日々のことば(ブログ)
✍️ソフトバンクが1Xの過半取得を検討か|孫正義氏が本気で狙う「身体を持つAI」

✍️ソフトバンクが1Xの過半取得を検討か|孫正義氏が本気で狙う「身体を持つAI」

おはよう。

ソフトバンクグループが、家庭用ヒューマノイド「NEO」を開発する1X Technologiesの過半数株式の取得に向けて協議している——そんな報道が出ました。

このニュースを見て、僕は驚いたというより、「孫さん、本当にやるんだ」と思いました。7月のSoftBank World 2026で本人の講演を聴いた僕には、あの日の言葉と今回の報道が、一本の線でつながって見えたからです。

ただし、最初に大切なことを確認しておきます。これは2026年8月29日時点で、The Informationの報道をReutersが伝えたものであり、ソフトバンクグループや1Xから正式な買収発表が出たわけではありません。Reutersも独自には確認できていないとしており、協議の条件が変わる可能性も、成立しない可能性もあります。


何が報じられたのか

報じられたのは、ソフトバンクが1Xの過半数株式の取得を協議しており、その交渉で1Xの企業価値を約60億ドルとみている、という内容です。

ここで注意したいのは、約60億ドルは1X全体の評価額であって、そのまま買収代金を意味するわけではないことです。実際に取得する割合、既存株主から買うのか新たな出資を行うのか、議決権や経営権をどう設計するのかは、現時点では公表されていません。

そして、もう一つ重要な事実があります。ソフトバンクグループの公式な投資家向け資料によると、2025年12月末時点で、同社側のPhysical AI関連投資にはすでに1Xが含まれていました。つまり、今回の報道は「初めて1Xに目を付けた」という話ではありません。すでに投資している相手に対し、今度は過半数を取得して主導権まで持つ可能性が報じられたというところに、ニュースの重みがあります。


1X Technologiesとは何者なのか

1Xは、米国カリフォルニア州パロアルトを拠点とするAI・ロボティクス企業です。工場向けの車輪型ロボット「EVE」を展開した後、現在は人と同じ生活空間で働く家庭用ヒューマノイド「NEO」の開発に力を入れています。

NEOが目指しているのは、決められた動作だけを繰り返す機械ではありません。家の中を移動し、物を運び、ドアを開け、照明を消し、会話や予定管理も行いながら、ソフトウェアの更新によってできることを増やしていく——そんな家庭の相棒です。

1Xの公式情報では、NEOは2026年に米国の家庭へ早期提供を始める計画で、早期購入価格は2万ドル、月額499ドルのサブスクリプションも案内されています。ただし、これは大規模に普及した完成品の実績ではなく、まだ初期展開の段階です。価格や提供地域、機能は今後変わる可能性があります。

また、1Xは2023年にOpenAI Startup Fundが主導した2,350万ドルの資金調達を発表しています。「OpenAIも出資する企業」という表現は事実ですが、それはOpenAIが1Xの技術や経営を支配しているという意味ではありません。出資関係と、製品の能力や安全性は分けて見る必要があります。


7月の講演を聴いた僕には、一本につながって見えた

僕は7月、孫正義さんのSoftBank World 2026での講演を聴き、その内容を詳しく記事にまとめました。孫さんは、インターネット革命では「最初の20年でほとんど勝負は決まった」と振り返り、日本経済がAI革命で同じ失敗を繰り返してはいけないという強い危機感を語っていました。

僕には、あの言葉が単なる未来予測には聞こえませんでした。インターネット革命の第一線を取り切れなかったことへの悔しさと、今度は同じ失敗を繰り返さないという覚悟が重なっているように感じたのです。これは孫さん本人が「後悔している」と明言したという意味ではなく、講演を通して僕が受け取った温度です。

その講演で孫さんが描いた2040年の世界は、100兆個のAIエージェントと10億台のヒューマノイドが動く社会でした。そして、未来から逆算して「今、何をするべきか」を決めるのがビジョンだと語っていました。

その約1カ月後に、家庭用ヒューマノイド企業の過半取得を協議しているという報道が出た。僕には、7月に語った数字と未来像が、8月には資本の動きとして現れ始めたように見えます。


言葉が、巨額の資本配分へ変わっている

今回の1Xだけを見ても、孫さんの本気の全体像は見えません。ソフトバンクグループは2025年10月、ABBのロボティクス事業を53億7,500万ドルで取得する契約を発表しています。取得完了は2026年半ばから後半の予定で、規制当局の承認などが前提です。

ABBのロボティクス事業は、主に工場や産業の現場に強みがあります。一方の1Xは、家庭という人間に最も近い場所を目指しています。すでに投資していた1Xの経営権まで視野に入れているのだとすれば、ソフトバンクは産業のロボットと、暮らしのヒューマノイドの両方を押さえようとしているように見えます。

孫さんはABBの取得発表で、ソフトバンクの「次のフロンティアはPhysical AI」だと述べました。AIの知性を画面の中にとどめず、ロボットの身体を通して現実世界で働かせる。その構想に、工場、家庭、AIモデル、半導体、データセンターをつなげようとしているのだと思います。


「AIが身体を持つ」と、何が変わるのか

生成AIは、文章を書き、画像を作り、相談に答えます。しかし、どれほど賢くても、画面の中にいる限り、床に落ちた物を拾うことも、重い荷物を運ぶことも、家事を代わることもできません。

ヒューマノイドは、AIに目と耳と手足を与えます。知性が身体を持てば、AIは言葉を返す存在から、現実の環境を見て、触れて、動かす存在になります。僕が以前書いたフィジカルAIの記事で考えた未来が、少しずつ具体的な企業名と金額を伴い始めています。

もし家庭用ロボットが本当に実用化されれば、高齢者や障がいのある人の生活支援、家事や介護の負担軽減、人手不足の補完など、大きな可能性があります。人が単純作業から解放され、家族との時間や創作、自分にしかできないことへ力を使えるようになるなら、僕はそれを前向きな進化だと思います。


期待だけでは読めない、大きな課題もある

もちろん、未来像が大きいほど、冷静に見るべき課題もあります。家庭は工場よりはるかに複雑で、同じ間取りも、同じ生活習慣もありません。子どもやペットのそばで安全に動けるのか、失敗したときに誰が責任を負うのか、故障や通信障害にどう備えるのか。技術の賢さだけでは解けない問題が山ほどあります。

さらに、家庭用ロボットのカメラやマイクが生活空間を認識する以上、プライバシー、データ管理、外部からの侵入対策は中心課題です。「便利だから置く」だけではなく、何を記録し、どこへ送り、誰がアクセスできるのかを、利用者が理解して選べる仕組みが欠かせません。

事業としても、1XはNEOを家庭へ届け始める初期段階です。約60億ドルという評価には、現在の販売実績だけでなく、将来への大きな期待が織り込まれていると考えるのが自然でしょう。大量生産、価格、安全性、保守、社会受容のどこかでつまずけば、期待どおりに進まない可能性もあります。

だからこそ、この話を「夢のロボットがすぐ家に来る」と読むのも、「巨額投資だから必ず成功する」と読むのも早い。いま確認できるのは、ソフトバンクがすでに1Xへ投資しており、さらに過半取得を協議していると報じられたところまでです。


孫さんは、今度こそ第一線に立つつもりなのだと思う

それでも僕は、この一連の動きに孫さんの本気を感じます。

インターネット革命を振り返り、「最初の20年でほとんど勝負は決まった」と語った人が、AI革命では早い段階から巨額の資金を投じ、AIの頭脳だけでなく、半導体、インフラ、産業ロボット、そして家庭用ヒューマノイドにまで手を伸ばしている。

僕には、これは流行している分野へ少しずつ投資する動きには見えません。今度こそAI革命の第一線に立ち、一番を取りにいく。そんな覚悟で、自分が語った未来を自分で現実にしようとしているように見えます。

もちろん、それが成功するかはまだ誰にも分かりません。過去の巨大投資には成功も失敗もありましたし、投じる金額が大きいほど、背負うリスクも大きくなります。

でも、僕は講演を本人の声で聴いたからこそ分かる気がするのです。あの人は、本当に15年後から逆算して動いている。今回の1X報道は、その構想の一片が見えたニュースなのかもしれません。

AIが身体を持つ未来は、人間から仕事を奪うだけの未来であってほしくありません。人が人にしかできないことへ時間を使い、大切な人と笑い、創作し、人生を豊かにできる未来であってほしい。その中心に日本の企業が立つのなら、僕は期待しながら、これからも見届けたいと思います。

愛と感謝を胸に。バイバイ。


参考情報


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広島で、家族と日常を大切にしながら、音楽と文章をつくっています。作詞・作曲から、歌、演奏、録音、映像、発信まで、自分の手で育てています。音と言葉で、人生に小さな灯りを。

松永修が運営する個人事業「言と音LIFE BASE」の創作ブランドが「MUSICおさむ」です。

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