日々のことば(ブログ)
✍️十勝岳でごく小規模な噴火|日本の火山災害史から考える、これからの備え

✍️十勝岳でごく小規模な噴火|日本の火山災害史から考える、これからの備え

おはよう。2026年7月22日午前11時7分ごろ、北海道の十勝岳にある62-2火口で、ごく小規模な噴火が発生した。

気象庁によると、黒い噴煙は火口の縁から約200メートルまで上がり、火山性微動は約45秒間続いた。大きな噴石の飛散は観測されていない。噴火警戒レベルは2のままで、62-2火口からおおむね1.5キロの範囲では、引き続き大きな噴石に警戒が必要である。

まず結論から言うと、現時点で大規模な噴火が起きたという情報ではない。

しかし、「小さい噴火だから何も気にしなくてよい」という話でもない。反対に、十勝岳の山麓全体が危険になり、周辺の町から避難しなければならない状態でもない。

大切なのは、確認された事実と警戒が必要な範囲を分けて見ることだ。

そして、過去の大きな噴火をそのまま今回に重ねるのではなく、歴史から何に備えてきた火山なのかを知ることだと思う。

実際の噴火時の映像を含むHTB北海道ニュースの公式動画。映像だけを切り取らず、気象庁の発表と合わせて見たい。

十勝岳は、山だけがある場所ではない

十勝岳は、北海道のほぼ中央、富良野・美瑛の東側に連なる十勝岳連峰の主峰で、標高は2,077メートル。大雪山国立公園の南西部に位置する活火山である。

地図で見ると、旭川の南、美瑛町や上富良野町の東側にある。

山の周囲には、美瑛町側の白金温泉、上富良野町側の吹上温泉や十勝岳温泉がある。望岳台などの登山口、宿泊施設、道路、観光施設も点在する。

つまり、誰もいない遠い山の出来事ではない。

山に登る人がいる。温泉を訪れる人がいる。山麓で暮らし、働き、観光を支える人たちがいる。噴火の規模や現象によっては、登山道だけでなく、道路、温泉地、集落、農地まで影響を受ける可能性がある場所なのだ。

参考:北海道森林管理局「十勝岳風致探勝林」上富良野町「十勝岳連峰登山案内」

北海道内における十勝岳の位置を示す気象庁の地図
北海道内の十勝岳の位置。出典:気象庁「十勝岳」
望岳台から見た十勝岳中央部の実際の風景
望岳台から見た十勝岳中央部(2010年7月13日、気象庁撮影)。今回の噴火時の写真ではない。出典:気象庁「十勝岳」

2026年7月22日、実際に何が起きたのか

気象庁が確認した事実は、次のとおりである。

  • 午前11時7分ごろ、62-2火口でごく小規模な噴火が発生
  • 噴火に伴う火山性微動を約45秒間観測
  • 避難小屋観測点で、噴出に伴うとみられる最大0.76パスカルの空振を観測
  • 黒い噴煙が火口縁上約200メートルまで上昇
  • 大きな噴石の飛散は観測されず
  • 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)を継続
  • 今後も、ごく小規模な噴火が繰り返される可能性

レベル2は、火口周辺への立ち入りを規制し、危険な範囲へ入らないことを求める段階である。今回、気象庁が示している警戒範囲は、62-2火口からおおむね1.5キロ以内だ。

風下では、火山灰や小さな噴石が風に流されて、より遠くへ降るおそれもある。

「大きな噴石は観測されなかった」という事実と、「今後も大きな噴石に警戒が必要」という注意は矛盾しない。前者は今回観測された結果で、後者は次の噴火に備えるための警戒である。

十勝岳の噴火警戒レベルと火口周辺の規制範囲を示す気象庁資料
十勝岳の噴火警戒レベルと規制範囲。現在の個別の立入規制は、自治体の最新情報も合わせて確認したい。出典:気象庁「十勝岳の噴火警戒レベル」

最新情報:気象庁「火山の状況に関する解説情報(十勝岳第12号)」


報道を重ねると、現地の状況が少し立体的に見える

HTB北海道ニュースは、白い噴煙のあとに黒っぽい噴煙が立ち上る瞬間を映像で伝えた。

一方、同日の夕方に美瑛町側から中継したUHB北海道文化放送は、十勝岳が厚い雲に覆われ、そこからは噴煙を確認できなかったと報じている。白金温泉には観光客が訪れ、取材したホテルでは、その時点でキャンセルや問い合わせはなく、通常営業を続けるとしていた。

この二つは、食い違っているわけではない。

時間も、見ている場所も、天候も違う。昼前には火口で噴火が起き、夕方には雲で山が見えにくかった。温泉地が通常営業していたという情報も、「今後も絶対に安全」という保証ではなく、その時点の現地の様子である。

ニュース映像は大切だ。ただ、一本の映像だけで全体を決めない。気象庁の観測、自治体の規制、現地報道を重ねて見ることで、ようやく現在地が見えてくる。

参考:HTB北海道ニュースUHB北海道文化放送


今回は、まったくの「前触れなし」ではない

十勝岳の噴火警戒レベルは、今回の噴火より前の6月18日に、1から2へ引き上げられていた。

気象庁はその時点で、62-2火口や振子沢噴気孔群付近の熱活動の高まり、山体付近のやや深い場所での膨張を示す地殻変動、二酸化硫黄の放出量の増加、火山性地震のやや活発な状態を確認していた。

だから今回の噴火は、観測上まったく何の変化もない山が、突然大きく動いたという話ではない。

ただし、前兆らしい変化が見えたからといって、いつ、どのくらいの規模で噴火するかを正確に言い当てられるわけではない。火山の観測情報は、未来を断言する予言ではなく、危険が高まった範囲から離れるための判断材料なのだと思う。

参考:気象庁「十勝岳の噴火警戒レベルを2へ引上げ」


100年前、泥流は約25分で富良野原野へ達した

十勝岳の歴史を考えるとき、避けて通れないのが1926年5月24日の噴火である。

高温の岩屑なだれが山の雪を溶かし、大規模な泥流となって斜面を下った。内閣府の報告書によると、泥流は約25分で山麓の富良野原野へ到達し、集落を襲い、144人が犠牲になった。

雪の多い火山では、噴き出す石や灰だけが危険なのではない。熱で雪が急速に溶ければ、水、土砂、岩が一緒になって流れ下る。十勝岳の防災で融雪型火山泥流が重く見られているのは、この歴史があるからだ。

1962年の噴火では、火口近くの硫黄鉱山が破壊され、5人が犠牲になった。1988年から1989年にも小噴火が繰り返されたが、その頃には避難計画やハザードマップが整備され、被害の軽減に大きな役割を果たした。

ここで大事なことがある。

1926年の大災害と、今回のごく小規模な噴火を、同じ規模の出来事として結びつけてはいけない。現在の発表から、100年前と同じ噴火が迫っているとは言えない。

歴史を知るのは、恐怖を大きくするためではない。

この山では何が起こり得るのか。そのために、どの範囲を警戒し、どんな地図と避難計画が作られてきたのかを理解するためである。

参考:内閣府「1926 十勝岳噴火」上富良野町「十勝岳火山防災マップ」


僕が最初に読んだ火山の本は、有珠山だった

このニュースを見て、ずいぶん古い記憶が戻ってきた。

たぶん、小学校3年生のころだったと思う。初めて読書感想文を書くことになり、僕が図書館で選んだのは、北海道の有珠山(うすざん)の噴火を扱った本だった。

一生懸命に読んで、有珠山の歴史や火山のことを調べて、感想文を書いた。

今思えば、感想文というより、本の文章をかなり書き写していたような気もする(笑)。

それでも、図書館で本を借り、活字を読み、資料を見て、自分なりにまとめて文章にした。考えてみれば、あれは僕にとって、今のブログの原型のようなものだったのかもしれない。

当時、先生がよく「日本は火山の国だ」と話していた。

僕は、休んでいる火山がいつか目を覚ましたらどうしようと、妙に怖くなった。家の近くに火山があるわけでもないのに、不安で眠れなくなったこともある。

子どもって、かわいい(笑)。

でも、あのときの不安は、子どもなりに本物だった。

今回、十勝岳のニュースを見て思い出したのは、火山の怖さだけではない。分からないことを本で確かめようとした、あの頃の自分だった。

怖いからこそ、知りたかったのだと思う。


「休火山」は、今は公式な分類ではない

子どものころ、僕たちは「活火山」「休火山」「死火山」という言葉を習った記憶がある。

ただ、現在の気象庁は、火山をその三つには分けていない。

今の定義で活火山とは、おおむね過去1万年以内に噴火した火山、または現在活発な噴気活動がある火山のことだ。日本には111の活火山がある。

火山の時間は、人間の一生よりはるかに長い。数百年静かだからといって、「もう活動しない」とは言い切れない。数千年の休止を経て活動を再開した例もあるため、現在は「休火山」「死火山」という公式分類を使わなくなった。

つまり、「今は噴火していない」と「将来も噴火しない」は、同じではない。

ただし、111の活火山が、今すぐ一斉に危険という意味でもない。火山ごとに活動状況も、警戒範囲も、周囲の地形も違う。だから、全国をひとまとめに怖がるのではなく、一つひとつの最新情報を見る必要がある。

参考:気象庁「活火山とは」


日本の噴火史から見えるのは「増加」ではなく、被害の違い

この十数年を振り返っても、日本では性質の異なる火山災害が起きている。

2014年・御嶽山

紅葉シーズンの週末、昼食の時間帯に山頂付近で噴火が起きた。多くの登山者が噴石に襲われ、死者58人、行方不明者5人という大きな被害になった。

火山の規模だけではなく、その場所に、その時、どれだけの人がいたかが被害を大きく左右した例である。

2015年・口永良部島

新岳で爆発的噴火が起き、火砕流が海岸まで達した。噴火警戒レベルは5となり、全島避難が行われた。

島では、火山活動だけでなく、住民全体がどこへ、どう避難するかという準備が暮らしに直結する。

2018年・草津白根山(本白根山)

スキー場の近くで噴火し、噴石によって1人が亡くなり、11人が負傷した。ロープウェイが止まり、81人が山頂駅に取り残された。

登山中でなくても、観光地やレジャー施設が火山の近くにあれば、噴火は日常のすぐそばで起こり得る。

参考:内閣府「2014年御嶽山噴火から10年」気象庁「口永良部島の爆発的噴火」内閣府「草津白根山の噴火」


噴火が増えている、とまでは言えない

最近の噴火を並べると、「日本の火山は以前より活発になっているのではないか」と感じるかもしれない。

でも、今回確認した資料だけから、日本全体の噴火が長期的に増えているとは断定できない。

昔と今では、残っている記録の量も、観測機器の精度も、情報がニュースになる速さも違う。小さな噴火まで詳しく観測され、すぐに全国へ伝わるようになったことも、私たちが「増えた」と感じる理由になり得る。

歴史から確かに言えるのは、噴火には同じ形がないということだ。

十勝岳では、雪と熱が重なることで泥流が大きな脅威になった。

御嶽山では、山頂付近に多くの登山者がいた。

口永良部島では、島全体の避難が必要になった。

草津白根山では、スキー場とロープウェイが影響を受けた。

火山の危険は、火口だけで決まらない。地形、季節、風、人がいる場所、避難経路が重なって、被害の形が決まる。

ここが、日本の火山史から今後を考えるときの、一番大切な視点だと思う。


今後、見る場所を決めておく

火山の動きを個人が予測することはできない。

でも、情報を見る場所は決めておける。

  1. 気象庁の火山情報で、警戒レベルと警戒範囲を確認する
  2. 自治体の公式情報で、登山道、道路、施設の規制を確認する
  3. 現地にいる場合は、風向き、降灰、異臭、自治体からの指示に注意する
  4. SNSの短い映像だけで判断せず、撮影時刻と場所、公式発表を確かめる

十勝岳から離れた場所にいる人まで、必要以上に不安になることはない。

一方、登山や周辺観光を予定している人は、「小規模だから」と自己判断せず、地元自治体の規制に従う必要がある。山の天気や風向きによっても見え方と影響は変わる。

予言を探すより、更新される一次情報を見る。

それが、今できる一番現実的な備えだと思う。


まとめ|怖がりすぎず、軽く見すぎず

今回の十勝岳の噴火について、7月23日朝の時点で確認できる要点は四つである。

  • 62-2火口で、ごく小規模な噴火が実際に発生した
  • 大きな噴石は観測されていないが、火口からおおむね1.5キロ以内では警戒が続く
  • 山麓全体に避難が出ている状態ではないが、登山者や周辺を訪れる人は最新の規制確認が必要
  • 過去の災害は重要な教訓だが、今回が同じ規模へ進むと決めつける根拠にはならない

火山は恐ろしい。

でも同時に、美しい山並みをつくり、温泉を生み、土地の景色と暮らしを育ててきた存在でもある。

十勝岳の近くで暮らす人。観光を支える人。山を監視する人。過去の犠牲を忘れず、防災地図や避難計画を積み重ねてきた人。

その営みがあるから、僕たちは遠くにいても、今の状況を知ることができる。

小学生のころ、火山が怖くて眠れなかった僕は、今も火山を怖いと思う。

ただ、あの頃と少し違うのは、怖さだけで終わらず、確かめる場所を知ったことだ。

怖がりすぎず、軽く見すぎず。

大切な人を思いながら、愛と感謝を胸に、今日も目の前の一日を丁寧に生きていこう。

またね。


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広島で、家族と日常を大切にしながら、音楽と文章をつくっています。作詞・作曲から、歌、演奏、録音、映像、発信まで、自分の手で育てています。音と言葉で、人生に小さな灯りを。

松永修が運営する個人事業「言と音LIFE BASE」の創作ブランドが「MUSICおさむ」です。

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