日々のことば(ブログ)

✍️激甚災害とは?指定されると何が変わるのか|災害救助法・特定非常災害との違い

おはよう。激甚災害とは、大きな災害の「強さ」を表す名前ではない。道路、橋、河川、学校、農地などを復旧する自治体の負担が重くなりすぎないよう、国の財政支援を通常より手厚くする制度である。

ひと言でいえば、壊れた町を直すための「自治体の財布」を国が支える仕組みだ。指定されたからといって、被災したすべての人へ一律に現金が配られる制度ではない。けれど、地域の暮らしと仕事を立て直す土台を守るという意味で、私たち一人ひとりの生活と深くつながっている。

令和8年熊本地震で亡くなられた方々に、心からお悔やみを申し上げます。被災された皆さんへ、心からお見舞いを申し上げます。今も続く救助、避難生活、生活再建、復旧の一つひとつが、少しでも早く前へ進むことを願っている。

今回の地震を受けて、「激甚災害」という言葉を耳にした人も多いと思う。だが、ニュースでは指定の有無が大きく報じられても、何が変わり、何は変わらないのかまでは見えにくい。そこで今回は、制度の核心を、できるだけやさしく整理したい。


激甚災害は「災害のランク」ではない

正式な根拠は、1962年に制定された「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」、いわゆる激甚災害法である。

災害の被害が大きいと、自治体は道路や橋、河川、学校、農地などを同時に直さなければならない。ところが、その費用を自治体だけで負担すれば、復旧事業だけで財政が圧迫され、通常の行政サービスや将来のまちづくりにも影響が及びかねない。

そこで国が、通常の災害復旧制度による負担や補助に、さらに特別な財政援助を加える。これが激甚災害制度の基本である。

つまり、「この災害はとても大きかった」という称号ではない。「自治体だけに背負わせず、国全体で復旧を支える」と決める制度なのだ。


指定されると、具体的に何が変わるのか

一番大きく変わるのは、災害復旧事業に対する国の支援である。通常の制度に基づく国庫負担や補助へ、補助率のかさ上げなどの特例が加わり、被災自治体の実質的な負担が軽くなる。

対象になり得るのは、主に次のような分野だ。

  • 道路、橋、河川、砂防施設などの公共土木施設
  • 農地、農業用施設、林道、漁港など
  • 公立の学校や社会教育施設など
  • 被災した中小企業への災害関係保証の特例
  • 被災者向け公営住宅の建設などに対する補助の特例

ただし、すべての災害で、すべての措置が一律に使われるわけではない。政令では「どの災害を指定するか」とともに、「どの特例措置を適用するか」も定められる。

ここが大切だ。激甚災害の指定は、復旧費を魔法のように生み出すボタンではない。自治体が必要な事業を続けやすくし、長い復旧の道のりを財政面から支える制度なのである。


指定されても「すぐ現金が配られる」わけではない

激甚災害と聞くと、「被災者へ特別な給付金が出るのか」と思うかもしれない。しかし、指定そのものによって、被災したすべての人へ一律の現金が自動的に支給されるわけではない。

個人の生活再建に関わる制度には、罹災証明書を基にした被災者生活再建支援金、災害弔慰金、住宅の応急修理、各自治体の独自支援など、別の仕組みがある。中小企業や農林漁業者への支援も、対象や条件、申請手続きがそれぞれ異なる。

だから、被災した人にとっては、「激甚災害に指定されたか」と「自分が利用できる支援は何か」を分けて考えることが必要だ。自分に届く支援は、自治体の公式サイトや相談窓口で確認するのが確実である。


正式な区分は「本激」と「局激」

「特別激甚災害」という言葉で、激甚災害よりさらに上の段階があるように説明されることがある。しかし、内閣府の現行制度で示されている区分は、いわゆる「本激」と「局激」である。

「本激」は、地域を政令で限定せず、災害そのものと適用措置を指定する考え方。「局激」は、局地的であっても、その市町村にとって財政負担が非常に大きい災害を、市町村の区域を明示して指定する考え方だ。なお、「本激」という言葉自体も、局激と区別するための通称である。

しかも、本激のほうが同じ措置の補助率が必ず高い、という関係ではない。内閣府は、本激と局激で同種の措置が適用される場合、その内容に違いはないと説明している。

したがって、東日本大震災、平成28年熊本地震、令和6年能登半島地震などを説明するときも、「特別激甚災害」という上位区分としてではなく、激甚災害の指定と、実際に適用された措置を確認するのが正確である。制度の名称は似ている。だからこそ、ニュースの言葉を一度立ち止まって確かめることが大切なのだと思う。


なぜ指定まで時間がかかるのか

指定は、被害の印象だけでは決まらない。各省庁が公共土木、農地、農林水産業、中小企業などの被害状況を把握し、復旧事業費の見込みを内閣府へ報告する。その金額を基準と照らし合わせ、内閣法制局の審査、中央防災会議への諮問と答申、閣議決定を経て、政令が公布・施行される。

内閣府のQ&Aでは、災害の種類にもよるが、発災から指定まで1〜2か月程度を要するのが通例と説明されている。時間がかかる理由は、救助を後回しにしているからではなく、被害額と適用措置を法的・客観的に確かめる必要があるからだ。

そして、指定まで何も進まないわけではない。救命、避難所、食料、応急仮設住宅などの支援は別の制度で動く。通常の災害復旧制度もあり、国の補助率が決まる前に概算交付できる仕組みもある。

「指定がまだだから、支援が始まっていない」と受け取らないこと。これも、ニュースを見るうえで大切な視点である。


災害救助法・特定非常災害との違い

災害時には、似た名前の制度が同時に動く。役割を一行ずつにすると、違いが見えやすい。

  • 災害救助法:避難所、食料・飲料水、応急仮設住宅、住宅の応急修理など、発災直後の命と生活を守る。
  • 激甚災害制度:災害復旧事業への国の財政支援を手厚くし、自治体や地域産業の立て直しを支える。
  • 特定非常災害:免許や許認可など行政上の権利利益の期限延長をはじめ、被災者が手続き上の不利益を受けにくくする。

覚え方は、災害救助法は「今をしのぐ」、激甚災害制度は「町を直す」、特定非常災害は「期限と権利を守る」。厳密な制度内容はもっと細かいが、まずはこの違いを押さえると、報道がかなり読みやすくなる。

制度の詳細は、内閣府「激甚災害からの復旧・復興対策」激甚災害制度Q&A災害救助法の概要特定非常災害に関する法律で確認できる。


制度を知ると、ニュースの見え方が変わる

「激甚災害に指定」という見出しを見たとき、これまでは災害の大きさを示す言葉だと思っていた。けれど本当は、その先にあるのは、誰が道路を直すのか、学校をどう再開するのか、農地や仕事をどう取り戻すのか、そしてその費用を自治体だけに背負わせないためにどう支えるのか、という現実的な問いである。

指定はゴールではない。復旧の長い道のりを支えるスタート地点の一つにすぎない。それでも、自治体が財政への不安を少しでも減らし、必要な工事や支援へ踏み出せることには大きな意味がある。

災害の報道に触れるとき、被害の数字だけでなく、その後ろで動き始める制度にも目を向けたい。制度は冷たい言葉に見える。しかし実際には、橋を渡れること、学校へ通えること、仕事を続けられること、いつもの暮らしへ戻ることを支えている。

今回、原稿を調べ直したことで、僕自身も知らなかったこと、誤解していたことに気づけた。分からない言葉をそのまま通り過ぎず、一度立ち止まって調べる。その小さな積み重ねが、社会を見る目を少しずつ確かなものにしてくれるのだと思う。

被災された皆さんの日常が、一日でも早く穏やかさを取り戻すことを心から願っている。今日という一日を大切に。愛と感謝を胸に。


広島で、家族と日常を大切にしながら、音楽と文章をつくっています。作詞・作曲から、歌、演奏、録音、映像、発信まで、自分の手で育てています。音と言葉で、人生に小さな灯りを。

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