日々のことば(ブログ)

✍️性の多様性をすべて整理する──LGBTQ+の言葉・歴史・社会背景と、ノンバイナリー/Xジェンダーの位置づけを分かりやすく解説する

おはよう。
僕が最近かなり個人的に研究してきた分野について、今日は詳しく話してみたい。ここ数年で一気に注目を浴びている言葉のひとつ──「ノンバイナリー」だ。この記事では、この言葉を中心に据えながら、性の多様性全体を整理してみたいと思う。

たとえば、LGBTQ+という言葉は知っていても、その中身についてはよく知らない人が多い。ノンバイナリー、Xジェンダー、トランスジェンダー、インターセックス、クィア……こうした言葉は世界でも日本でも広まりつつあるけれど、実際のところ、その意味や背景、どこが違うのかといった部分はまだ曖昧なまま共有されているのが現状だ。

ノンバイナリーという言葉を聞いて、「性の話だな」と分かる人もいれば、「なんか経済用語?デジタル通貨?」と勘違いする人もいるかもしれない。おそらく多くの人にとっては、「聞いたことはあるけど、実はよく分かっていない言葉」のひとつなんだと思う。

今日は、賛成や反対、肯定や否定といった立場を取るためではなく、「今、世界と日本でどんな言葉と事実が存在していて、ノンバイナリーはその中のどこに位置づけられているのか」を、できるだけフラットに整理したい。

誰かを裁いたり、持ち上げたりするためではなく、「まず事実と背景を知る」「異なる立場の人たちの地図を共有する」。この記事が、そんな入り口になればいいなと思っている。


◾️まず、「ノンバイナリー」とは何か

一言で言うと、ノンバイナリーは「男性/女性という二択のどちらかだけには当てはまらない性自認(ジェンダー・アイデンティティ)」のこと。

もう少し具体的に言うと、こんな人たちが含まれることが多い。

  • 「自分は男でも女でもない」と感じている人(アジェンダーなど)
  • 「男と女、どちらの要素も自分の中にある」と感じている人(バイジェンダー、アンドロジナスなど)
  • 日によって、状況によって、自分のジェンダーの感じ方が揺れ動く人(ジェンダーフルイドなど)
  • 既存の言葉にしっくり来ず、「とにかく“男/女のどちらかに固定される感覚”が違う」と感じる人

英語圏では「non-binary」「genderqueer」といった言葉が使われ、日本語圏では「ノンバイナリー」と並んで「Xジェンダー」という言葉もよく使われる。

ここでポイントなのは、「戸籍上の性別」や「体の特徴」だけで人の性を決めてしまわない、という考え方だ。ノンバイナリーは「生まれたときに割り当てられた性別」ではなく、「自分が自分をどう感じているか」という“内側の感覚”に軸を置いた言葉になっている。


◾️性別を考えるときの4つの軸

話を整理するために、よく使われる4つの軸を一度、はっきりさせておきたい。

  1. セックス(Sex)
    生まれつきの身体的な特徴(染色体、ホルモン、性器など)にもとづいて、法的・医療的に「男性/女性」と分類される部分。インターセックス(どちらとも言い切れない身体のパターン)もここに含まれる。
  2. ジェンダー・アイデンティティ(性自認)
    自分の内側の感覚として、「自分は男だ」「女だ」「そのどちらでもない」「その両方だ」などと感じる、心の性。
  3. ジェンダー表現
    服装、髪型、話し方、しぐさなど、外側から見える「振る舞いのジェンダー」。たとえば「スカートを履く男性」「メイクをしない女性」もここに関わる。
  4. 性的指向(セクシュアル・オリエンテーション)
    誰に恋愛感情や性的なひかれを感じるか、という軸。異性愛、同性愛、両性愛、パンセクシュアル、アセクシュアルなど。

ノンバイナリーというのは、この4つのうち主に「②ジェンダー・アイデンティティ」を指している。
「男が男を好きになる(ゲイ)」とか「女が女を好きになる(レズビアン)」というのは、④性的指向の話。ここが混ざりやすいので、一度分けて考えておくと整理しやすい。


◾️LGBTQIA+の中で、ノンバイナリーはどこにいるのか

よく見る「LGBTQIA+」というアルファベットを、ざっくり並べるとこうなる。

  • L:Lesbian(レズビアン)
  • G:Gay(ゲイ)
  • B:Bisexual(バイセクシュアル)
  • T:Transgender(トランスジェンダー)
  • Q:Queer / Questioning(クィア/クエスチョニング)
  • I:Intersex(インターセックス)
  • A:Asexual(アセクシュアル) など
  • +:これ以外の多様なアイデンティティ全体

この中でノンバイナリーは、主に「T(トランスジェンダー)」や「Q(クィア)」の傘の下に含まれることが多い。

  • トランスジェンダー
    生まれたときに割り当てられた性別と、本人の性自認が一致していない人の総称。ここには「男性→女性」「女性→男性」だけでなく、「どちらでもない」「どちらとも言い切れない」人も含めて考える定義が広がってきている。
  • シスジェンダー
    生まれたときに割り当てられた性別と、本人の性自認が一致している人(多くの“自分は普通の男/女だと思っている人”はここに入る)。
  • ノンバイナリー
    その中でも、「男性/女性という二択そのものにしっくりこない人たち」を指す言葉として使われることが多い。

つまり、LGBTQIA+という大きな傘の中に、「トランスジェンダー」というエリアがあり、その中の一部として「ノンバイナリー」や「Xジェンダー」が位置づけられていく──そんなイメージで見ると、少し全体像が掴みやすくなると思う。


◾️世界の動き:法制度と社会の変化

世界を見渡すと、ノンバイナリーや第三の性を法的にどう扱うかは、国によってだいぶ差がある。

  • 出生証明書や身分証で「X」などの第三の選択肢を認めている国
    例として、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、ネパール、アルゼンチンの一部、いくつかのヨーロッパ諸国や、アメリカの一部州などがある。
  • パスポートで「X」マーカーが使える/使えた国
    カナダは「X」付きパスポートを発行しており、最近は「Xパスポートでアメリカに入国するときにトラブルになる可能性がある」として注意喚起を出している。

一方で、アメリカのように、政権交代のたびに「Xマーカーを認める/やめる」が揺れ動き、裁判で争われている国もある。ある時期には連邦政府がパスポートのXマーカーを停止し、その後裁判所が「本人のジェンダーに合うパスポートを認めるべきだ」と判断した、というような経緯もある。

数字で見ると、人口の中で「ノンバイナリー」と自己申告している人は、国によってだが、おおむね成人の0.1〜数%程度というデータが出ている。カナダの国勢調査では約0.14%、ブラジルの代表調査では約1.2%という報告もある。

割合だけを見ると「少数派」かもしれない。だけど、絶対数で見ると、数万人〜数百万人規模になる国もある。世界全体で見れば、「ノンバイナリーとして生きている人たちは、決して珍しい例外というわけではない」ということが分かる。


◾️日本の現状:戸籍、法律、Xジェンダー

日本の大きな特徴は、「法的な性別」が戸籍(家族関係を記録する原簿)に強く結びついていて、そこが基本的に「男」か「女」の二択になっていることだ。

  • 生まれたときに、医師などが「男/女」を診断
  • その情報が戸籍に記載される
  • 戸籍情報が、パスポートや運転免許証、婚姻制度など、いろいろな制度に連動

この「戸籍の性別」は、2004年に制定された特例法にもとづいて、一定の条件を満たしたトランスジェンダーの人に限り、男⇄女の変更が認められる仕組みがある。ただし、長く「生殖腺を除去する手術」など、非常に重い条件が課されてきた。

2023年、日本の最高裁判所は、この「手術で生殖能力を奪うことを性別変更の条件にするのは違憲だ」と判断した。これは日本の性別変更制度にとって、大きな転換点になった。

一方で、「男でも女でもない」というノンバイナリー/Xジェンダーを、戸籍上の性別として正式に認める制度は、今のところ存在しない。

  • 外国籍で、パスポートに“X”が入っている人
    その場合は、日本の在留カードでは性別欄が空欄になり、裏面に「Gender X」と記載される取り扱いがある。しかし、これは日本国籍の人に対して「X性別を認めた」という話ではなく、あくまで相手国の表記を尊重した特例的な運用に近い。

日本独自の言葉としては、「ノンバイナリー」とほぼ重なる概念として「Xジェンダー」という表現がある。90年代の関西のクィア・コミュニティの中から広まり、今では日本語で「男でも女でもない、あるいはそのどちらかに収まらない性自認」を表す言葉として、当事者や支援団体の間で使われている。

2019年の調査では、「自分はXジェンダーだ」と答えた人が数%存在するというデータもあり、日本でも一定数の人が、こうした言葉を自分の拠りどころにしていることがわかる。

ただし、学校教育や一般のメディアの中では、まだ十分な説明がされているとは言い難く、「LGBTという言葉は知っているけれど、具体的な中身はよく知らない」という人が多数派、という調査結果も出ている。


◾️ノンバイナリー当事者が直面しやすい現実

ここから少し、世界の調査や日本の報告をもとに、「ノンバイナリーとして生きている人たちに、どんな現実が起きやすいか」を、できるだけ事実ベースで整理してみる。

  • 呼び名・代名詞の問題
    英語圏では、「they/them」のようなジェンダーニュートラルな代名詞を使う人が多い。世界規模の調査では、多くのノンバイナリー当事者が複数の代名詞(they/he、they/sheなど)を使い分けているというデータもある。
    日本語には同じような「ジェンダー中立の三人称代名詞」がほぼなく、名前で呼び合う・敬称を工夫するなど、日常会話のレベルでまだ模索が続いている状態だ。
  • 公的書類・職場・学校
    「男/女」の二択しかない書類に、どちらも選びたくない/どちらを選んでも違和感がある、というストレスを感じる人は少なくない。教科書や保健体育の内容が「異性愛・男女二元」を前提に書かれているため、学校で“自分のことが全く登場しない”感覚を抱くという報告もある。
  • メンタルヘルスと安全の問題
    いくつかの国の研究では、ノンバイナリーを含む性のマイノリティが、いじめ、ハラスメント、自傷行為や自殺念慮のリスクを高く抱えやすいことが示されている。一方で、「周囲が理解し、尊重してくれる環境があると、メンタルヘルスは明らかに改善する」というデータも出ている。

ここで大事なのは、「だからノンバイナリーはかわいそうな存在だ」という話に閉じないことだと思っている。
現実として困りごとが多い立場である、という事実を直視しつつ、「じゃあ、多数派である僕たち一人ひとりが、何を知り、どう振る舞うと生きやすさが増すのか?」という問いに、静かに向き合うこと。そこが、この記事全体のテーマでもある。


◾️用語のざっくり整理(差別語は使わず、最低限だけ)

ここまで出てきた言葉を、差別的な言い方を避けながら、ざっくり整理しておく。

  • ゲイ(Gay)
    主に「男性が男性を好きになる」性的指向を指すことが多いが、「同性を好きになる人全般」を広く指す場合もある。
  • レズビアン(Lesbian)
    主に「女性が女性を好きになる」性的指向。
  • バイセクシュアル(Bisexual)
    複数の性別に対して恋愛感情や性的なひかれを感じうる人。
  • トランスジェンダー(Transgender)
    生まれたときに割り当てられた性別と、自分の性自認が一致していない人。男⇄女に移行する人もいれば、そのどちらにも当てはまらないノンバイナリーの人もここに含める考え方が主流になりつつある。
  • シスジェンダー(Cisgender)
    生まれたときの性別と、自分の性自認が一致している人。
  • インターセックス(Intersex)
    生まれつきの身体の特徴が、「典型的な男性/女性」とははっきり分類できない人。染色体、ホルモン、性器の形など、個人によってパターンはさまざま。
  • ノンバイナリー(Non-binary)/Xジェンダー
    男/女という二元の外側、あるいは間に位置づけられる性自認。日本では「Xジェンダー」というラベルを使う人も多い。

世の中には、これ以外にも、たくさんのラベルやスラング、内輪で使う呼び名がある。そこには、歴史的に差別的に使われてきた言葉も混ざっているし、当事者自身が「自分たちであえて再定義し、取り戻した言葉」もある。

この記事ではあえて、それらの因語やスラングには踏み込まない。理由はシンプルで、「文脈から切り離された単語だけが一人歩きする」と、それがまた新しい傷や誤解を生みやすいからだ。ここでは、「最低限の地図」を共有することに集中したい。


◾️「ノンバイナリー=流行り」でも「特別な存在」でもない

SNSやメディアでノンバイナリーが語られるとき、二つの極端なイメージに引っ張られやすい気がする。

ひとつは、「最近の若者が作った流行りのラベル」「ファッションで性別をいじっているだけ」といった、軽く扱う視点。
もうひとつは、「特別な少数者として、ガラスケースの中に祀り上げる」ような視点。

どちらも、当事者の現実からは少しズレている。

  • 歴史的には、男女二元を超える存在は、世界各地の文化・歴史の中に、別の名前で存在してきた(南アジアのヒジュラ、北米先住民のTwo-Spiritなど)。
  • 日本でも、Xジェンダーという言葉が登場したのは90年代で、決して「ここ数年だけの現象」ではない。

今ようやく、可視化される頻度が増えてきた、というのが実態に近い。

同時に、「ノンバイナリーだから特別な人間」というわけでもない。
会社に行けば、締め切りに追われるし、家に帰ればご飯を作って、洗濯をして、推しの配信を見て、疲れて寝落ちする。

ラベルは違っても、「生活をどうやりくりして生き延びるか」「どうやって自分と大切な人たちを守るか」という土台の部分は、どの人もそんなに変わらない。そこを忘れないことが、多様性を考えるときの土台になると僕は感じている。


◾️僕たち一人ひとりの「距離の取り方」

最後に、僕自身が親として、人として、仕事をしながらこのテーマを見ていて感じるのは、「正しい用語を全部覚えること」よりも、「分からないからこそ、決めつけずに聞けるかどうか」の方が、よほど大事だということだ。

  • 「あなたは男?女?どっち?」と決めつけて尋ねるのではなく、相手が望む呼び方や、表現の仕方を尊重する。
  • 「そんなのわがままだ」と切り捨てる前に、「自分は偶然、制度の“想定内”に収まっている多数派なんだ」という事実を一度思い出してみる。
  • もし自分や自分の子どもが、ノンバイナリーや他のマイノリティとして生きることになったとしたら、「そのときの自分に、今の自分の言葉を聞かせられるか?」と、少しだけ自問してみる。

この記事は、誰かの生き方を肯定するためでも、否定するためでもない。
ただ、「今この世界で、こういう言葉と事実が存在している」という地図を、一度テーブルに広げてみるための試みだ。

そのうえで、どう考えるか。どんな価値観を持つか。
そこは、読み手一人ひとりの人生経験と感性に委ねたいと思う。


◾️おわりに──同じ時代を生きる者として

さて、今日も、僕たちはそれぞれの場所で生きている。

世界のどこかでは、ノンバイナリーとしてパスポートの“X”を巡って裁判をしている人がいて、どこかでは、教室でひっそりと自分の性について悩んでいる10代がいる。

僕たちは、そういう時代に生きている。

その時代の空気をちゃんと感じながら、
「自分は今、どんな世界の上に立っているのか」
「どんな時流の中に身を置いているのか」

それを少しだけ意識して生きることで、同じニュースを見ても、同じ言葉を聞いても、見える景色が変わってくると思う。

自分の限りある命の時間を、この時代に重ねて生きているということ。
その時間の中で、自分の子どもたちや、まだ見ぬ孫たちに、少しでも豊かな判断材料や、柔らかい視点、しなやかな知恵を手渡せたらいいなと僕は思う。

それはきっと「正解を押し付けること」じゃなくて、「いろんな生き方がある世界で、自分の答えを選び取る力を渡すこと」なんだろう。

僕自身も、まだまだ分からないことだらけだ。
だからこそ、学び続けたいし、考え続けたい。

今日もね、そんな感じで一生懸命生きていこう。
同じ空の下で、一人ひとりが自分の物語を生きている。

同じ空の下で愛してる。
僕は家族が生き甲斐だ。

では、ありがとう。
今日も。


後書き より学びを深めるために

以下は、この記事内容(性の多様性・LGBTQ+・ジェンダー理解・社会背景の整理)に関連し、
皆様の学びを深める目的で紹介できる代表的な書籍です。
“収益目的” ではなく「読者がさらに理解を深めるための参考資料」という形で自然に配置しておきます。


■『マンガでわかるLGBTQ+  』

いまさら聞けない「LGBTQ+」の基本から、最新の情報、お互いにできることまで、19の体験談を含む22のマンガを読みながら楽しく学べる作品です。各章には解説やよくある質問FAQもついているので、なんとなく興味がある人にも、詳しく知りたい人にもぴったり! 各章にワークもついていて、手を動かしながら理解を深められます

下記のような方々にオススメです。
・「LGBTQ+」について知りたい人、もっと学びたい人
・性に関する悩みがある人、モヤモヤしている人
・生徒の教室での居心地をよりよくしたい学校関係者
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■『図解でわかる 14歳からのLGBTQ+  』

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読んだり、眺めたりするうちに、LGBTQ+がとても身近なテーマに!

■『LGBTを読みとく ─クィア・スタディーズ入門 (ちくま新書) 』

くくることができない性のかたちがあることも見逃されている。「LGBT」を手掛かりとして、多様な性のありかたを知る方法を学ぶための一冊。

■『ノンバイナリーがわかる本 ――heでもsheでもない、theyたちのこと 単行本

男女二元論にとらわれないジェンダー・アイデンティティ「ノンバイナリー」についての、日本で刊行される初めてのガイドブック。ノンバイナリーである著者自身の経験や当事者へのインタビュー、統計調査などを基に、基礎知識、関連用語から歴史、人間関係、恋愛、法的問題、医療まで、幅広いトピックをわかりやすく解説。


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松永 修 – MUSICおさむ

松永 修/音楽名義:MUSICおさむ(シンガーソングライター)/音楽と文章の作家/国家公務員/キャリアコンサルタント

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