Room(-2)
・二番Aメロ:ボーカル Room(+2)・Plate(-0.5)/アコギ Room(±0)/ベル系 Plate(±0)/ベース Room(-2)
・二番Bメロ:ボーカル Room(+2)・Plate(±0)/アコギ Plate(-0.5)/エレキ Plate(±0)/ベース Room(-2)
・二番サビ:ボーカル Plate(+2)・Hall(±0)/リード Plate(+2)・Hall(±0)/ベル系 Plate(±0)/Snare Plate(+1)/ベース Room(-1)
・Dメロ:ボーカル Room(+1.5)・Plate(-0.5)/Snare Plate(-0.5)/ベース Room(-2)
・大サビ:ボーカル Plate(+3)・Hall(+2)/アコギ Plate(+1)/リード Plate(+3)・Hall(+2)/ベル系 Plate(-0.5)・Hall(±0)/Snare Plate(+1.5)/Kick Room(+1.5)/ベース Room(-1)
・エンディング:ボーカル Room(+2)・Plate(±0)/アコギ Room(±0)/ベル系 Plate(±0)/Snare Plate(±0)/Kick Room(±0)/ベース Room(-3)
□ マスタリングの基本
マスタリングは“個別トラックを整えるミックス”とは役割が違う。ミックスでは各トラック同士の住み分けや抑揚を作るけれど、マスタリングではステレオ2mix全体をひとつの音楽として仕上げていく。✍️詳しくは『iZotope Ozone 12対応|DTMマスタリング完全ガイド:EQからMaximizerまでの10の実践チェーンと補助ツールの徹底解説』でまとめているけど、ここでは実践的に役立つ主要なものを紹介しておきたい。
僕はOzoneを使っているが、どのプラグインを使っても概念は同じだ。
目的は大きく5つ。
1. 不要帯域を整理して、耳に優しくする
2. 奥行きとパンチを加え、立体感を出す
3. バランスを安定させて、聴き疲れしない音にする
4. 音圧を整え、配信やライブの基準に合わせる
5. 全体を「作品」として統一感ある音にまとめる
典型的なモジュールと役割の例(Ozoneを想定):
・EQ(Dynamic EQ含む)
不要なロー(20〜40Hz)を軽くカット。
2〜4kHzの耳に痛い帯域を整理。
高域(10kHz前後)をほんの少しブーストして空気感を足す。
・Impact(Transient Shaper的役割)
低域を少し締めて、キックやベースをタイトに。
中域は控えめにしてボーカルの耳障りを減らす。
高域はほんの少しだけアタック感を出す。
・Stabilizer(動的EQ/トーンバランス補正)
耳に刺さる帯域が出た瞬間だけ抑えてくれる。特にボーカルが強い3kHz付近やシンバルの8〜10kHzをターゲットに。
・コンプレッサー(Glue Comp的役割)
全体のダイナミクスを安定させる。
Ratio 1.5〜2:1、GR -1〜-2dB程度。
「潰す」のではなく「接着剤」としてうっすら効かせるのが肝。
・Maximizer/リミッター
最終段階で音圧を整える。
Ceilingは -1dBTP前後。
配信なら平均 -14 LUFSを目安に、ライブ用のオケなら -12〜-16 LUFSを目安に調整する。
ここでやりすぎると曲が潰れるので、-8LUFS以下にはしない。
AIアシスタントを使えば、Ozoneなどが自動でモジュールのチェーンやパラメータを提案してくれる。確かに便利だが、往々にして過剰な処理や逆に過小になることも多い。AIに聴かせるセクションで結果も変わる。
だからこそ、自分で基本を理解し、耳で確認しながら順序立てて組んでいける知識と耳が、最終的には欠かせない。
□ 最後に
DTMの基本は「順番」だ。
ボーカルを基準に土台を作り、EQで棲み分け、パンニングで空間を配置し、リバーブで呼吸を与え、コンプで安定させる。これを耳で確認しながら積み上げていけば、トラック数が増えても崩れない。
AIや高価なプラグインは便利だが、最後に決めるのは耳だ。耳で積み重ねた判断が、最終的にプロ級の音を作る。
そして、ミックスはめちゃくちゃ骨が折れる気長な作業だ。ただ、一つだけ大切なことを言うと──どんな作業もコツコツやっていれば必ず終わりがある、ということ。やらなきゃできない。勇気を出して、一歩ずつ取り組もう。
これが僕の「歌ものミックス指南書」。
ライブにも配信にも通用する、今の僕がイメージしている考え方と順番だ。正直、ここには全部は書ききれていない。本当はもっと多くの例を出して感覚を変えてあげたいけど、それはまた追ってまとめていくつもりだ。
さあ、今日も僕のライフワーク、人生の一番の遊びとも言っても過言でない大切な音楽活動を頭いっぱいに巡らせながら過ごしていきたい。僕は毎日仕事や生活、いろんなことを考察したり勉強したり一生懸命進んでいるけど、常に合間には音楽のことを考えてワクワク、時間を作って進めている。
音楽が大好きだ。音楽制作が大好きだ。歌うことが大好きだ。歌うことが好きだから、自分が歌えるように自分の音楽を作るために何でも努力を惜しまないでここまでやってきた。今でも変わらない。まだまだ。いつにたっても発展途上で、まだまだ成長の道があると思って楽しんでいる。これはおそらく死ぬまで続ける遊びだ。僕にとって音楽は家族と繋がるツール。みんなと繋がる大切な共通言語でありツールだった。そして僕の心を支え、これまでもたくさん救ってくれた大切な恩人であり相棒だ。さあ今日も楽しんでいこう。僕の大切な家族も同じ空の下でそれぞれの場所で頑張っている。さあ今日も愛してる。心は一つ。バイバイ。




