日々のことば(ブログ)
✍️闇AIとは?ChatGPTが禁止しているのに、犯罪者はどのAIを使っているのか

✍️闇AIとは?ChatGPTが禁止しているのに、犯罪者はどのAIを使っているのか

おはよう。闇AIとは、犯罪や不正に使うことを売りにしたAIサービスなどを指す呼び方だ。ただ、「闇AI」という一つの製品があるわけではない。その名前で売られていても、中で動いているAIまで独自に作られたものとは限らない。

最近、ふと気になったんだよね。僕はAIを使うようになってもう長いし、仕組みや使い方もいろいろ調べてきた。便利なのはよく分かっているけれど、何でも答えてくれるわけではない。危険なことを頼めば断られるし、利用規約もある。

でも、本当に悪いことに使おうとしている人たちは、どうしているんだろう。

犯罪集団や、他人のシステムに侵入しようとする人たちも、AIを使えたら便利なはずだ。安全装置を外しているのか。特別な契約でもあるのか。それとも、僕たちが知らないところに、何でも答えるAIがあるのか。

犯罪だけじゃない。性的な画像やフェイク動画、他人をだます文章、本人に知られない監視。普通のAIなら断ることを、別の場所では簡単にできてしまうのだろうか。昔の闇サイトみたいな世界を想像すると、気になることが次々に出てくる。

そこで、ChatGPTを提供するOpenAI、Claude・Claude Codeを提供するAnthropic、Geminiを提供するGoogleの利用方針から調べてみた。各社が公表している悪用の事例や、研究論文、FBIの注意喚起にも目を通した。

すると、ちょっと意外だった。「表のAI」と「闇のAI」がきれいに分かれているわけではない。僕たちが普段使っているAIも、その中に登場していたんだ。

※この記事は、2026年9月10日時点の情報をもとにしている。規約や利用できる機能は、製品や契約によって違い、今後変わることもある。参考にした資料は、最後にまとめている。


◾️犯罪者も、普通のAIに雑務を頼んでいた

犯罪に使うAIと聞くと、ものすごい侵入方法を考えたり、危険なプログラムを作ったりする姿を想像する。でも、報告を読んでみると、そればかりではなかった。

OpenAIは2026年7月31日、カンボジアを拠点としていた可能性が高い詐欺ネットワークについて、関連するChatGPTアカウントを停止したと公表している。投資詐欺、恋愛詐欺、警察官へのなりすましなどに関係する事例だ。7月31日は発表した日で、アカウントの停止は、それより前に行われていたという。

そこでChatGPTに頼んでいたのは、相手に送るメッセージや翻訳だけではない。内部のお知らせ、スタッフ同士の翻訳、採用や労働条件に関する事務作業まで含まれていた。

そこもAIを使うんだ、と思った。

「この文章を整えて」「これを翻訳して」「スタッフ向けの説明を作って」。仕事の中身は違っても、AIに頼んでいる作業には、僕たちにも見覚えがある。

考えてみれば、AIがすごい犯罪のアイデアを出さなくても、面倒な仕事を減らしてくれるだけで、使う側には十分な利点がある。文章を一から書かなくていい。外国語が得意でなくても、やり取りを助けてもらえる。事務作業にかかる時間も減らせる。

僕たちが「助かるな」と感じている便利さは、悪い目的で使う人にとっても便利なんだね。

だから、「犯罪者はどうやってAIに危険なことを答えさせているのか」だけを考えていると、見落とす部分がある。危険な質問をしなくても、犯罪活動の周りにある仕事を手伝わせる使い方があるからだ。

もちろん、翻訳や文章整理という普通の機能なら、犯罪のために使っても問題ないという意味ではない。各社の規約では、犯罪や詐欺を支える用途そのものが制限されている。

ここを読んで、最初に想像していた「秘密の強力なAI」の話から、少し見え方が変わった。犯罪者も、まずは面倒な仕事を片づけてくれる助手を欲しがっていたわけだ。


◾️WormGPTやFraudGPT。その名前だけでは中身は分からない

では、犯罪への利用を売りにしたAIサービスは、本当にあるのか。

そうしたサービスの存在は報告されている。2023年には「WormGPT」や「FraudGPT」といった名前が登場し、犯罪に使えることをうたって宣伝されていた。セキュリティ企業のNetenrichも、地下フォーラムなどに出ていたFraudGPTの宣伝を報告している。

ただ、ここで気をつけたいのは、「売っている人ができると言っていること」と「実際にできると確認されたこと」は違う、という点だ。

強そうな名前がついていると、それだけですごいAIに見えてしまう。でも、「GPT」という文字が入っていても、OpenAIの公式製品だと判断することはできない。何を使って動いているのか、宣伝どおりの能力があるのかは、別に確かめる必要がある。

その違いがよく分かるのが、「Xanthorox」というサービスだった。

Googleの脅威分析チームが2026年2月12日に公表した報告によると、このサービスは、独自に開発して自分たちの環境で動かすAIであるかのように宣伝されていた。ところが、調べてみると、Geminiを含む第三者のAI製品が使われていたという。Googleは、特定した関連アカウントなどを無効化している。

つまり、外側の名前や画面は違っても、中ではほかの会社のAIが動いていることがある。

「独自の闇AI」と聞いて想像していたものとは、少し違うよね。特別なサービスを作っていても、AIの頭脳まで一から作っているとは限らないんだ。

Googleの同じ報告には、APIキーの窃取や不正転売も出てくる。APIキーは、外部のプログラムからAIなどのサービスを使うときに必要な認証情報だ。何を答えさせるかだけでなく、誰の利用権限を使い、誰に費用を負担させているのかという問題もある。

また、USENIX Security 2024で発表された「Malla」という研究では、悪意あるLLM利用サービス212件を調査している。LLMは、ChatGPTのように文章を扱うAIの土台となるものだ。この研究でも、安全上の制限を弱めたモデルを使うケースと、公開されているAIのAPIを悪用するケースの両方が確認されていた。

なお、212件というのは、その研究が当時調べた件数だ。今、世界にある闇AIの総数ではない。

名前だけを見ると、何種類もの特別なAIがあるように感じる。でも実際には、使っているモデル、提供しているサービス、運営している人を分けて見ないと、何が起きているのか分からない。


◾️安全装置をすり抜ける方法と、自分でAIを動かす方法

もちろん、普通のAIの安全対策をすり抜けようとする試みもある。「脱獄」、英語で「jailbreak」と呼ばれるものだ。本来なら断るはずの内容を、何とか答えさせようとする。

ただ、これを「秘密の言葉を入力すると、正規の裏モードが開く」と考えると、少し違う。ある聞き方で一度回答が出たとしても、それですべての制限がなくなったわけではない。

そして、こうしたすり抜けとは別に、公開されているAIモデルを、自分のパソコンやサーバーで動かす方法もある。

ここで出てくるのが「オープンウェイトモデル」だ。少し難しい名前だけど、AIの動き方を決める学習済みの数値データが公開され、自分の環境で動かしたり、条件に従って調整したりできるモデルのこと。OpenAI自身も、この形式のモデルを公開している。

まず、これはそれ自体が怪しい技術ではない。研究や開発、仕事など、普通の目的でも使われている。自分のパソコンでAIを動かしている人を、闇AIの利用者のように考えるのは違う。

ただ、企業のサーバーを通さずに動かしている場合、その企業がChatGPTなどのアカウントを止めるのと同じ方法では止められない。OpenAIも、公開後に第三者が改変したモデルに対して、安全対策を追加したり、利用を取り消したりすることには限界があると説明している。

だからといって、何をしてもいいわけではない。公開モデルにもライセンスや利用条件があるし、自分のパソコンの中なら法律を無視していい、という話にもならない。

それから、もう一つ間違えやすいところがある。「パソコンに入れて使うアプリ」と「パソコンの中だけで動くAI」は、同じではない。

例えば、Claude Codeを手元のパソコンで使う場合も、AIモデルとのやり取りのために、プロンプトなどをネットワーク経由で送ると公式文書に書かれている。画面が自分のパソコンにあるからといって、処理まで全部その中で終わっているとは限らないんだね。

外部に情報を送るのか、どこに記録が残るのかも、実際の仕組みを見なければ分からない。

闇AIの話には、こうした普通の技術も登場する。「どこかの闇サイトにしかない秘密の道具」と考えるだけでは、説明しきれない世界だった。


◾️AIが答えたからといって、許可されたわけではない

ここまで調べて、僕自身も少し整理が必要だなと思った。

法律や規約で「やっていいこと」と、AIが「答えてくれること」は同じではない。さらに、AIが実際に何をできるかは、使える機能や与えられた権限によって変わる。

例えば、AIがたまたま回答してくれたとしても、その使い方が規約で認められた証拠にはならない。反対に、断られたからといって、その話題そのものが違法だと判断されたわけでもない。

AIの返答を、許可証や判決のように受け取らない方がいいんだね。OpenAIの利用方針でも、サービスのルールが、法律や専門職としての義務などに置き換わるものではないと説明している。

一方で、安全設定を変えることが、何でも不正な操作になるわけでもない。

GoogleはGemini APIについて、一部の安全フィルターを用途に応じて調整できると案内している。APIは、ほかのアプリやプログラムからAIを使うための窓口のようなものだ。ただし、子どもの安全を脅かす内容など、変更できない基本的な保護もあり、設定を変えても利用規約を守る必要はある。

公式に用意された設定を調整することと、安全対策を不正にすり抜けることは違う。そして、調整できる設定があるからといって、禁止されている使い方まで解禁されるわけではない。

「APIなら何でもできるのか」「高いプランなら制限がなくなるのか」と考えたくなるけれど、機能が増えることと、何をしてよいかは分けて見る必要がある。


◾️ChatGPT・Claude・Geminiは、何を禁止しているのか

各社の規約を読むと、細かな違いはあるものの、共通する部分も多かった。

犯罪や詐欺を手伝わせること、他人の権利やプライバシーを侵害すること、子どもの性的搾取、暴力や自傷をあおることなどが制限されている。悪意のあるサイバー攻撃や、安全対策を不正にすり抜ける使い方も対象だ。

そして、禁止事項は犯罪や性的な内容だけではなかった。

OpenAIの利用方針には、学業上の不正や、政治キャンペーン・ロビー活動などへの利用、人間が確認しないまま重要な分野の判断を自動で行わせることなどにも制限がある。政治について調べたり話したりすることと、政治キャンペーンのために使うことは、同じ扱いではない。

Anthropicは、偽レビューや盗用、認められていないAI利用や必要な明示をしないまま成果物を提出することなども挙げている。また、雇用、医療、法律、金融といった、人の暮らしに大きな影響が出る分野では、専門家の確認や、AIを使っていることの説明など、必要な条件がある。

Googleにも、詐欺やなりすましだけでなく、民主的な手続きについて人をだます利用、専門性について誤解させる利用などの制限がある。相手をだます目的で、AIの生成物を人間だけが作ったものと偽ることも対象だ。一方、教育、記録、科学、芸術などの内容では、公益を考えて例外を設ける場合がある。

ただし、「研究です」「芸術です」と言い添えれば、何でも認められるという話ではない。

同じセキュリティの話でも、自分が管理するシステムを守るために調べるのと、他人のシステムへ無断で入り込もうとするのでは違う。同じ文章作りでも、普通の案内文と、誰かになりすましてお金をだまし取る文章では違う。

禁止される単語を覚えるより、「誰に対して、何のために使うのか」「その権限はあるのか」「誰かに被害が出ないか」と考えた方が、規約の意味も分かりやすかった。


◾️性的な話や、日常のごまかしまで、全部同じなのか

最初、僕も「卑猥なことはNG」という、少し大ざっぱな捉え方をしていた。でも、性の話なら全部同じ扱い、というわけではない。

例えば、体の仕組みや性について医学的に説明することと、性的な興奮を目的とした露骨な内容を作ることは違う。OpenAIの公開Model Specの2025年12月18日版にも、この違いを踏まえた説明がある。Model Specは、モデルにどのように振る舞わせたいかを示す方針で、個々の製品が必ずそのとおりに答えるという保証ではない。

また、OpenAIの共通利用方針に「成人の性的表現をすべて一律に禁止」と書かれていないことだけを見て、「それならChatGPTで自由に作れるんだ」と受け取るのも違う。共通の規約とは別に、製品ごとの生成内容の制限があるからだ。

Anthropicは、性的行為、性的なファンタジー、エロティックチャットなどを明示的に禁止している。Googleも、ポルノや性的満足を目的とした露骨な内容を禁止している。こうした書き方には、各社で違いがあった。

ただ、成人の性的な話題と、実在する人を本人の同意なく性的な画像にすること、子どもを性的に扱うことは、一緒にしてはいけない。非同意の性的コンテンツや子どもの性的搾取は、各社が明確に禁止している。

フェイク動画についても、作り物だから全部悪い、という話ではないよね。架空の世界を映像にすることと、実在する人になりすまして相手をだますことでは、目的も被害も違う。

FBIは2024年12月3日の注意喚起で、AIによる偽の人物画像、身近な人を装う音声、権威ある人物を装う動画、性的画像を使った恐喝などを挙げている。本物らしい映像や声を作れるだけでなく、それを信じた人からお金や情報を奪うために使われることが問題になる。

では、日常のちょっとしたごまかしはどうだろう。

角が立たない断り方を考えることと、買ってもいない商品の体験談を、本当の購入者の口コミとして投稿することは違う。相手を傷つけないように言葉を選ぶのと、事実を誤解させて利益を得るのも、同じではない。

マナーとしてどうなのか。倫理的にどうなのか。規約に反するのか。法律に触れるのか。重なる部分はあっても、全部が一つの基準で決まるわけではないんだね。

AIが断ったからといって、その人の人格まで否定されたわけではない。答えてくれたからといって、その行為を正しいと認めてくれたわけでもない。このくらいの距離感で受け止めておきたい。


◾️特別な契約はある。でも、犯罪を許可する契約ではない

では、最初に気になっていた「特別な契約を持つ人なら、普通は使えない能力を使えるのか」という疑問はどうだろう。

調べてみると、そうしたアクセスの仕組み自体はあった。

OpenAIは「Daybreak」で、確認や審査を受けた防御担当者に、より高度なサイバー防御の能力を提供する仕組みを説明している。利用には、通常より詳しい確認や、使える範囲の設定、監督などが伴う。申請時にも、本人確認や専門的な利用目的に関する情報を求めている。

Anthropicの利用方針にも、一部の政府機関との契約では、公的な任務、法的な権限、安全対策を踏まえ、利用制限を調整する場合があると書かれている。

だから、「特別なアクセスなんて一切ない」と言うのも正確ではない。でも、これは犯罪を許可するためのものではない。

そのシステムを調べてよい権限があるのか。何の目的で使うのか。どのように管理するのか。そうした条件を確認したうえで、使える能力の範囲が変わるという話だ。

普通の利用者には断る内容を、専門家には扱わせることがあるとしても、「専門家なら何をしてもいい」という意味ではないんだね。

追加料金を払えば、犯罪まで何でも手伝ってくれる。そんな「解除ライセンス」とは、全く違うものだった。


◾️何回断られたらBANされるのか

ここは、普通にAIを使っていても気になるところだと思う。

まず、AIに回答を断られること、アカウントに警告が来ること、一部の機能が使えなくなること、アカウントを停止されることは、それぞれ別の出来事だ。必ずこの順番で進むわけでもない。

OpenAIは、警告はすぐにアカウントを停止するという意味ではなく、利用を見直すための通知だと説明している。一方で、対応を決める際には、違反の重大さや、過去の違反、繰り返しの状況などを考慮するとしている。

今回確認した公式案内には、「回答を3回断られたら停止」といった、一律の回数は書かれていなかった。断られた回数を数えて、「あと何回なら大丈夫」と考えられるものではなさそうだ。

Googleも、違反が確認されたときの通知や、違反を繰り返した場合のサービス・アカウントへの制限、異議申立てについて案内している。

実際、アカウント停止は行われている。Anthropicは、2026年1〜6月に1,140万アカウントを停止したと公表している。同じ報告期間について、異議申立てによって4万2,000件の判断が覆ったことも示している。

かなり大きな数字だけど、ここは読み違えないようにしたい。

1,140万アカウントは、1,140万人という意味ではない。犯罪者の人数でもない。停止理由には、犯罪に関わる使い方だけでなく、利用条件や提供地域に関する違反なども含まれている。また、判断が覆った件数だけから、全体の誤判定率が分かるわけでもない。

この報告から分かるのは、規約違反への対応が実際に行われていることと、異議申立てによって判断を見直す仕組みもある、ということだ。

普段使っている人が、必要以上に怖がることはないと思う。ただ、正式な警告が来たなら、何を理由に通知されたのかは確認したい。間違いだと思う場合には、案内された手続きで申し立てる方法がある。OpenAIも、その方法を説明している。

返答を一つ断られただけで「もうアカウントが危ない」と思い込む必要はないし、警告が来ても「まだ使えるから問題ない」と流すのも違う。何が起きたのかを、落ち着いて見たいところだね。


◾️何でも答えるAIは、普通のAIより賢いのか

「制限なし」「何でも答える」と聞くと、すごいAIのように感じる。でも、断らないことと、答えが正しいことは違う。

間違ったことでも、自信たっぷりに答えてくるなら困るよね。質問の意味を理解できるのか。長い文章を読めるのか。必要な情報を確かめられるのか。文章を作るだけなのか、実際に道具を使って作業できるのか。何をさせたいかによっても、役に立つかどうかは変わる。

一方で、「闇のサービスだから性能が低い」と決めつけることもできない。先ほどのXanthoroxのように、中では正規のAI製品が使われている事例もあるからだ。

無検閲だから高性能、とも限らないし、怪しい名前だから低性能、とも限らない。結局、何を使って動いているかを見る必要がある。

それに、サービスを使うなら、回答の質だけでは足りない。運営しているのは誰なのか。入力した情報はどう扱われるのか。説明されているモデルは本当なのか。困ったときに対応してもらえるのか。

「制限がない」という宣伝は、「安心して使える」という保証にはならないんだね。

もう一つ、悪用の報告を読むときにも注意したいことがある。AIが危険な内容を出力したことと、それを使って現実の犯罪に成功したことは、同じではない。

OpenAIが2025年10月に公表したマルウェア関連の悪用事例では、AIとのやり取りの外で実際に何が行われたかを、独立に検証できないと書いている。また、その事例では、公開情報からは得られない新しい能力をAIが与えた証拠は見つからなかったとしている。これは、その時点の、その事例についての評価だ。

「こんな回答が出た」「攻撃に使おうとした」「本当に被害が確認された」。似ているようで、言っていることは違う。

ここを飛ばして「AIがすごい犯罪を成功させた」と広めてしまうと、悪用する側の宣伝を手伝うことにもなりかねない。怖い話ほど、何が確認されたのかを見ておきたい。


◾️答えるだけでなく、実際に動くAIになると話が変わる

ただ、AIの悪用を「文章を作るだけの話」として片づけることもできない。

Anthropicは2025年11月13日、Claude Codeが、サイバー攻撃の相談相手としてだけでなく、実行の過程にも使われた事例を公表している。同社が不審な活動を見つけたのは、同年9月だったという。

一方で、その報告には限界も書かれていた。AIが存在しない認証情報を出したり、公開されている情報を秘密情報だと誤認したりしたという。

だから、「もうAIだけで何でも完全自動で成功する」と考えるのも違う。でも、「文章を出すだけだから心配ない」とも言えない。

例えば、文章を提案するだけのAIなら、実際に送るかどうかは人が決められる。ところが、AIにメールを送る権限があれば、話は変わる。ファイルを扱えるのか、外部のサービスを使えるのか、利用者の代わりに何かを実行できるのかによって、起こり得ることも変わってくる。

AIがどれほど賢いかだけでなく、何に接続していて、どこまで任せているのかが大切になるんだね。

これは犯罪者だけの話ではない。面倒な仕事を減らしたくて、AIにいろいろ任せている僕たちにも関わる話だ。


◾️自分が使っているAIが、他人の指示に従ってしまうこともある

ここから、もう一つ気になる話が出てくる。

これまでは、悪意のある人が、自分で使っているAIを悪用する話だった。でも、僕たちが普通に使っているAIを、第三者が自分たちに都合よく動かそうとする問題もある。

「プロンプトインジェクション」と呼ばれるものだ。

OpenAIは、ウェブページや文書、メールなどに悪意のある指示が入っていることで、AIが利用者の望んでいない行動へ誘導される問題を説明している。秘密の情報を読めたり、利用者の代わりに作業できたりするAIでは、影響も大きくなる。

僕が「この資料を読んでまとめて」と頼んだとする。本来、資料は読む対象だ。でも、その中に書かれた第三者の指示まで、AIが自分への命令として扱ってしまったら困る。

普通の感覚なら、「資料に何か書いてあっても、頼んだのは僕なんだから、僕の指示に従ってよ」と思うよね。その区別を誤らせようとする問題なんだ。

先ほどの脱獄が、主に「本来断る内容を答えさせようとする話」だとすると、こちらは「誰の指示に従うかを間違えさせる話」と考えると分かりやすい。実際には、両方が重なる場合もある。

こうなると、「僕は悪いことを頼まないから大丈夫」とだけは言っていられない。

対策としては、必要以上の情報や権限をAIに渡さないこと。メール送信、情報共有、購入などの確認が出たら、誰に対して何をするのかを見ること。OpenAIも、機密情報へのアクセスを制限したり、実行前の確認を慎重に見たりするよう案内している。

便利になるほど、確認もまとめて飛ばしたくなる。その気持ちは、僕にもよく分かる。

でも、手間を減らすのと、何が起きるか分からないまま承認するのは違う。「ここは自分で見る」というところは、残しておきたいね。


◾️調べていたら、結局、自分のAIの使い方に戻ってきた

最初は、どこかに「何でも答える秘密のAI」があるのだろうかと思っていた。

実際に調べると、犯罪向けをうたうサービスはあった。ただ、その中身は一つではない。普通のAIを悪用する人がいて、安全対策をすり抜けようとする人がいて、公開されたモデルを改変する人もいる。それらを組み合わせ、別の名前で売るサービスもある。

犯罪者がしていたことも、危険なプログラム作りだけではなかった。翻訳、文章整理、内部のお知らせ。僕たちが普段「これ、お願い」とAIに頼んでいる仕事も含まれていた。

なお、今回読んだ企業の報告は、その企業が調べて確認した範囲のものだ。世界中の犯罪者を調査したわけではない。「こういう事例があった」ことから、すぐに「今はみんなこうしている」とは言えない。この点は、頭に置いておきたい。

そして、対策を考えるときも、「悪い人が使うのが悪い」で終わってしまうと、足りないと思う。使う人の責任はもちろんある。でも、サービスを作る側がどんな安全対策を用意するのか。どこまでの権限を渡す設計にするのか。悪用を見つけたらどう対応するのか。そうしたことも必要になる。

僕たちができることもある。

AIに仕事を任せるときは、何を実行するのかを確認する。それから、誰かの声や映像を見聞きしたときも、本物らしさだけで判断しない。FBIは、家族などを装ってお金を求められた場合には、いったん電話を切り、確認した連絡先へ自分からかけ直すなど、別の方法で本人を確かめるよう案内している。

本物そっくりかどうかを見抜こうとするだけでなく、本当かどうかを別の方法で確かめる。そんな習慣も、これからますます大切になるんだろうね。

調べ始めたとき、僕が知りたかったのは「AIのロックを外したら、何ができるのか」だった。でも、最後は、自分が普段使っているAIに何を任せるか、という話に戻ってきた。

僕は、これからもAIを使う。助けられるし、できることも増えるし、考えることも楽しくなる。だから、必要以上に怖がりたいわけではない。

ただ、答えてくれたことを、そのまま正しいと思わない。できることを、全部やっていいと思わない。仕事は手伝ってもらいながら、確認や判断まで丸ごと手放さないようにしたい。

せっかく使えるようになった便利なものだ。僕はそれを、自分や家族の時間を増やしたり、誰かの困りごとを軽くしたり、まだ形になっていないものを作ったりするために使いたいなと思う。

今日も、自分にできることを一つずつ。愛と感謝を胸に、全力で頑張ろう。バイバイ、またね。


◾️今回参考にしたニュース・資料

各社の公式方針と、悪用事例を調べた機関の報告を中心に参考にした。英語の資料も多いので、ブラウザの翻訳機能やAI翻訳などを使いながら、気になるところをのぞいてみてね。規約については、読む時点の最新版と、自分が使っている製品にどのルールが適用されるかを確認してほしい。

各社の利用方針・生成内容の扱い

OpenAI「Usage Policies」
Anthropic「Usage Policy」
Google「生成AIの使用禁止に関するポリシー」
OpenAI「Model Spec」2025年12月18日版

闇AIと、正規AIが悪用された事例

OpenAIによる詐欺ネットワークへの対処報告
GoogleによるXanthoroxなどの悪用調査
USENIX Security 2024「Malla」の研究
NetenrichによるFraudGPTの調査
FBIによる生成AIを利用した詐欺への注意喚起

警告・アカウント停止・異議申立て

OpenAI「警告を受け取った理由」
OpenAIのコンテンツ管理と措置の説明
Anthropicのアカウント停止・異議申立てに関する透明性報告
Googleの生成AIポリシー違反に関する案内

公開モデル、安全設定、特別アクセスの仕組み

OpenAIのオープンウェイトモデルに関する説明
Claude Codeのデータ利用と通信に関する説明
Gemini APIの安全設定
OpenAI「Daybreak」

AIによる実行と、利用者側の安全

AnthropicによるAIを利用したサイバー攻撃への対処報告
OpenAIによるマルウェア関連の悪用調査
OpenAIによるプロンプトインジェクションの説明


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広島で、家族と日常を大切にしながら、音楽と文章をつくっています。作詞・作曲から、歌、演奏、録音、映像、発信まで、自分の手で育てています。音と言葉で、人生に小さな灯りを。

松永修が運営する個人事業「言と音LIFE BASE」の創作ブランドが「MUSICおさむ」です。

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