おはよう。
今日もいい天気。日曜日の朝。
今日も、いつもの日曜が始まる。
さて。
昨夜は、録画していた金曜ロードショーを観た。
『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』──シリーズ6作目。
テレビでやっていた民放の放映版だ。
せっかくだから、部屋の電気をすべて消して、音も少し大きめにしてみた。映画館さながらの雰囲気で、リビングのソファに腰を下ろして。――実はこれ、僕が小さい頃、父がよくやっていた映画の見方そのまま。部屋を真っ暗にして、静かに座って、ただ画面に集中する時間。そんな父の姿がどこか記憶に残っていて、昨夜はあえて自分もその形で観てみた。父親譲りの映画の楽しみ方。どこか懐かしくて、心地よかった。
トム・クルーズの全力アクションに惹かれて、軽い気持ちで再生ボタンを押したけれど、正直、初見では全然意味がわからなかった。
登場人物は次から次へと出てきて、誰が敵で、誰が味方で、誰が何を裏切って、何を守ろうとしているのか。変装も多いし、展開も速すぎて、途中からはもう「誰が誰なんだっけ?」状態だった。
映像はすごい。アクションはド迫力。でもその一方で、物語の中身はどんどん置いていかれていく。「あれ?今のって、さっきのやつ?いや違う?」って思ってるうちに、次のシーンが始まってしまう。
そんなとき、ふと――小さい頃、父と一緒に観ていた映画の記憶が蘇った。
あの頃の僕は、もっと何もわかっていなかった。登場人物の関係も、物語の展開も、英語の響きも、ぜんぶが不思議だった。でも、横で父がぽつりぽつりと「たぶんこういうことなんじゃないか」と教えてくれていた。何度も何度も観た映画ならともかく、父にとっても初めて観る作品はきっと難しかったはずだ。
それでも僕はわからなかった。「この人誰?」「なんで今こうなったの?」って何度も父に聞いていた気がする。父は途中で黙ってしまうこともあったし、あまりに聞きすぎると、「いいから黙って観ろ」って言われたこともある。
今なら、その気持ちが、すごくよくわかる。
大人になった僕も、全然追いきれなかったんだ。名前が頭に入ってこない。状況もすぐに忘れてしまう。よほどリアルタイムで全部を把握してないと説明なんて無理だ。父も、きっと心の中で同じことを思ってたんだろうな、って、今なら思う。そのことを思い出したら、なんだかじんわりあたたかくなった。
そして今は、自分がその「大人側」になった。子どもたちに、「これどういう意味?」って聞かれるようになった。
そのひとつひとつに、うまく答えられるときも、俺もわかんない!って笑う時もある。
今、僕に「これどういう意味?」と聞いてくる子どもたちの気持ちが、よくわかる。
あの頃の僕と同じように、彼らも戸惑いながら観ているんだと思う。
そして大人になった今の僕には、あの頃の父の気持ちも、親としてちゃんと響いている。
そんなふうに、父の横で「わからなさ」を抱えていた僕も、
今では、その「わからなさ」にすぐ答えをくれる時代に生きている。
インターネットがある。解説動画がある。ネタバレサイトも山ほどある。さらに言えば、今はAIにリアルタイムで尋ねることだってできる。
それだけじゃない。
今はAIだってある。
インターネットや解説サイトよりももっとすごいのは、僕が「わからない」と思ったその場で、AIに聞くことができることだ。
すると「こういうことだよ」って、まるで横に座っているみたいに解説してくれる。
しかも、僕の理解レベルに合わせて、必要な背景や意味づけまで添えてくれる。
……でも、その進化の一方で、少し思い出してみる。
昔は、意味を理解するために、VHSのビデオテープがすり減るほど、何度も映画を見返した。
一度じゃわからないからこそ、何度も観る。繰り返し観るうちに、少しずつ見えてくる。
あの「わからなさ」を抱えて時間をかけて理解していく感覚は、確かに面倒で、不便で、でもだからこそ、味わい深く、記憶に残るものだった。
今は、一回で全部わかってしまう時代。それはすごく便利だし、深く楽しめるという意味ではすばらしい。でもどこか、ちょっとだけ寂しくもある。
時代が変わった。
でも、変わらないものもある。映画を観て、思い出す記憶。小さかった頃の僕。黙って隣に座っていた父。説明してもらっても、よくわからなかったあの感覚。
そして今は、自分がその役割を受け継いでいる。「わからない」を抱えた子どもたちに、僕はこれからも語りかけていくんだと思う。
子どもの頃の僕と、今の僕。あのときの父と、今の僕。時代とともに交差する感覚。
今日は映画を観ながら、そんなことを思った。
あたたかい記憶だった。
あたたかい時代の違いだった。
テクノロジーも、記憶も、どちらも大切にして生きていきたいと思った。
遠くにいる家族、近くにいる家族。
みんなの顔が浮かぶ。名前を思い出す。その手のぬくもりを、心のなかで握りしめて──
今日も生きていく。
愛してる。
今日もありがとう。
バイバイ。
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