日々のことば(ブログ)

✍️小さな抜け道の正体──嘘・ごまかし・ルール違反が生まれる脳と心の構造

おはよう。今日は、これまで書いた二つの記事がアクセスも問い合わせも多く、想像以上に反響を呼んだため、このテーマを“三部作”としてさらにまとめようと思う。

最初に書いた
✍️嘘の正体──人が嘘をつく7つの心理パターンと、心の深層構造
https://music-osamu.com/?p=11784

続けて書いた
✍️なぜ僕たちは“ちょっとくらい”を繰り返すのか──嘘とルール違反の同じ構造、そしてルールの意味を思い出す日
https://music-osamu.com/?p=11788

この二つの記事は、僕が想像していたよりはるかに読まれ、
「その先にある、もっと小さな行動の心理も知りたい」
「嘘やルール違反の“手前”で起こっている心の動きを説明してほしい」
という声がいくつも届いた。

それだけ、こうした“日常の小さなほころび”は、誰にとっても共通するテーマなんだと思う。しかも、この“ほころび”をどう扱うかは、その人が最終的にどんな人生を歩むのか──つまり、満足と幸福の質を大きく左右する。人は、大きな選択で人生を誤るのではなく、こうしたごく小さな嘘や抜け道をどう扱うかで、誠実さの軸が育つか、揺らぐかが決まっていく。小さな嘘をやめられる人は、小さな誠実さを積み重ねられる。そして、それこそが大きな幸せの土台になる。

だから今日は、その三つ目として、人が日常で無意識に選んでしまう“小さな抜け道”について、構造としてきちんとまとめたい。ここで言う“小さな抜け道”とは、嘘や軽いルールスキップ、ちょっとしたごまかしのような“能動的にやってしまう小さな不正行動”の総称として扱っている。

小さな抜け道とは何か

嘘ほど露骨ではなく、ルール違反ほど大胆でもない。
でも、判断の一瞬に入り込む“意図的な近道”のことだ。
 少しだけ逃げたい
 少しだけ楽・得をしたい
 少しだけ自分を守りたい
 少しだけ面倒を避けたい
こうした心の動きが起きたとき、人は自然と抜け道に手を伸ばす。

社会的には何も起きない。他人に迷惑もかからない。誰にも咎められない。
でもそのとき、自分の内側では確かに“誠実さの感覚”が揺れている。これが、小さな抜け道の本質だ。

そしてここでは、あえて具体的な例を並べない。なぜなら、こうした抜け道は、それぞれの胸の奥に必ず“自分だけの形”で存在するからだ。自分の胸に手をあてれば、思い当たる場面がひとつは浮かんでくるはずだ。その小さな瞬間と正面から向き合う時間こそが、とても大切なんだ。

自分だけには、どうか嘘をつかないでほしい。逃げずに、ただ静かに向き合ってほしい。その姿勢が、誠実さの軸を育てていく。

人の脳は“負荷の少ない道”を選ぶようにできている

進化心理学では、人間の脳は「できるだけエネルギーを使わない」ように設計されていると言われる。つまり、人は本能的に“楽な方”へと傾く。

 気持ちが乱れた日
 寝不足の朝
 やることが多すぎる週
 勇気のいる決断が迫られた瞬間

こうした状況では、脳は一瞬で
“抜け道のほうが楽だ”
と判断してしまう。

これは性格の問題でも、意志の弱さでもなく、人間なら誰にでも備わっている生存戦略だ。

脳科学:前頭前皮質が疲れると抜け道が魅力的に見える

判断力や抑制力を担う「前頭前皮質」は、疲労にとても弱い。この部分が弱ると、衝動が理性を上回る。

 後回ししたくなる
 ごまかしたくなる
 少しサボりたくなる
 短期の快に流れやすくなる
 注意が散る

抜け道が魅力的に見える日は、脳内ではまさにこの現象が起きている。
抜け道に流れやすい日は、心のSOSでもある。

自己像を守るために、脳は“正当化”を始める

人は誰でも、
 「自分は誠実だ」
 「自分は間違っていない」
と信じていたい生き物だ。

だから抜け道を使った瞬間、脳はそのギャップを埋めるために正当化を始める。
 今日はたまたま
 誰でもやっている
 仕方ない
 これくらい問題ない
 本気を出せばできる

これは逃げでも悪意でもなく、脳が“自己像を守るために働く仕組み”だ。
だからこそ、抜け道は誰にでも起きる。

行為そのものより、“感覚の摩耗”がいちばん危険

抜け道が一度だけなら大きな問題はない。怖いのは、繰り返しによる“誠実さの摩耗”だ。

 三回で行動
 十回で癖
 百回で性格

人は、自分が繰り返したものを「これは自分にとって自然な行動だ」と認識し始める。つまり、誠実さの基準が静かに、少しずつ下がっていく。抜け道に慣れてしまうと、誠実さのセンサーが鈍り始める。ここが人生を大きく左右する。

抜け道を責めるのではなく、心の構造を見る

今日書いているのは、誰かを責めたいわけでも、完璧を求めたいわけでもない。抜け道を選んでしまうのは、心や脳が疲れているサインだからだ。

大切なのは、
 なぜそこに抜け道が生まれたのか
 どんな負荷がかかっていたのか
 どんな不安があったのか
 どんな役割が重なっていたのか

そうした“構造”をていねいに見つめること。
抜け道は“気づきの入口”でもある。気づけば整えられるし、理解すれば人生そのものが変わる。

ここまで書いてきた内容は、これまでの二つの記事とも深くつながっている。
第1章と第2章を踏まえると、今日の「抜け道」の位置づけが、より立体的に浮かび上がる。

第1章「嘘の正体」が教えてくれたこと

最初の記事、
✍️嘘の正体──人が嘘をつく7つの心理パターンと、心の深層構造
https://music-osamu.com/?p=11784
では、人が嘘をつく理由を七つのパターンに分けて整理した。防衛、欲求、調和、自己像、依存、衝動、そして慣習。どれも悪意ではなく、“生きるための心の反応”だった。そして嘘の背景には、理性の層、防衛の層、根っこの層という三つのレイヤーが同時に動いていると書いた。理性は「正直でいたい」と叫び、防衛は「壊れたくない」と叫び、根っこは「安心したい」と叫ぶ。嘘とは、この三つの葛藤のバランスとして出てくるものだった。大切なのは嘘をゼロにすることではなく、「なぜ今回、嘘が必要になったのか」を見つめること。これが第1章で掴んだ核心だった。

第2章“ちょっとくらい”が生まれる構造

続けて書いた
✍️なぜ僕たちは“ちょっとくらい”を繰り返すのか──嘘とルール違反の同じ構造、そしてルールの意味を思い出す日
https://music-osamu.com/?p=11788
では、嘘とよく似た構造で生まれる「小さなルール違反」について書いた。少し楽になりたい、面倒を避けたい、すぐに快を得たい──こうした短期的な衝動が境界線を曖昧にしていくこと。そして、ルールとは堅苦しいためではなく、“過去の痛み”や“犠牲”が積み重なってできた「安全の記憶」だということも書いた。だから、バレなければいいという発想は、実は自分の中の倫理基準を静かに削っていく。怖いのは、他人から叱られないことではなく、自分の感覚が麻痺していくこと。これが第2章のエッセンスだった。

第1章──“嘘の構造”
第2章──“小さな違反の構造”
そして今日の第3章──“抜け道の構造”
これらはバラバラの話ではなく、一本の線でつながっている。嘘も、小さな違反も、抜け道も、すべて同じ「心の働き」の別の表れなんだと思う。

結び──誠実さは遠くにある理想じゃない

嘘、小さなルールスキップ、小さな抜け道。
そのどれもが、僕たちの内側の構造を映す鏡だ。

誠実さは、特別な才能でも、完璧な人格でもない。
小さな選択の積み重ねでしか育たない。

子どもに見せる背中
家族を守る姿勢
人と向き合う態度
仕事や生活の場での判断

その全部が、この“日々の選択の質”で決まる。

完璧じゃなくていい。
ただ、抜け道のサインに気づける人間でありたい。
その気づきこそが、人生の幸福をつくっていく。
大切な人を守る・導く背中になる。

さあ今日も、それぞれがそれぞれの場所で生きている。
誠実さは、今この瞬間から積み重ねていける。

同じ空の下で。
心はいつも隣だ。

今日もありがとう。またね。


松永 修 – MUSICおさむ

松永 修/音楽名義:MUSICおさむ(シンガーソングライター)/音楽と文章の作家/国家公務員/キャリアコンサルタント

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