日々のことば(ブログ)

✍️キャリア相談を受ける側になって気づいた|傾聴の大切さと支援の難しさ

おはよう。先日、キャリアコンサルティング技能士2級のロールプレイ練習をする機会があった。技能検定対策の一環だ。普段は相談を受ける側だが、その日はクライアント役を体験した。僕は国家資格キャリアコンサルタントを持ち、現在もキャリアコンサルティング技能士の勉強を続けている。相談支援や傾聴について学び続けている立場でもある。ただ、人は誰でも人生のどこかで迷う。将来のこと。家族のこと。仕事のこと。自分の生き方のこと。そんな悩みを抱えたクライアント役として面談を受ける中で、思いもよらない気づきがあった。

それは、「傾聴の重要性」を頭ではなく感情で理解したことだった。
これまで本や講義で何度も学んできた。ロジャーズの理論も学んできた。技能士試験でも繰り返し出てくる。でも実際にクライアント役になってみると、その意味が全く違って見えた。

今回は、その時に感じたことを書いてみたい。


◾️相談は「内容」だけでは決まらない

今回、改めて感じたのは「関係性」が相談に与える影響の大きさだ。
キャリアコンサルタントの倫理でも、多重関係には慎重になる。なぜなら、人は相手との関係性によって自由に話せなくなるからだ。本音が言えなくなる。無意識に気を遣う。相手の期待に合わせようとする。
今回のロールプレイでも、相手との関係性や立場を少し変えるだけで、自分の感じ方や話し方が大きく変わることを実感した。
相談支援では「何を言うか」に意識が向きがちだ。しかし実際には、「誰が言うか」「どんな関係性で言うか」の影響も非常に大きい。だからこそキャリアコンサルタントは、自分の立場や影響力に自覚的でなければならない。
今回の体験を通じて、そのことを改めて痛感した。


◾️面談直後は、むしろ感謝する

実は、その場では気づかなかった。むしろ「なるほど」「そういう考え方もあるな」そんな風に受け止めていた。感謝すらしていたと思う。ところが数日経った頃から、妙な感情が湧いてきた。なんだろう。思い出すたびにモヤモヤする。なんか嫌だ。なんでだろう。そこで面談を振り返ってみた。

すると見えてきた。自分が本当に求めていたのは、答えではなかったのかもしれない。評価でもなかった。分析でもなかった。ましてや決めつけでもなかった。まずは、自分の話をしっかり聴いてもらいたかったんだと思う。

ところが振り返ってみると、そこには傾聴がほとんどなかった。代わりにあったのは、解釈だった。評価だった。アドバイスだった。フィードバックだった。その場では気づかなかった。でも数日経ってから分かった。僕は理解されたと感じていなかった。むしろ評価されたように感じていた。そして、その違和感は時間とともに大きくなっていった。

これが今回、一番衝撃だったことかもしれない。キャリアコンサルタントとして学んできた知識以上に、「相談者はこう感じることがあるんだ」という事実を体験として知ることができたからだ。


◾️積極技法のオンパレードだった

代わりにあったのは、評価、指摘、決めつけ、情報提供、アドバイス、フィードバック、矛盾の指摘、解釈、リフレーミング。そういった積極技法だった。

もちろん積極技法そのものが悪いわけじゃない。キャリアコンサルティングでも使うし、カウンセリングでも使う。むしろ支援者として成長していくと、そういった技法を学び、使えるようになることも大切だと思う。

ただ、それはタイミングと関係性が整って初めて効果を発揮する。今回、自分が相談者側を体験して初めて分かった。相談者は答えが欲しいようでいて、実はまだ自分の気持ちすら整理できていないことがある。そんな状態で次々に解釈され、評価され、アドバイスされると、内省が深まるどころか止まってしまう。

「そうなのかな」「そうかもしれないな」と、その場では受け止めてしまう。

でも本当は違う。
相談者の中では、まだ言葉になっていない思いが動いている。

まだ自分でも分かっていない感情がある。
そこに支援者側の解釈や価値観が大量に流れ込むと、自分で考えることをやめてしまう。


◾️支援者は失敗に気づけない

ここが本当に怖いところだと思う。キャリア支援の失敗は、その場で怒られない。むしろ「ありがとうございました」で終わる。笑顔で終わる。だから支援者側は成功したと思ってしまう。ところが数日後、相談者の中で違和感が育つ。怒りになる。不信感になる。そして最終的には「もう相談したくない」になる。さらに進むと「この人は信用できない」になる。支援者はそのことに気づかない。だから恐ろしい。今回、自分が相談者側になって初めてその怖さを知った。


◾️良かれと思っている人ほど危ない

今回の体験を通して感じたのは、人を傷つけるのは悪意だけではないということだ。むしろ、良かれと思っている人ほど危ないことがある。助けようとしている。導こうとしている。教えようとしている。その気持ち自体は素晴らしい。でも相談者が求めているものと、支援者が与えようとしているものがズレてしまうことがある。特に経験豊富な人ほど、自分の成功体験や答えを語りたくなる。人生経験が豊富な人ほど、「こうした方がいい」「私はこうしてきた」と伝えたくなる。でも相談者が求めているのは、必ずしも答えではない。まずは理解されること。受け止められること。安心して話せること。そこを飛ばしてしまうと、どれだけ正しいことを言っても届かなくなる。


◾️ゲームが混じると一気に危険になる

今回、もう一つ勉強になったことがある。交流分析でいう「ゲーム(裏面的交流)」に近いものが混じると、一気に危険になるということだ。表面上は「君のためを思って」と言っている。でも無意識の奥では、「自分の方が上だ」「自分の方が分かっている」「自分の価値観を認めさせたい」という気持ちが混じることがある。本人は気づいていない。だから余計に厄介だ。相談者は敏感だ。言葉ではなく空気で感じる。すると、マウントを取られた。見下された。評価された。そんな感覚だけが残る。今回、自分が感じた不快感の一部は、まさにそこだったと思う。


◾️怖いのは無資格ではなく無自覚

最初は「無資格者は怖いな」と思った。でも冷静に考えると違った。無資格でも傾聴が自然にできる人はたくさんいる。逆に資格があっても危ない人もいる。本当に怖いのは、無自覚な支援者だ。自分が評価していることに気づいていない。自分が誘導していることに気づいていない。自分がマウントを取っていることに気づいていない。自分が相談者の人生に影響を与えていることに気づいていない。それが一番怖い。


◾️ロジャーズはやっぱりすごい

今回の体験で改めて思った。やっぱりロジャーズはすごい。受容、共感的理解、自己一致。一見すると何もしていないように見える。派手さもない。でも、人は理解されると動き始める。受け止められると考え始める。安心すると本音に触れ始める。逆に、急いでアドバイスすると止まる。急いで評価すると閉じる。急いで結論を出すと考えることをやめる。技能士試験の勉強で何度も学んできたことだった。でも今回は違った。初めて相談者側になって、その意味が本当に分かった。


◾️実は、自分への反省でもある

今回、一番大きな学びはここかもしれない。僕自身も過去、良かれと思ってアドバイスしたことがあっただろう。良かれと思って評価したこともあっただろう。良かれと思って指摘したこともあっただろう。でも、その時の相手は今回の僕と同じ気持ちだったかもしれない。そう思うと怖くなる。本を読んで理解したのではない。講義を受けて理解したのでもない。実際に嫌な思いをしたから分かった。だから今回の経験は、決して無駄じゃなかった。むしろキャリアコンサルタントとしての自分にとって、ものすごく価値のある授業だった。


◾️最後に

相談支援は本当に怖い。言葉ひとつで人を救うことができる。言葉ひとつで信頼を壊すこともできる。そして怖いのは、壊した側が気づけないことだ。今回、僕は相談者側になった。普段は相談を受ける側なのに、初めて深く相談する側になった。そして、ものすごく嫌な思いをした。正直に言う。腹が立った。信頼を失った。思い出すと今でも嫌な気持ちになる。でも、その経験があったからこそ分かったことがある。もちろん、積極技法そのものが悪いわけではない。優れたキャリアコンサルタントほど、優れたカウンセラーほど、適切なタイミングで積極技法を使いこなしている。

気づきを促し、視野を広げ、相談者の背中を押す力にもなる。ただ、傾聴や信頼関係という土台がないまま使うと、薬にもなる技法が毒にもなる。積極技法は使い方を間違えると、人を傷つける。しかもその場では気づかれない。後から効いてくる。

後から恨まれる。後から嫌われる。後から信頼を失う。人間関係そのものを壊してしまうことすらある。

一方で、傾聴は地味だ。派手さもない。すごいアドバイスをしているようにも見えない。でも、しっかり受け止める。しっかり理解しようとする。相手の中にある答えを信じる。その関わり方は、不思議なくらい後から効いてくる。数日後、数か月後、時には数年後、「あの時、話を聞いてもらえて良かった」そんな風に思い出してもらえることがある。同じ相談支援でも、その差は天と地ほどある。

今回の経験は、本当に勉強になった。でも、キャリアコンサルタントとしては最高の学びだった。技能士試験の本を何冊読むよりも、ロジャーズの理論を何時間勉強するよりも、相談者として感じた経験の方が、すごく勉強になった。だから今後、僕はますます気をつけたいと思う。

急いで教えない。急いで評価しない。急いで結論を渡さない。まずは聴く。本当に聴く。そして相手の中にある力を信じる。今回の出来事は、その大切さを骨の髄まで教えてくれた。正直、あまり気持ちのいい経験ではなかった。でも、間違いなく人生の財産になった。技能士試験の勉強をしていて本当に良かったと思うし、相談者側を体験できたことにも感謝している。

今日も家族を大切に。出会ってくれる人たちに感謝しながら。愛と感謝を胸に。また一歩ずつ前へ進んでいこうと思う。


松永 修 – MUSICおさむ

松永 修|MUSICおさむ|国家公務員|キャリアコンサルタント|作家・メディアクリエイター/音楽クリエイター(シンガーソングライター)|IT・AI設計・コンサルタント

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