今朝の広島は春の雨が降っている。しとしと静かな音が心地よいね。
今日は、僕の10代の頃に影響を受けた、青春ど真ん中のバンドたちの話をしたい。Hi-STANDARD、THE BLUE HEARTS、GOING STEADYだ。彼らの音楽は、僕にとってただ好きだったっていうレベルじゃない。当時、生き方とか、価値観とか、音楽の感じ方とか、もう全部を塗り替えてくれた存在だった。とにかくストレートで、太くて、優しくて、爆発した音楽だった。僕の生活の隙間で、ずっと聴いていた。
当時は何も考えずに、ただ「かっこいい!」って思って夢中で聴いてた。それで音楽を始めるきっかけになったし、高校生のとき、初めてアルバイトしてハイスタの横山さんと同じメーカーのエレキギターを買った。そのうち自分でも楽曲を作るようになって、改めて彼らの音に耳を澄ませると、驚くほどの「工夫」が見えてくる。
ギター、ベース、ドラム。この3つで成立しているように見えるサウンドの中に、実はしっかりと“隠し味”が潜んでいた。たとえば、ブルーハーツのとある曲のイントロで鳴っているオルガン。GOING STEADYでこっそり入ってる鉄琴や鍵盤ハーモニカ。Hi-STANDARDがカバーで、ピアノをあえて、エフェクターをかませずアンプ直結の生音ギターに置き換えて表現したあの潔さ。これらは全部、ただの装飾じゃない。その曲の“空気”を決定づけていた。
そんな彼らの音を改めて振り返って、深く分析したことで、自分の中にもある“音への向き合い方”が大きく変わっていた。そしてその熱量のまま、僕自身の人生に宿ってきた。でもね、僕も歳をとるたびに、激しすぎるサウンドはあまり自分では選ばなくなって、優しいアコースティックな、ポップな、フォークな弾き語りが好きになってきた。それでも、たまに疾走感のある、そして激しく熱いロックも作りたくなる。それが、今制作中の楽曲「ロケットコード」だ。この楽曲には、彼らのスピリットを取り入れている。テンポ191のアニソン風ロックバラード。疾走感と切なさの両立。その中で、どうやってプラスαの音を重ねていくか。これはかなりの試行錯誤が必要だった。
エレキギターには、あまりエフェクターをかませず、変に音を作らない。ゲインを強めにして、アンプ直結で。イコライザーはアンプで中音域を中心に上げて、厚みと軽快感を出すイメージ。あの青春のディストーションをメインにしたい。コーラスやリバーブ、モジュレーションは最小限にして、直球勝負だ。
弾き語りバージョンでは、一番印象的なフレーズのタイミングでブルースハープを入れて、ブルーハーツの「TRAIN-TRAIN」のオマージュとして、あの懐かしさとエネルギーを再現できる気がした。ブルースハープって、世界観を全部見せる瞬間だから、あの音色にはある意味、命が宿ってる。バンドバージョンの音源では、ブルースハープの代わりに、静かに始めてピアノの単音やアコギのアルペジオで空気を張り詰めさせるのもアリだったが、最終的には、泥臭くて素直なボーカルの語りをシンプルに入れようと思ってる。
鍵盤は、楽曲全体で歌を引き立てるために、あえて主張しない音を選びたい。B3オルガンみたいな音をうすーく裏で鳴らしてみたり、シェイカーをハイハットの隙間に滑り込ませたり。アコギのカッティングを入れてみたら、エレキにはない“息遣い”が加わって、一気にグルーヴが生まれた。これって、ただトラック数を増やして厚くするんじゃなくて、「空気を作る」ってことなんだと気づいた。
他には、ピアノのスタッカートを合図にして空気が変わるような演出を狙うとか。一瞬のピアノコードが、サビへの扉をガチャっと開けてくれる感じとか。ストリングスをほんのり敷いてみたけど、やりすぎると一気に“作られた感”が出るから、ここはリバーブやEQで調整しまくるイメージかな、とか。タンバリンを2拍4拍で入れると、それだけでビートが前に進む。いろんな音色を丁寧に試して、ようやく馴染む音が見つかった時の気持ち、ほんとにたまらない。
サビでは、あえて豪華にしすぎないことを意識しながら、でも熱量は全開にした。アコギをエレキとユニゾンで重ねて、コードの一発一発に倍音のキラキラを足す。オルガンは「いるかいないか分からないレベル」でコードを支える。ボーカルの隙間には、ピアノやハーモニカで短い返しフレーズを試してみた。そういう“ちょっとしたひと押し”が、曲全体の深みになると試行錯誤中だ。タンバリンはBメロから仕込んで、サビでは音量を少しだけ上げて“景色が開ける”ようにミックス。
そして、次に試したいのは間奏。自分としても最も自由に遊べる場所で、ギターソロの裏でピアノが3度上でユニゾンするだけで、一気に音に厚みが出る。思い切ってハーモニカでソロを吹いてみたら、ちょっと泥臭くなる。でもそれが逆に良くて、自由な心の叫びのようなボーカルも入れてみようかなとか。一度バンドを止めて、アコギだけで2小節空気を変えてから、全楽器で“せーの!”って再び爆発する構成も試してみたい。アニソン系でもよくあるけど、こういう展開が映える。構成そのものに熱量が乗る感じがあった。
こうして見ていくと、ハーモニカ、アコギ、ピアノ、オルガン、タンバリン…どれも3バンドが使っていた“あの音”ばかり。僕も、近年ずっと愛用している音だ。ブルースハープは僕のおはこだ。派手じゃないけど、絶対に効いてる。僕の曲にも、ちゃんと魂を宿してくれた。音楽プラグインを増やすより、自分の耳と手を信じて、少しずつ本物の楽器で生音を試していくことで、いつの間にか“自分の音”になっていった。
この作業をしながら思ったのは、音を加えることって、単なるアレンジじゃなくて、自分の感情を記憶と結びつけていくことなんだなってこと。青春のバンドたちが鳴らしていたあの音。それに触れて、僕はまた少しだけ前に進めた気がした。生楽器の音や、DAWの画面の向こう側に、ちゃんとあの頃の自分がいて、今の僕と手を繋いでくれてる気がした。
今日も音楽と一緒に、自分の中を探りながら進んでいく。
楽しいな。本当に。音楽は最高。
同じ空でつながる愛する家族よ。今日も愛してる。今日も、ありがとう。バイバイ。